第43話 地獄の特訓
朝食を食べ終え、ライラとの魔法の特訓が始まる。
「基礎中の基礎の魔法を使えるようになってもらう。まずは硬化魔法からだ。やれ」
ライラは持参した、パラソルの下で折りたたみの椅子に座り、足を組みながら優雅に紅茶を飲み僕に命令する。
本当に教える気あるのか謎である。優雅にお茶を楽しんでいる姿が気にくわず目を細めて見る。
「なんだその目はまったく硬化したい部分に魔法の膜を張るイメージをするんだぞ」
ライラは両手を上に伸ばし、楕円を縦に描くように両手を下ろす。
簡単に言ってくれるがこれが難しい。昨日で自分の意思で魔法を出す方法は分かったがコントールがまだできない。
僕は取り敢えず、右腕に硬化魔法を纏う事を試みる。だが、魔法を纏う事が出来ず時間のみが経過する。
特訓を始めてから3時間、魔法のコントロールが出来ない僕に痺れを切らしたのかライラがかったるそうに口を開く。
「はーまだできんのか。このままではいつになるのやら。もう昼食の時間ではないか。お嬢様の昼食をお届けしなければ」
「なら、お茶なんて飲んでないでしっかり教えろよ!」
「簡単に人に頼ると成長なんてできないぞ。だが今回は時間がないからな。よし! こうなったら奥の手を使おう。
僕の言葉にもっと反発してくると思っていたがしてこないので逆に警戒してしまう。
「で、何をやるんだ?」
「おーい!電王!」
ライラの呼びかけに鳴き声で応答する。
「キィィィ」
森の中から1匹の小さなユニコーンが現れる。ライラが雷魔法で生み出したユニコーンであった。
「ユニコーンに名前を付けたのか。電王ってなんだよ。雷の王とでも言いたいのか。名前負けしているぞ」
電王を撫でていたライラの手が止まる。
「貴様、電王を馬鹿にしているのか。電王はいずれ、お嬢様を守れる強き者になるんだ。そして、成長したら上に乗るんだ。大輔は乗せてやらんからな」
「いや乗らんわ! てか、こいつ成長するのか?」
電王に右指の人差指で差す。
「電王に指を差すな、頭が高いぞ」
ライラが椅子から立ち上がり差していた僕の指を払う。
「愛情注いでいれば成長するだろう。電王は
「電王って何者なんだ...」
密かに成長した姿を見たかった事は内緒である。
「とりあえず、修行の続きだ。電王を呼んだのには理由がある。電王の雷を食らい、硬化魔法の感覚を覚えてもらう。痛みを感じなくなったら硬化魔法をしっかりと使えていると言う事だ」
悠々と恐ろしい事をライラは言葉にする。
「いや、いや、雷なんて食らったら死ぬんだけど!」
顔の前で大きく左手を振る。雷だよ。僕の体が頑丈だからって流石に雷はまずい気がする。
心拍数が徐々に上がっていく。
「大輔、貴様はここでは特別なんだろう。雷程度なら死ぬことはないだろう」
口は笑っているが目が笑っていない。
その表情怖いんですけど。逃げるのは恥だが、命には変えられない。僕は踵を返し脚に力を入れる。
逃げようとする僕にライラが電王に命令する。
「電王さん、やってしまいなさい」
どこかで聞き覚えがあるフレーズだった。
走りながら後ろを振り返ると電王の角にライラの頭程の雷が貯められていた。
「キィィィ」
鳴き声と共に電王の角から雷の塊が発射される。
全力で逃げているはずなのだが迸る電撃の玉に追いつかれる。
「いやああああ! 痛えええ!!」
体を引き裂く様な痛みがするが、やはり僕の体はここでは特別一撃ぐらいでは死ぬ程ではないが、これを食い続けると確実にあの世行きだ。
「ほら大丈夫じゃないか」
こちらに歩きながら悠々とライラが言う。
「はあああ!? 大丈夫じゃないだろう! 一歩間違えたら死んでいたんだぞ」
「ガタガタうるさいわ。次行くぞ」
「キィィィィ」
次の電撃が僕を襲う。
「ちょっま、待てぇぇぇああああ!」
手を前に出し、辞めてと懇願するもライラは躊躇なく電撃を打つ様にと電王に命令していた。
「体に膜を張るイメージをするんだ」
電撃の影響で鼓膜がおかしくなり、ライラの指導する声が相当遠くにいるようかのように小さく聞こえる。
電撃による痺れが取れると続けて3撃目が来る。
これでは体がもたない。
感電死しないようにするには硬化魔法を使えるようになるしかない。
集中、落ち着くんだ、僕。
目を閉じる。魔法で全身を透明な膜で覆うようにイメージする。
いや、このイメージでは抽象すぎる。もすこし具体的に体の内側にある光を膨張させ、大きく広げるんだ。
光は歪に形を変形しながら体の外へ溢れ出す。
「やるんだ電王」
電撃が来る。唇を噛み締める。
「あれ? 痛くない。できた!」
硬化魔法を発動できた嬉しさはライラの一言で消え去る。
「これでは無駄が多すぎる。魔力が尽きるぞ」
ライラの言う通り直ぐに体を覆う膜が消える。
「あわああああ! 死ぬううう!」
これ以上の電撃は体がもたない。限界だ。次食らったら死ぬかもしれない。
体のダメージと叫びで息が切れる。
「はあ...はあ...もう体がもたない。体中ビリビリする」
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