第40話 光魔法使えんとご飯抜きだからな

 お風呂から上がるとライラが戻ってきていたらしく、シノと言葉を交わしていた。

 あの厄災の元凶であるユニコーンは見当たらない。

 僕を見るなりシノは驚愕の面持ちで駆け寄ってくる。その後をライラはかったるそうについてくる。


 「大輔は何度も私を驚かせるな。まさか光魔法が使えるなんて!」


 シノは目を輝かせながら体を近づけてくる。

 その目、眩しいです。それにやたらと近いよ。

 顔近くにあるとあれじゃん。心臓に悪いよ。嫌ではないが反射的に後ずさりしてしまう。

 シノの横でライラは僕に殴られた事を根に持っているらしくぶつぶつと文句を言っている。

 そんなライラとは目を合わせないようにした。

 そう言えばとお風呂場で光魔法が使えたとレイスも言っていた事を思い出す。


 「レイスも言っていたから本当に使えるらしい」


 シノとライラはキョトンとしている。

 シノは2回瞬きさせてから聞いてくる。


 「レイスも言っていた...?どう言う事だ」


 僕もなぜレイスが現れたかかよく分からんがお風呂場でのレイスのやり取りを2人に説明する。



 *



 「大輔、貴様と言う奴は、わたくし達を何度驚かせたら気がすむんだ。お嬢様、これで何故ここにアンデッドが現れたか説明がつきましたね」


 額を指先で押さえながら言う。


 「だな、しかし、レイスは何故大輔を試すような事をしたのだろうか。それに、願望とはなんだろうか。分からん」


 シノは溜息をつき言葉を続ける。

 

 「考えても仕方ないなか、レイスに会って真意を聞けばいいだろう。レイスの件も重要だが今は先に光魔法を確認する事がある。私に魔法を見せてくれるか」


 またもや目を輝かせる。こんなにも期待混じりな目で見てくるので光魔法を披露してやりたいがまだ、自分から上手くは使えないのだ。

 それを説明するとシノは肩を落としがっかりする。


 「そうか...早く光魔法をコントロール出来るようになるといいな。楽しみにしているぞ」


 「うん。頑張る」


 僕は大きく頷く。これにて話が終わりだと思ったが、ライラがシノの前に出てきて言葉を発する。


 「お嬢様をがっかりさせるなど言語道断。今使えるようになれ。使えないなら夕食は抜きだ」


 唐突の飯抜き発言、意味が分からずイラッとくる。


 「子供か! 子どもに宿題させるための親の言葉かよ!」


 「何を言っている貴様の親ではないわ! こんな息子はいらん。あっお嬢様なら私の娘になるのは賛成です。というかもう娘みたいなものです」


 シノは呆れているのか冷やかな目でライラを見ている。

 こいつは何を言いだすんだ。意味が分からん。もう1回頭に衝撃を与えてみるか。

 そうしたらこんな馬鹿げた事を言わなくなるだろうか。

 僕も蔑んだ目になっているに違いない。


 「ふむ、レイスと戦いなった時、戦力として期待していたが魔法を自分の意思で使えないとかレイスに勝てる訳がない。これでは足手まといだ。やはりレイスを倒すよりも先に大輔を元の世界に返してあげようではないか。邪魔だからのう」


 眉間に力が入る。頭に血が上る感じがする。

 落ち着け、これ以上の暴力はダメだ。深呼吸する。すると、怒りが静まる同時に体の中で光る何かが揺らめいているのを感じた。

 ゆっくりと目を閉じ、この何かを探る。

 自分の意識で動かせるか試してみる。自在に動かせる訳ではないがある程度コントロールができる。これが魔力なのだろうか。

 今ならこの揺らめく光を操れると思い、揺らめく光を右手に移してみる。するとだんだんと右手に白い光が小さいながらも発光し始める。


 「おお何て美しく、暖かいんだ」


 「やれば、できるではないか大輔...。怒りによって魔法が使えるようになると踏んで先程同様暴言を発したのだ、許せ」


 僕に殴られ傷になっている箇所を撫でながら心なく謝る。

 魔力をコントロールさせるためかもしれないが、絶対これらの暴言は心の底から思ってることだろう。

 うざいことには変わらない。とりま、ライラよりもこの力が気になる。


 「光魔法の主な能力って何?」


 「んー私も見たことがないからなんとも言えんが回復、浄化魔法に特化していると聞いたことがある。何よりも回復魔法が凄いのだ。この世界は回復魔法は無く治療魔法しか無い。つまり回復手段は自然治癒能力を上げ傷を治すしかない。このようにな」


 シノは右手に淡い光を纏う。

 それをライラの頬の傷に近づけると急激な変化は見られないが少しづつだが、傷が癒えていく。

 シノに癒されて嬉しいのだろうが、緩みきっているライラの顔は気持ち悪い。


 「見て分かる様に治癒魔法は相手の自然回復力を大幅にあげるだけだから瞬時に回復させる事ができない。その点回復魔法は傷口の大きさに関係なく瞬時に回復させることができると聞く」


 傷口は完璧には治らず、傷跡がまだ残っている。どうやら治癒だから完全に治るまで時間が掛かる様である。

 シノはライラから手を離すと、緩みきっていたライラの顔は引き締まる。


 「大輔、今なら魔法使えるのだからわたくしのここの傷跡を治してみせろ。出来ないとは言わせんぞ」


 ライラは人差し指で先程僕にぶん殴らた頬の傷跡を示す。

 拒否権無しね。出来ないって言ったら絶対に夕飯抜きだって言うに違いない。


 右手で後頭部を掻きながら本当はこいつの傷なんて直すのは嫌だけど「やってみる」と半端無理やりに返事する。


 ライラの顔付近まで右手を伸ばす。

 傷跡が無く綺麗な皮膚のイメージをする。手は白色に光輝くとみるみるとライラの顔の傷は消えていく。


 「...ライラの傷跡が消えていく。これが光魔法の力なのか!」


 シノは興味津々にライラの傷跡が消えていくところを瞬きせずに観察する。


 「本当ですかお嬢様! 素晴らしいぞ大輔。それに何て暖かい光なのだろうか」


 傷跡は完全になくなり、それに気のせいだろうか顔の張りが前よりある気がする。

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