第35話 ある男の日記 レイス

 628日目。


 この鏡は恐ろしい鏡だった。試しに耳が四つあるウサギの様な見た目の魔物にかざしてみた。霜のようなものが魔物から立ち込め、鏡に吸い込まれた。その後、魔物を私の意思で思うように操れた。これは恐ろしい鏡だと思う。

 あまりにも恐ろしく、手が戦慄き鏡を誤って落としてしまう。

 鏡が割れてしまい割れた部分から靄のようなのが溢れ出し、先程奪った魔物は意識が戻り森へ去っていく。そして、割れたはずの鏡は元に戻っていた。 

 この鏡が誰かの手に渡ると危険だと考え、この鏡を壊そうと試みた。

 しかし、力と魔法で壊しても直ぐに戻ってしまう。この鏡は破壊する事ができなかったのでやむ終えず誰の手にも届かない所に隠す事に決めた。


 シノは腕を組み数秒考え、口にする言葉がまとまったのか口にする。


 「八咫鏡を手記者が見つけ、鏡の力に恐れをなし、隠したのはいいが隠されていたのをあの男が発見し、手に入れたということか?」


 ライラはうなじき肯定する。


 「ふむ、可能性は高いですね。隠されている所へ行き確認する必要があります。大輔よ隠した場所は書かれていないのか?」


 隠し場所の情報が書かれていないか手記の続きを確認する。

 読み続けると隠し場所と思われるところが630日目に記してあった。


 あの鏡を封印するために私たちは、誰1人と近づかないと言われている白夜高山へ向かった。なぜ、ここに誰も足を運ばないのかを理解する。

 私たちの前に1人の魔物が現れた。奴の存在は恐ろしかった。目が合っただけで手が戦慄いてしまう。対面しているだけで魔力が吸われていった。それだけではない命を吸われている気もした。

 死を覚悟したが奴は何もせず去っていた。あの時の奴の表情が忘れられない...。 

 私たちを見て顔を歪ませ、悲しそうな表情をしていた。

 私たちもその場から立ち去り、頂上に向かっていると目の前に鳥居が現れた。鳥居をくぐると神秘的で懐かしい光景が広がる。

 神社があり、その中には御神体が奉られていた。その横に私はこの鏡を安置する事にした。


この世界にも神社があるのか。見て見たいと言う興味が湧き、ここに行きたい気持ちになる。

 だが、僕とは正反対に2人は暗い表情をしていた。


 「白夜高山か...そこには一人の王がいるのだぞ。この手記者が遭遇したのはアンデットの王、その名もレイスだろう。奴には生きた臣下が誰一人もいない。誰も奴に近寄れないからな」


 「どうして?」


 少し間があり渋い顔でシノが僕の質問に応える。


 「奴は特殊な体質でな、近くにいると魔力と生命力を吸い取られしまうからな誰も近寄れんのだ。今では孤独の王とまで呼ばれている。奴の恐ろしい所は闇魔法と光魔法しか殆ど効かないって事だ。もしくは物理技だが、奴に近寄るだけで生命力奪われるので肉弾戦はほぼ不可能だ」


 組んでいた腕を太ももの上に置く。3秒程の沈黙後口を開く。


 「闇魔法が有効打点であるとされているが生半可な闇魔法で戦うもんなら絶対に勝てない。奴は闇魔法の使い手なのだ。なら光魔法はと思うはずだ。しかしな、光魔法が存在するか怪しいのだよ。今までに使えた者は1人しかいないとされており、その者は数千年前から姿を消している。行方を知る者は誰一人もいない。そもそもこれは伝聞でしかなく、記録にさえ残っておらん。つまり光魔法での攻略も不可能である」


 「なるほど。レイスの攻略不可ってことか。どうやって勝てばいいんだ。これでは鏡が安置されている場所に行けない」


 だから僕は白夜鉱山へ行くのを諦めた。だが交互に2人の顔を見ると2人の目には諦めない意志が伺えた。


「お嬢様の力を取り戻すための手掛かりが目の前にあるのならば手をこまねている訳にはいきません。万全の準備をして行きましょうお嬢様! レイス情報はないっと言っても過言ではないですので情報が貧しい。言い換えれば光、闇魔法以外の弱点があり、他の魔法でも有効だが残されているかもしれません」


 ライラがシノの方に向き、熱い心の内を訴える。

 それに鼓舞されたのかシノ椅子から立ち上がり高らかと言う。


 「鏡を確認するのにレイスとの戦いは避けられない。ただでさえ全盛期でさえ勝てる確証がない私が、今の私では無謀すぎる挑戦となろう。だがなここで逃げるのは私ではない! だから私は逃げない、奴を倒す方法を見つけて向かうぞ。白夜高山に!」


 「その意気ですお嬢様! わたくし達ならレイスにきっと勝てます!」


 小さく手をパチパチ合わせ拍手するライラ。なんだこの光景はと苦笑いを浮かべつつ、2人の闘志に圧倒され、あまり深く考えずレイス攻略の一員に加わる。

 

 「おっおう!」


 シノとライラは白夜高山に行く方法とレイスの対策を話し合いだしたので、もう少し残っている手記の続きを黙読する。

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