第34話 ある男の日記 八咫鏡

 1日目と言うタイトルから始まる。


 私は仕事で疲れ、木の下でタバコを吸っていると異世界にいた。この世界は恐ろしい。日本には存在しない空想上の魔物、顔が鷹で、胴体がライオン、尻尾が蛇のキメラに追いかけられ命からがら生き延びた。そして、ある事を発見した。

 この世界では日本にいた頃よりも体が軽いと。いくら走っても疲れない。だがそれだけではなく、足の速さが尋常ではなかった。だから魔物から逃げることができた。

 こんな魔物が住む世界から日本に戻りたい。どこかに日本に帰れる手段があるはずだ。生きて帰ってみせる。私は諦めない。


 手記から顔を上げるとシノとライラは口を開けて固まっていた。


 「ふむ...本当に読めるとは」


 「早く、続き読んでくれ!」


 シノに急かされ続きを読む。


 2日目の日記を読む。


 何とか今日も生きることができた。食べ物を探そうと森を歩いているとまたしても昨日のキメラに襲われた。 全力で森の中を駆けずり回ったが崖下に追い込まれ、逃げ道がなくなってしまった。

 キメラの鉤爪が私の体を引っ掻いたのだ。赤い血が噴き出した。流石に死を覚悟しの。だが、この血は私ではなくキメラだった。

 驚いた、私を引き裂いた強靭な鉤爪から血が噴き出していたのだ。痛みにもがきながらキメラは何処かへ逃げて行った。

 私はこの世界では身体はどれだけ頑丈なのだろうか。明日命をかけた実験してみよう。もう一度キメラと...。


 もう一度戦うってどれだけ度胸があるんだか僕ならもう戦いたくないと思うけどね。


 3日目の日記を読む。


 キメラを倒してしまった——。

 

 文章の始まりに驚いてしまい言葉が詰まる。


 「ッ...キメラ倒したの!」


 「そんな驚く事ではない今の大輔でも簡単に倒せるはずだ! いいから続き読んでくれ」


 あ、僕でも倒せんるんだ。そんなに実力僕にありますかね?

 考える時間をくれることなくシノに催促されたのですぐさま続きを読み上げる。


 この身体は一体どうしてしまったのだろうか、硬さだけではなく、力までも元の世界よりも数十倍ある。

 私は頑丈だから致命傷は負わないと考え突進してくるキメラに立ち向かった。 

 その鷹の顔面に拳を一撃入れた。するとキメラは悲鳴を上げ気絶したのだ。この力があればこの世界で生きていけるかもしれない。


 この後の300日間の日記の内容には目新しい事は書いておらず、手記者の冒険譚や魔法が使えるようになった事が淡々と書かれているだけだった。しかし、301日目は内容が変わる。


 この世界では孤独だった私に心に満たしてくれる者が現れた。まだ、11歳だと言う。名前は快斗と言うらしい。この子も日本からこの世界に迷い込んで来たらしい。

 驚いた事に魔法が使えていた。誰かに教わったと言っていた。

 この子は早く元の世界に戻りたいと言う。私は決心した、私はこの子の為にも早く元の世界への戻り方を見つけようと。


 まさか、この世界には二人も元の世界の住人がいる分かり驚愕する。

 一方ライラとシノは怪訝な表情をし、シノは額に手を当てながら言葉を発する。


 「これはあの男が書いたものなのか? 私から力を奪った男がこれを書いたとは思えない。この手記からはあの男にない優しさを感じる」


 ライラは頤に手を当てながらシノの言葉に肯定する。


 「ふむ、お嬢様のおっしゃる通りです。わたくしもあの男がこの手記を書いたとは考えられないです」


 「そうなってくるとどうしてあの男はこの手記を持っていたのだ...」


 ——まだ、続きがあるから結論を出すのはまだ早い後と言う事で最後まで手記を読む事にした。


 627日目の日記に八咫鏡の事だと思われる内容が書かれていた。


 快斗が熱を出してしまった。どこか休める場所は無いかと探しているとある平屋を発見する。泊めてもらおうとその家に訪問した。しかし、中に人がいる気配がなかった。

 勝手にお邪魔すると肉が腐り落ち、骨だけになった人の死体を発見した。その骸骨の腕の中に古い鏡を発見する。

 快斗を寝かせたあと骸骨を埋葬するためにその抱えている鏡を取った。その鏡で一瞬だが自分を映した。

 すると、心が鏡の中に吸い込まれていく。しかし、快斗の呼び声で我に返りかえり事無きをえた。

 この鏡には何かしらの力があるのだろうか。勝手だと思うがこの家を拠点にする事に決めた。

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