第31話 豊満な胸を見て何が悪い

 「......って感じで妹は力を奪われてしまったの」


 チョコさんは話し終え、悲痛な表情をする。


 「そんな事があったのですね。その男許せないです」


 俯き僕はシノ力が失われた経緯を聞いた僕はどうしたらいいのか、シノのために何ができるのだろうかと考える。


 「ふふ、別の世界から来て自分の事で精一杯なのに昨日会ったばかりの妹の為に真剣に悩むなんて...。大ちゃんは優しね」


 顔を上げるとチョコさんは暖かな笑顔を向ける。

 どうしてシノに対してこんなにも想えるのだろうか? 僕は自身の想いを言葉が纏まらないまま口にする。


 「シノとは昨日会ったばかりとは思えないんです。何て言うか...元いた世界にはシノに似た人がいまして...その人とは喋り方や雰囲気は違うですけど、心が同じと言いますか...。人物を形成する芯の部分が2人とも同じような感じがしまして。でも似ているからとではなく...僕は何が言いたいんですかね?」


 自身の語彙力の無さに苦笑いしてしまう。


 「それで? 君はどうしたいの?」


 自身が何を言いたいか分からず支離滅裂な僕の言葉を馬鹿にせず真剣にチョコさんは聞いてくれている。


 「えーとつまり言いたい事は...好きな子に似ているから守り...いや、違うシノだから守りたいんです! でも、守るってかっこいい事言って、チョコさんの話聞く限り僕程度では守れそうになさそうにないんで役に立たなそうですけどね。役に立つとしたら手記を読む程度です」


 チョコさんは大きく溜息をしだす。そして、人間の姿へと変える。

 その姿は美しく、胸元が開いているグリーンのドレスを身に纏っている。

 僕の頭に手が伸ばされる。その手は僕の髪をゆっくりと撫でる。


 「君なら妹を任せていいと思っている。君は自分が思っている以上に強い奴だよ」


 僕はグレーモスを倒せて強いと思い込んでいた。だが実際は相手は油断しており、ほとんど純粋な力勝負であったから勝てたのだ。

 僕なんて強くない。ただ他より体が頑丈で身軽なだけ。魔法は使えない。仮に使えるようになっても弱いだろう。

 そんなマイナスの念に押されてしまい、首が垂れてしまう。


 「僕は強くないですよ。強いのはライラやカミツルギって言う人たちの事いうんですよ」


 「私は身体の強さに対して強いと言ったわけではない。君の心が強いと言ったんだ」


 「心?」


 顔を上げ首を傾げる。頭にはまだ暖かな手が置いてある。


 「そうだ。大ちゃんにとってグレーモスは自分よりも体が何倍も大きく、恐ろしい存在に映ったはずだ。それなのに君は逃げずに妹を守ろうとした。そんな君を弱いなんて言わせない。心が強い者が本当の強さを持ち合わせているんだよ。わかったか!」


 頭にふんわりと優しく置いてあった手は髪がボサボサになるまで乱暴に左右に振られる。


 「あわわわ!」


 チョコさんは頭から手を離しベットに女の子座りをし、僕は乱れた髪を直す。


 「大ちゃんはこれからもっと強くなれるさ。誰よりも心が強いから」


 チョコさんと目が合うと満面の笑顔でと言う。

 ここまで言われてでもとマイナスな考えをしても意味がない。だから僕はチョコさんの言葉に対して力強く返事した。


 「はい!」


 そして覚悟を決め、ベットの上に立ち上がり右手で拳をつくり宣言する。


 「シノの力になりたい...その為に強くなる!」


 チョコは僕を見上げながら目を細め、頬を緩ませている。


 「大ちゃんなら強くなれるよ、お姉さまが保証してあげる...ってええ!!」


 ここはベッドの上、それも高級で柔らかいがため思っていたよりも足場が不安定で真っ直ぐ立っているのが難しかった。

 僕はバランスを崩してしまう。


 「おわあああ!」


 「ッ!」


 2つの巨大で柔らかな丘陵に僕の顔は倒れこみそのままチョコさんを押し倒す。


 「痛く...ない。それにスゲー柔かい」


 「いつまでうずめている気だ...?」


 チョコさんの声のトーンが高かった。

 このままうずくまって、癒されていたい。が、この体制は流石にまずいので名残惜いがにゆっくりと顔を上げ、体を起こす。

 チョコは横に顔を向けており、目を線を合わせてくれない。頬をほんのりと赤く染めているので怒っているのかもしれない。

 謝ろうと口を開きかけた時、チョコは僕からささと後ろに下がり距離を取る。そして、少し前傾した体制となり、両腕で豊満な胸を挟んでいる。

 唇は尖らしているのでやはりお怒りのようだ。

 怒られると分かっていてもこんなにも豊満な胸が強調され、綺麗な胸元が見えてしまうと自然とそれに注視してしまうではないか。


 

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