第22話 仮婚約期間は6ヶ月
「そうよ、馬鹿...! 喜びなさい。こんな気高く優美で気品溢れる私が好きだと言っているのよ!」
唖然と立ち上がり腰に手を当て上から目線で言う。その姿と好きと言う言葉に呆気にとられてしまい脳内の処理が遅れ、言葉の意味を理解するのに数秒を有した。
「え、あ...と...ま...まじかあああ! 本当に好きなのか!!」
こんな女性に好かれるなんて嬉しい。しかも好きな人と同じ顔、最高だよ。でも、相手は魔王だし、結婚するなら僕は元の世界の彼女と決めている。だが、こんな可愛い女性との結婚チャンスは2度と来ないかもしれない。
意思がぶれぶれな僕にシノは提案する。
「この世界では6ヶ月...6ヶ月間は仮の婚姻なの。6ヶ月後の1ヶ月以内に正式に結婚するか解消するか最終決定する事ができるわ」
「えっえ! 6ヶ月!?」
いきなりの提案で脳がまたしてもついていけない。
「大輔が6ヶ月たっても私の事を好きにならなければその時に婚姻を解消する。だけど私の事が好きになったら結婚受け入れるこれでどう?」
半年はお試し期間みたいなものか。
初めての女性の人からの告白、シノの本気の想いに気圧されてしまい、お試しならと僕は「それでいいなら」と安直に提案に乗ってしまう。
だだの人間がこんな美しい魔王から口説かれるのは僕以外いないだろう。困惑と嬉しさ、誇らしい気持ちで感情が忙しい。
そんな僕の心を読んだのか「なんだ負けた気がする!」とため息混じりに言いいながら僕の脛を蹴る。
「いったああああ! 弁慶に泣き所は痛い! あれ? 何で痛みがあるんだ?」
僕はの世界ならこのぐらいの蹴りどうて事ない筈なのにシノの蹴りは痛みを感じた。これが俗に言う。愛の攻撃は痛いって奴か。知らんけど。
「はっ! 何事ですか!」
僕の騒がしさい声で気絶していたライラが目を開ける。そして姿勢を起こし辺りを見渡した後、視線は僕に固定される。
少し間があり、ライラは首を落とすように俯く。
「
歯を食いしばりやたらと忙しく体をくねくね動かす姿から、僕と言う人間を認めたくないが認めたざる得ない事に腹が立って仕方がないのだろう。
体を制止させ、歯が軋むほど噛み締めていた顎の力をゆっくりと緩め口を開く。
「...約束ですね。おい、人間。いや、大輔と言ったか。
心の中で葛藤しているのだろう言葉がだんだんと詰まっていく。まるで、結婚の挨拶に来た男に向かって大事な娘を渡す父親のようだ。
「お父様、お話が...」
結婚の挨拶に来ている感覚となりお父様と失言してしまった。と言うのは嘘で、わざとである。
「貴様のお父様ではないわ!」
「父親に挨拶しにきているみたいでお父様と間違って呼んでしまいました!」
こうなったらとことんふざようと決め、背筋を真っ直ぐに伸ばし、姿勢良く座る。
「ふむ、大輔には言われるのは癪だがお嬢様にお父様と呼ばれるなら悪くないかもしれんな。こやつが間違えたようにお嬢様もお呼びになっても構いませんよ。お父様と」
「絶対に呼ばない」
冷ややかな声音と何言ってるんだこいつとばかしに腐った目線でライラを見る。
「そんな目で見ないでください。お嬢様...。おい、そういえば大輔、話とはなんだ?」
ばつが悪いのか無理やりライラは話を変える。
先程決めた結婚の条件などをライラに説明すると、説明の滑り出しは苦虫を噛み潰した表情をしていたが話の終盤には笑顔が生まれる。
「確かに結婚の条件はそんな感じだったな。忘れておったわ。ふむ、ようはこやつがお嬢様を好きにならなければ、6ヶ月たったら結婚取りやめってことだな。よし、大輔。お嬢様を好きになるな、いいな!」
結婚しようとは現在は考えてなどいないが、命令されて釘を刺されるとムカつくいてくる。
シノも僕と同じように忿怒の感情を抱いているようでシノはライラを睨みつける。
「んん、お嬢様今日はもう遅いです話の続きは明日にしましょう...。ついでだ、大輔も休むと良い」
シノに睨まれた事で萎縮したんだろうな。本当にライラは分かりやすい。
部屋を案内するということでライラの後をついていく。
「また明日ね」とシノは小さく僕に手を振るがライラとは視線も合わせずに部屋に向かう。
これはまだ怒っていますね。どんまいライラ。
僕を部屋へ案内しているライラの背中からは邪悪なオーラを放っているが伝わってくる。
このまま付いて行って大丈夫か心配なのだが後ろを付いていくしかない。
一室の扉の前に着くと僕の方を振り向き、「この部屋を寝床に使うが良い」と後ろ手で扉を開ける。
扉から中を確認すると壁には両開きの窓、そしてベッドと収納家具が置いてあるだけでさっぱりとしている部屋であった。
中に入る前に止められる。
その後は一言も口を開かず歩いた廊下を戻って行く。
何もなかった事に胸をなでおろすと服が泥で汚れている事に意識が向き、今すぐお風呂に入りたくなる。
「体を清潔にして新しい服に着替えたいな」
僕は掛けてあった藍染の浴衣とタオルを手に持ち、風呂へ足を運ぶ。
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