第20話 決闘勝負の行方
「いや、まだだあああ!!」
上半身を左に捻り、相手の竹刀の打ち込みが左胴を擦る。
判定はアウトかと思ったが、しっかり入っていなかったため一本にならずに済む。
「ふむ、やるではないか!」
「そりゃどうも」
息つく暇を与えてくれず、懐に入られる。打たせないために前に進み鍔迫り合いとなる。
「ふむ、やるではないか。グレーモスを倒したことは認めよう。だが...お嬢様との結婚は認めない! 親の代わりとなり娘の様に愛してきたお嬢様をよく分からん人間と結婚させるわけにはいかない!」
この発言により理解した。こいつ親バカだ。本当の娘ではないが娘の様に溺愛し、父親の様な気持ちになっているんだな。
臣下の勤めではなく、娘の様に想ってるから結婚は認めないようだ。だからこんなにも煩かったのか。
確かに、娘がよく分からん男と結婚報告をいきなりされたら怒るよな。気持ちが分からないでもないが——。
「僕だって結婚したかったわけではない。知らないうちに結婚していたんだよ! 僕は被害者でもある」
「なんだその言い方は! お嬢様の好意に泥を塗る気か!」
「えっなんかごめんなさい!」
怖よ! 鬼の形相だ。僕間違った事言ってないよな。この勝負勝利の形で早めに終わらせたい。どうする方法はないか...。
親バカに効く作戦を脳裏に閃く。動揺を誘い勝利をもぎ取るための作戦。
名付けて"ドキドキ結婚挨拶"
本当に心臓が煩くなってきた。
——やっぱり、あの言葉を言うの恥ずいし、この作戦やめようかな。
いやいやそんな忸怩たる思いに負けるな、ライラに勝つにはこの方法しかない。
恥じる心よ落ち着け、誠心誠意な心意気で言うのだ。
真剣な面持ちで、キリッとした目をライラに向ける。
「お父様、僕に娘をください。絶対に幸せにします!!」
ライラにこの言葉が耳に届いたか不安になるぐらい沈黙が続いた後、憤慨する。
「貴様なんかに娘はやらあああん!!」
「気持ちが昂ぶってしまい、つい娘様をくださいと言ってしまいました。そのような話は僕が勝利して後ほどしっかりと申し上げるべきでしたね。ああ、それにお父様って呼んでしまいました。いろいろと申し訳ないですね」
だんだんと、ライラの表情が鬼のようなから、本当に鬼と言っても過言ではないほど赤くなり、口が鋭くなる。
「人間が調子にのるなあああ! 一本取って終わりにしようと思っていたがやめだ! 殺せないから苦痛で気絶させてやる!」
うわ、まさかここまで激怒するとは。だが、これでいい。冷静さを欠かかせられている。
グレーモスと違い怒り狂い僕を痛みつけるのに躍起になっている。これで僅かだが勝利を掴める事ができる。
鍔迫り合いをしていたが、ライラは体を引き、僕の頭に向かって木刀を振り落としてくる。
防ぐために竹刀を頭上よりも振り上げる。
僕の鍔にライラの刃先が重なり、すぐさま引かれ、離れる。
そして、間髪入れずライラは体を前進させては、中段に構え直していた木刀の切っ先を僕の喉を目掛けて突いてくる。
「どんな生物も喉は弱点。どんなに頑丈でも喉を突かれて怯まない生物はおるわけがない。痛みの苦しみで気絶するがよい」
喉に強烈な一撃が突かれる。
「馬鹿な!ありえん...」
「ゲホ、やっぱり僕は...頑丈だな、ゲホホ...!」
涙目になりながらも僕は突きを受け止めていた。
無駄に大きく木刀を上げたのは作戦のうちだ。喉をライラに狙わせるために。
生物にとって喉は弱点だが...。僕ならタイミングよく体を引けば耐えれるとグレーモスの戦い、ライラとの数回の打ち合いで確信していた!
「ただの人間が気絶せす受け止めただと...!耐えれる一撃ではないはず...異世界人はここまで特別だというのか!」
動揺により木刀を握る手に力が入っていない隙に、僕は木刀を柔らかく確かに握り、相手の木刀絡める様に反時計に巻き上げる。
ライラの手から木刀が離れ、上空を舞う。
冷静さを欠き、気絶させる事に躍起になっているなら木刀を大きく振りかぶり喉を晒すことで、苦痛を味わらせたい気持ちがあるライラなら胴を狙わずに生物の弱点の喉を狙ってくれると一か八の賭けをした。
下手したらこの一撃により気絶していたかもしれない。だが、このぐらい賭けに出なければ勝てる相手ではなかった。
意表を突かれたライラは動揺し、体が硬直したまま動かない。
「特別ではないな、元の世界ではただの凡人さ。まあ、この世界では少し特別かもしれないな。お前の敗因は冷静さを欠き、僕の誘導にまんまとひっかかり、人間だからと油断したことだあああああ!」
木刀を大きく振り上げライラの頭に打ち込む。
グレーモスが言っていたな戦場で冷静さを欠いたら負けると、その通りだなと実感する。
「がっは!」
苦しみの声を出しライラは後ろに倒れこむ。ライラの隣に空中に舞っていた木刀が突き刺さる。
ライラの気絶を確認したシノが戦いの幕を降ろす。
「ライラが気絶したことにより大輔の勝ちとする!」
「やったー僕はこれで結婚を認めてもらえる...って違うわ!」
握りこぶしを作りガッツポーズをしている右手を下ろし、落ちかけている夕日を見ながら、ため息とともにくたびれた思いが吐き出される。
「はぁー疲れたー」
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