第18話 決闘の始まり
シノとライラが話し込んでいる。ライラは険しい表情をしており、恐らく内容は僕についてだ。
しばらく歩きそうなのでどこで、何をして結婚してしまったのか考えてみた。
シノの行動で怪しい点が1つあった。それは名前を付けた事だ。
いやまさかね、名前を付けただけで結婚した扱いになるのか?
ここは異世界だから、元の世界の常識とは違う。
ならば、ありえるのではないか...。
もう、考えても結論が出てこないのでシノに結婚について後で根掘葉掘説明してもらおうと判断したちょうどに、決闘するための場所についたようだ。
「ここでいいだろう」
ここの周りには疎らに草木が生えているぐらいで他に何もない。戦いにはもってこいの場所であった。
シノは魔法でか木刀を2本準備しながら、僕にゆっくりと近づいてきて、その内の1本の木刀を渡してきた。それを受け取る同時に距離を詰められ右耳元に湿った空気が触れる。
「負けるなよ、大輔なら勝てる」
「おっふ!」
体の近さもあるが耳元で囁かれ、吐息が耳を撫でる生暖かさに、驚いてしまい変な声が出てしまう。
鼻をくすぐるシノの甘い匂い...って何考えているんだ僕。心臓どきどきするな、落ち着け。
僕からシノは離れ、踵を返し、ライラに木刀を渡しに進む。
シノの背中をおぼろげに見つめながら頬の筋肉が軟化していく。
——シノからの応援嬉しい!
女性から応援なんてされたら最高でしょう。それも、好きな人に似ているんだ尚更最高だ。
おっといけない。これから勝負するのだ、気を引き締めなければ。
僕は気合をいれるため両手で頬を数回ぱちぱち叩く。
シノは僕に背を向けているので軟化した表情に気づいていないが、ライラは気づいたようで、視線に憤りを乗せて睨みつけている。
僕は睨み返すのでなく、ふんとどや顔をしてみせる。
僕の表情をみたライラは眉間に皺を寄せ、歯から軋む音がする程に噛み締める。
シノが僕とライラの間にいなければ今にも襲って来そうであった。
「なぜそんなに睨み付けている? ライラ」
「なんでもありませんよ、お嬢様...。——あの人間ぶっ殺す!」
眉間の皺を緩め、満面の笑顔をシノに向けるも言葉は殺意溢れていた。
シノは訝しながらライラに木刀を渡し、それぞれお互い向かいあったまま6歩下がっるようにと指示する。
僕らはその指示に従い定位置に着く。
シノは僕らの中間地点に立ち交互に視線を送る。
「では、もう一度確認だ。2本先に取った方が勝者とする。ポイントとなる箇所は頭と胴だ。魔法の使用は無し。そして、気絶したら負け。準備いいな」
僕とライラは頷く。
シノは7歩後ろに下がり右手を掲げ、腕をまっすぐに力強く降ろす。
「では、はじめ!」
戦いの火蓋が切られた。
*
お互い木刀を中段に構える。向こうは動く気配が無い。なら先手必勝。
左脚に力を入れ相手の頭目掛けて木刀を打ち込む。
魔法使用禁止なら僕の方が絶対に早くて、力も強いに決まっている。
仮に単純なこの一振りに反応出来たとしても、力は僕の方が上のはずだから、木刀ごと脳天に打ち込み一本先取だ。
やはり、ライラは僕の一振りに反応が出来ているようで、打ち込みに合わせ木刀を上に掲げ、剣先を右斜め下に向ける。
「ガードしようが関係ない! 力で木刀諸共打つ抜くだけだ!」
脳天目掛け大きく振り下ろした木刀の刃先が相手の木刀の剣身を滑り、いなされてしまう。
踏み込んだ勢いを止める事が出来ずそのままライラの左側を通り抜ける。
たたらを踏みながらも半身を捻り、無理やり体を反転させる。
「え? 何をしたんだ?」
何が起きたか理解出来ず驚愕している僕をライラは一笑に付す。
「驚く事はない。普通に剣撃を捌いただけにすぎない。貴様は人間にしては力と早さはあるようだがそれだけのこと」
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