第16話 アンデット王・レイス(INTERLUDE)
ぼくは椅子の取手に右肘を乗せ、手のひらで口を覆うように頬杖を付いて、水晶で戦いの場面を覗いていた。
「わあ! 凄い! 魔法を使わずに巨人を倒すなんて。もし、魔法を覚えたら面白いことになりそう」
ぼくの甲高い声が空間内に反響する。それほどここには何もない。あるのはぼくが座る背もたれが長い椅子とその右隣にいる1人のアンデット。
「分かっているのかな? この世界で名前を付ける意味が何なのか。知るわけないよね...名前を付ける行為が
面白おかしくて口元を緩め笑ってしまう。
いつぶりだろうか、3年前ぶりか...。ここまで面白いと本気で笑ったのは。
3年半前アルドラと出会い、笑い方を教えてくれた。
あのひと時は楽しかった。
でも、楽しかった日常は突然奪われ、その日以来、心からの笑いを忘れちゃった。
今では心の中に冷静な自分がいて、騒いだり、笑ったりしても、どこか他人事って感じで面白いと思えなくなっちゃっている。
ぼんやり見ていた水晶から目を離し、無駄に広い空間の辺りを見渡す。
「この世界はつまらない...あの人間にちょっかいしたら面白いかな? それにぼくの願いを叶えてくれるかも知れないよね。ね、アルドラ」
右隣にいるアルドラから返事がない。
返事がないのわかっていた。だからね、命令した。頷くようにと。
するとぎこちなく頷く。
それを見た僕は寂しさがどこからか込み上がってくるのを感じた。
ただぼくの隣にいて命令のみを聞く傀儡。
もうあの頃のように明い笑顔がなく、感情が一切ない。
——もう死んでいるのだから。
「こんなひとりぼっちの世界なんてつまらない...」
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