第14話 絶望の先にある希望
僕ならこいつに勝てるとたかをくくっていた。けれども現実は違う。力の差があり過ぎた。僕は馬鹿だ、調子に乗り過ぎた。この世界でならどんな奴にも負けないと思っていたのに....。
「...もうここで終わりだ......」
僕は俯き、ボソリと絶望感を含んで呟く。
すると、視界の下から突然淡く光だす。どうやら胸あたりから光っている。
眩しいとは不思議とならず、目を開けていられる。そしてこの光は暖かく、柔らかくて落ち着く。体の震えが止まる。
淡い光のお陰か絶望感が薄れていき、心がすっきりとしてきた頃合いに淡い光が後は頑張れと言わんばかりに輝きが大きくなり、そして徐々に薄れていく。
可笑しな現象にグレーモスなら反応していると思い、顔を見上げると先ほどと何も変わっておらず、勝ち誇った表情をしている。
次に彼女を見るが、可笑しな現象に気づいていな様子で僕を憂わしげに見ている。
どうやら淡い光は僕しか見えていなかったようだ。
よく分からないが助かったありがとう。これでまだ戦える。
「体が動く限り最後まで足掻いてみせる。いや、この戦い勝ってみせる!」
グレーモスに高らかと宣言する。
「あ?! とうとう壊れたか? 勝ってみせると言わなかったか? どうやって勝つんだよ!」
グレーモスは大きな足取りで僕に近づいてくる。
人間は考える思考力が備わっている。考えろ僕。
僕には格闘センスなどない。いくつもの攻撃を組み合わせて相手の意表をつくとかそんな事は出来ない。だから、連続攻撃は止めた。
僕にできるのはまっすぐに一撃を確かに入れるのみ。結論、奴が防げない状況をつくり、一撃で決めるしかない。
だが方法が分からない......。
鼻の先まで来たグレーモスは両手に緑光を纏わせる。
「俺の魔法は一撃が強すぎて誰もがあと型も残さず死んでいく。だが面白い事に貴様は生きている。ははは!...死ぬまで殴りつけてやる。一撃で死ねない事を後悔するんだな」
唇を強く噛みしめながら後ろに一歩下がると硬い物が踵に当たる。
それは物理の教科書だった。
突如ある方法が頭の中に浮かぶ。それは今日最後に受けた物理の授業中の先生の言葉だった。
『いいか、物体を上から落とすと重量によって引き寄せられ、地面に衝突した時の衝撃は物体の重さの何百倍に相当する。それに...』
これは告白の事で一杯であった僕の頭に入ってきた唯一の言葉だった。
役に立ちそうだよ先生。ありがとう。心の中で感謝する。
「これに賭ける! 成功させるために1つ1つ全力でやる!」
前に飛び込む、僕の体は空気を切り裂くように進む。
「無駄だ、単調すぎるぞ」
グレーモスは拳を受け止めようとみぞおちの前に手と手を重ねて構える。
「分かっている! これが僕の全力だああああ!」
拳でなく右肩からグレーモスの手のひらへ突っ込む。
僕の渾身の飛び込みは、グレーモスを
僕の体は大きな手のひらを滑り地面へ落ちていく。
「これで貴様の負けだ。ははは!!」
グレーモスは勝ち誇り、僕を見ていなかった。
僕の全力を防いだ事で油断しきっていた。僕の全力は
地面に着地し、上を見上げると、重ねていた大きな手は緩んでおり、重ねられている指と指の間に普通の人が通れ隙間を発見する。
この僅かな隙間をくぐればグレーモスの上半身に拳が届く。
失敗すれば、手のひらで受け止められて、おもちゃのように扱われ、死があるのみ。だが、リスクから逃げていてはこいつは倒せない。
僕は覚悟を決め、握りこぶしを作った両腕を上に伸ばし、膝を曲げ、脚に力を込める。そして、バネが伸びるかの様に膝を伸ばしロケットのように打ち上がる。
「うおおおおおおおっ! まだ本気は残っている!」
僅かにある指の隙間を皮膚と皮膚が擦りあいながらもくぐり抜け、みぞおちに握り媚びしを食い込ませる。
「ごふぇええええ! 何だああああああ?!」
グレーモスはみぞおちの苦しさ、痛みに呻吟する。
僕は拳をみぞおちに入れたかった訳ではない、たまたまだ。上半身さえ届けば良かったのだ。
狙いは、グレーモスの体を遥か上空へ飛ばしたかった。この大きな躯体を飛ばせると僕は僕の脚を信じていた。
僕とグレーモスは大空へ打ち上がる。
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