第13話 絶望を知る
上に行く勢いをころされたので地面に体が落ちていく。両足で無事着地し、10メートル下への着地により、脚に痛みが走るがそれよりも防がれた事に驚愕するあまり、痛みを気にしていられなかった。
「驚いているようだな。戦い中に怒りで我を失うのは雑魚がするのだ。強い者は怒りをコントロールして、力に変える」
グレーモスの両脚が薄く白い光に覆われている。魔法か、どうりで僕の拳を受け止められたというわけか。さしずめ強化魔法だろう。
おそらくだが両腕にも緑の光で分かりづらいが強化魔法は施されている。
とりあえず距離を取るため、両足に力を入れ後ろに飛ぼうとした瞬間、視界の角に大きな腕が動いたの見えた。
「逃がすかよ!」
僕の体を大きな左手鷲掴みされ、骨が砕けそうになるぐらい強く握られる。その痛みで脚の力が抜けた。
「いてえええええ! なんだよその握力...」
振り解こうと両腕を外側へ力を入れるも、びくともしなかった。
僕は軽々と持ち上げられ足は地面を離れる。
体を無造作に動かし、暴れるも抵抗虚しく、グレーモスはニヒルな笑みを浮かべ僕を掴んでいる手を強く緑に輝かせる。
その輝きにより物凄く眩しいだけでなく、大きな手の周囲には風が吹き出し始め、嵐の中にいるようで、目を開けるのがしんどく目を瞑ってしまう。
耳だけは何とか機能し、グレーモスの言葉を聞き入れる事ができた。ただそれだけ。
「次は本気でいく、ご自慢の身体能力で耐えるんだな。風よ集まれ——
振り下ろされている最中、僕の体は横になり、左の側頭部から地面に叩き潰された。
「ぐはっああああ!......うっ!......」
僕を中心にして地面が相当抉れ、頭の左サイドから出血し出す。元の世界なら即死だった。
初撃とは違い僕に余裕は無い。頭が地面に食い込んでいく最中に何度も意識を失いかけたが、歯を食いしばり、必死に気をもたせた。
グレーモスの手の光は消え、鷲掴みにしている手が緩みこれで攻撃は済んだと安堵するも、腕から解放されず、僕を鷲掴みしたままに持ち上げられる。
僕の視界には大きな眼球が映る。ぎょろぎょろと悍ましく眼球を動かした後、ゴミはのように前に捨てられる。
「ごほ! おえっげほげほ...!」
地面に叩き潰され、横に数回回転し、止まる。
頭を強く打つ過ぎたのか吐きそうになるほど気持ち悪く、それに目眩にも襲われる。
ぐわんぐわんする視界に彼女が映る。距離が縮まって来ているのでどうやら僕の方へ駆け込んできているようだ。...来ては駄目だ。来たら巻き込まれてしまう。
僕は何度、彼女を心配させるのか。これ以上心配させたくないない。それに守ると決めたんだ。
「来るな! 僕は大丈夫だ!」
彼女を越させまいと叫んで制止、歯を食いしばって足をおぼつかせながら立ち上がってみせる。
正直、叫ぶのが辛かった。頭に響いた。それに立ち上がるのも辛かった。体中がズキズキした。けれども、彼女を守るために僕は頑張った。
目の前のグレーモスに目をやると満足げな表情をしていた。
「よく生きていたな、人間。ははは! 今にも倒れてしまいそうだな。やはり貴様は頑丈なだけだ」
僕を痛みつけることができたのが嬉しいようだ。憎たらしい笑みに向かって心中にある疑問を言う。
「お前の魔法は殴るか叩きつけるかの違いだけで、最初に食らった魔法と原理は同じなのにどうしてこうも威力が違う!」
グレーモスは鼻を鳴らす。
「そんなのも分からんのか人間は。単純に魔力の練られた量の多さの違いだ。魔力の練る量が多ければ多いほど、風による推進力が莫大に跳ね上がる」
魔法の練り方次第で威力が増幅される理屈は分かった。けれども、もう一つ納得いかないのがある。
「もう1つ聞かせろ。なぜ、僕の速さについてこれている。先程までは目で捉えることができていなかったじゃないか...」
グレモースは吹き出し、高らかに笑いだす。その笑い声が体中に響き痛みを増幅させる。
「ははは! 単調だからな、数回俺に攻撃を当てていたがどれもまっすぐ過ぎる。もうお前の攻撃パターンは読めた。だから先読みし、攻撃がくるであろう所を防いでいるにすぎない。信じられんが、お前の一撃は魔法を使用していない俺以上に強いからな、もう油断せず魔法で身体能力を強化して攻撃を受けるようにしたまで。いいか人間、魔法を使えない奴は魔法を使える奴に勝てん」
焦りが全身を包み込み、体が戦慄く。
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