第11話 ただの人間だ

 何て軽すぎる拳なんだ。

 グレーモスの拳はこの世界では威力は相当あると思われる。

 げんにグレーモスの拳により、僕を中心にして円を描くように地面は少しばかりえぐれていた。

 グレーモスは彼女の言葉を聞いていたのか動揺を露わにしながら問うてくる。


 「貴様は人間なのか? 嘘だありえん。俺の拳をたかが人間が防げるはずがない...!」


 僕は巨大な拳を跳ね除ける。


 「そうだよ、日本生まれの一般的な人間だよ!」


 グレーモスは腕を弾かれたことに驚いたのか数歩体を引いていた。


 「ッ...何をした? 魔法を使った形跡がない。俺の拳を魔法も使わずに受け止めれる人間なんているはずがない。嘘をつくな! どこの種族だ本当の事を言えええ!」


 あまりの煩さに両耳に人差し指を突っ込む。グレーモスの怒りの叫びが収まった頃合いに耳から手を離す。

 大きく息を吸い肺にこれでもかと空気を入れる。そして、僕も負けないぐらいの声を腹から出す。


 「魔法を使わずにお前の拳をただ受け止めただけの...魔法の使い方も知らないただの人間だって言ってんだろうがあああああ!」


 叫んだ事でグレーモスは度肝を抜かれたのか、両目をかっ開いて動揺している。このチャンスをみすみす逃すわけなく右手を握りしめてグレーモスのみぞおち目掛けて殴り込む。

 グレーモスはうめき声を上げながら後方へ勢いよく吹っ飛ぶも、足の指を地面にめり込ませ、地面を削りながら勢いを殺す。

 結構なダメージがあったようで腹を右手で抑えて片足をつく。


 「ぐっ...この俺が人間ごときの動きを捉えられないはずがない。油断したんだ。糞!」


 腹を抑えたままゆらゆらと立ち上がる。 

 その表情は今の状況に納得していないのか眉を寄せており、また痛みに抗うためなのか歯を食いしばっている。

 そして、まだ納得していないのか同じ事を肩で息をしながら聞いてくる。


 「なんなんだ貴様は! 人間は滅んでいるからいるわけないんだよ」


 彼女やグレーモスも人間がいないと言うのだからこの世界に人間はいないのだろう。他の世界から来たと言ってしまおうかと思ったが言わない方が動揺を誘えると考え、僕は真実は言わない。


 「しっかり見て聞け、さっきから言っているじゃないかだだの人間だと!」


 話し込んで回復されるのは困るので今のうちに叩き潰してやろうと思い、ストライドでグレーモスの前まで行く。

 僕が近づいてくるのは見えたようで、前に腹を抱えていた手で握り拳をつくり、前に突き出して来た。

 だが、僕はターンを決め、背中に回り込む。


 「糞が!」


 体を回転させ裏拳を叩き込んでくる。しかし、僕は軽く後ろに体を引き、軽々と避ける。


 「なぜだ、魔法を使わずに俺の攻撃を受け止められる。なせだ、そんなに俊敏な動きができる。ありえん、魔法を使っているのなら分かる...。だがお前からは魔魔力を一切感じない。何故だ! 糞が糞が糞がああああ!」

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