第8話 運び屋のレスキュー ④
船底から落ちるように海中へ出たDAYは、真っ直ぐ客船の元まで向かう。ソナーには既にガリトカゲの反応が出ている。
ガリトカゲの反応を示す光点の動きから察するに、既に敵はこちらに気付いてるものと思われた。
「ほいじゃささっと終わらせちゃおう」
「…………」
銀河がスロットルレバーを倒して多量の推進液を排出する。DAYのエネルギー源は周囲の海水である。海水を機体内で循環させてバラスト水ないしは推進力として用いる。
排出した推進液(推進力として用いる分の海水をそう呼ぶ)で加速しながら失った分の海水を補充していく。
「ガリトカゲきてるきてる〜、モニターをオンにするぞ」
トッシーが言い終わる前にモニターの表示がワイヤーフレームのCGから直接周囲の景色を映した物になる。
普通のダイバートルーパーや潜水艦ならば魚雷等を撃ってくるので、その際はCGの方が回避しやすいが、ガリトカゲはDAYと同じく接近戦しかしてこないのでこのように有視界戦闘に切り替えた方がいい。
最も周りは真っ暗なのでガリトカゲの位置を確認するためのソナーからは目を離せない。
「…………」
「うん、この海域には他のガリトカゲの反応は無いな。まあ船の中からは少しでてるけど」
「……」
「わかってるぞー、オイラ達は目の前の敵に集中しないと」
DAYのアームブレードを展開させてガリトカゲの迎え撃つ構えをとる。現在海流は安定してるので流される心配は無い、ゆえに泳ぎながらガリトカゲと軸を合わせて少しずつ接近する。
ある距離に達した時、ガリトカゲが突然爆発的な加速をだして矢のように水中を突き進んだ。
「きた! 3……2……1」
ガリトカゲの突進を紙一重で避ける。が、DAYの動きに合わせてガリトカゲは尻尾を鈎状にくねらせて絡めとった。おかげで尻尾に投げ飛ばされるような形で後方の岩場へ叩きつけられた。
「思ったよりあいつ強いぞ」
「……」
「うむ! もう油断しないからな!」
今回DAYはシールドを用意していた。腕全体を隠すような大きな盾を両手に装備しているのだ。おかげでアームブレードは盾に隠れるようになってるので手の内を隠すという意味でも意味はある。
この盾は内側に排出口を仕込んでおり、いざと言う時はスラスター代わりになるゆえかなり分厚い。浮力を利用しなければまともに持ち運べないだろう。
「盾の排出操作はオイラがやるぞ」
「……」
ギンガは了解した。
再びガリトカゲが猛スピードで接近してくる。さっきと同じ手は食わないためにDAYの尻尾の先に着いてるテイルブレードを岩盤に突き立てて機体を固定させた。
今回は避けずに正面からぶつかるつもりだ。
「よっしゃこーい!」
――――――――――――――――――――
DAYとガリトカゲが戦っている一方、マカロン達は無事に客船へ張り付く事に成功していた。
黄昏の船機を横に張り付けるや直ぐ、突入班が乗り移って客船の船底を移動する。真ん中からやや左側に人一人入れるくらいの小さな水密扉があり、そこから内部へ侵入する。
「乗客はちょうどこの真下に固まっているみたいですね」
「四階分下か」
突入したリナリアとカイデンは改めてルート確認を行う、空間に表示するタイプのウォッチ端末で見取り図をだして移動する。
逆さまになってるゆえ、蛍光天井が足元にきているのが少し違和感が強い。
「待ってください」
先頭を歩いていたリナリアが曲がり角の手前で突然止まる。口元に指を当てて静かにするようジェスチャーを送ってから、曲がり角の先を確認し、それからカイデンでも見れるようウォッチ端末のカメラ機能を曲がり角からだして無音撮影、写したものをその場で空間表示してカイデンに見せる。
そこにはガリトカゲの子供が映っていた。子供とはいえ一メートル半もあるので侮れない。
予想していた事なので驚きはしないが、目的地はガリトカゲの先にあるので早急に始末する必要がある。
リナリアはハンドガンタイプのメーザーガンを取り出して構える。どうやら先に突撃して制圧するようだ。
了承したカイデンは頷いて同じくメーザーガンを取り出した。
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