第7話 運び屋のレスキュー ③

「作戦会議しましょうか」

 

 マカロンの一言で場の空気がピリッと引き締まった。

 

「まずは状況確認ね、ジョルジュ、今わかってる事を教えて頂戴」

『かしこまりました。

 対象の客船は現在もまだ海面に浮かんでおりますが、流石に船体の強度がもたなくなってきたようで脆くなったところから崩壊が始まっています。

 短くみてあと三時間で沈むでしょう』

 

 あまりのんびりとしていられないようだ。

 現着まで約三十分なので、救出に当てられる時間は僅か二時間半しかない事になる。

 

『次に周辺情報です。変わらずガリトカゲが周りを漂っていますが、一体だけなのでデイでも充分対応できると思われます。

 ですがガリトカゲの性質を考えると船内に小型のガリトカゲが潜伏している可能性が高いです』

「二世紀も昔の映画でね、大きな怪物が子供の餌のために人間を一箇所に集めた物があったわねぇ」

「ぞっとする話です」

 

 全くの偶然だが、大昔のパニック映画でよくあった展開がアマリウムでは平然と行われている。

 昔の映画監督がここにいたら嬉々としてカメラを回していたのだろうかとリナリアはうっすら思った。

 

「脱線しちゃったわ、ジョルジュ、私達以外の救助はあるかしら?」

『つい先程医療船から医師達を乗せた飛行船が出発しました。飛行船の速度を計算すると、到着は早くて三時間後です』

「船が沈没するのと同時ってわけですね」

「実際我々医者としても安全確保してから治療に当たりたいところさ」

 

 つまり先にマカロン達で要救助者を保護した後、飛行船でやってきた医者に引き渡すのが任務となる。

 

『黄昏の船機以外の船舶は確認出来ていません。ここは何処の国の領海でもありませんので、警備軍はどこからも出撃しておりません』


 領海内なら警備軍を出動させるが、領海外なら我関せずらしい。

 

「大体わかったところで、それでは侵入経路の確認をしましょ」

「中に侵入するのは僕とリナリアさんが」

『要救助者は全員一階の倉庫に集まっています。リナリア嬢とカイデンさんは剥き出しの船底側から侵入し、中の小型ガリトカゲを殲滅しながら安全を確保してもらいます』

 

 迂闊に船底へ穴を空けると沈没を早めてしまう恐れがあるが、今回は綺麗にひっくり返った状態なので、こんな時を想定して作られている船底通路を利用して中へと入る。

 脱出する時も同じ経路を使うだろう。

 

「黄昏の船機は隣に張り付いておくといいのかしら?」

『いえ、しばらく離れた位置で待機して、脱出する時だけ横に張り付いてください』

「大体の流れはわかったわ、みんなは質問あるかしら?」

 

 リナリアやカイデンにはあらず、ギンガとトッシーも無いらしい。名目上作戦指揮をとるマージラだけが質問があると申し出た。

 

「病院はどこで開けばいいかな?」

「食堂がいいと思うわ」

 

 即決した。

 そして作戦開始時刻となり、大型ガリトカゲを抑えるためにまずデイが発進した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る