医療船とレスキュー

第5話 運び屋のレスキュー ①

 医療船ドクターシップという巨大船団がある。

 その名の通り医療関係に比重を置いた船団であり、また医療船はあらゆる国や組織に所属する事は無い。各国は医療船に資金援助をし、また安全な航路を用意しなければならない。

 何処にも所属しないが、あらゆる国や資産家から資金援助を得て活動している。地球ではこういうのを国境なき医師団というらしい、多分。

 

 もしこの医療船に手を出すような事があれば、他の国や組織が黙っておらずたちまち破滅するだろう。

 

 

 ――――

 

 

 リナリアが黄昏の船機に加入して間もない頃の事、いざマカロン・ファミリーが保有しているドックに帰ろうと船を発進させ、海上都市の領海を出た時だ。

 

『キャプテン、南東の方角より救難信号をキャッチしました』

「至急詳細な情報をお願い」

 

 時刻は既に夜、人命救助するにしても非常に危険な時間帯である。また救助対象の状態によっては二次災害になる可能性もある。救難信号に応えるかどうかは慎重に考えなければならない。

 

『場所はここから南東へ十キロの位置、国営の客船が海獣の攻撃によって転覆したそうです』

「海獣……種類は?」

『ガリトカゲです。全長は二十メートルあると報告にあります』

「あの辺に海獣がでるなんてねぇ」

『ここ最近、季節の変わり目で気温が上昇しました。そのため海流に変化がおきてガリトカゲが流れてきたと思われます……またガリトカゲはまだ付近にいる模様です』

 

 船は転覆、周りには海獣、しかもガリトカゲは肉食で人も食べる。客船の人間は迂闊に外へ出られず船に閉じこもったままだろう。

 時間との勝負になりそうだ。

 

『キャプテン、たった今医療船ドクターシップから要請がでました。付近の船舶は至急救助に向かうようにと』

「医療船からじゃ断れないわね。ジョルジュ、今から言う事を医療船に伝えて頂戴」

『了解しました』

 

「黄昏の船機は運び屋憲章に則って救助活動を行います。また当船にはレスキューの資格を持つ者がおりますが、医者が乗っておりません。

 以上を伝えて頂戴、あぁそれと可能ならドクター・クランベリーを派遣するようにとも」

『送信しました』

「聞こえてたわね? ギンガ、トッシー、リナリア」

 

 マカロンが通信機に向けて問う。三人はそれぞれ船室で休息をとっており、マカロン達のやり取りは途中からジョルジュが聞こえるように船内放送に切り替えていたので把握している。

 

『……』

『オイラは平気だぞ、ギンガ兄ちゃんの言う通りデイで待機してるぞ』

『え、今ギンガさんそんな事言ってたんですか? とにかく私も直ぐに艦橋へ向かいます』 

 

 説明の手間が省けて何よりだ。

 

「ジョルジュ、十四ノット(時速約二十五キロ)で向かって頂戴」

『了解しました、到着まで約三十分です』


 ジェットノズルから発せられる海水が勢いを増す、その勢いは付近の岩場にヒビを入れる程だった。

 


 

 

 

 

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