第4話 エピローグ


 

 エドモンドの船の甲板にて、半日ぶりにマカロンとエドモンドが対面を果たした。

 

「お久しぶりですエドモンドさん、あら? 確か街で戦争の準備をしていらっしゃると思っていたのですけど」

「おとぼけを、全て知ってる癖に」

「おほほ、まさか。私達はたまたまこの海域から戦闘音が聞こえたから急行しただけですよ」


 因みに依頼したルートからここまでは大きく外れているため戦闘音なぞ聞こえる筈もない。つまり最初から全て知られた上でここに来ていた。

 

「何がお望みですか?」

 

 この手の輩は敵にしない方がいいとエドモンドは察していた。相手の要求をさっさとのんで以後関わり合いにならない方が賢明だ。

 

「もうやだわ、それじゃ私が飢えてるみたい……でもそうね、くれるなら依頼料を上乗せしてもらおうかしら」

「まあそうなるでしょうね、おいくらですか?」

「五倍」

「五倍!? それはいくら何でもふっかけすぎでは!」

「あら? 生命を助けられたのにそれは酷いわ、こちらも生命を掛けたギリギリの戦いをしたのに」

 

 実際は隠密行動による一方的なものだった。

 

「ふざけるな! そっちがその気ならこっちだって」

「どうする気ですか?」


 マカロンの眼光がエドモンドを見詰める、柔らかく不思議な魅力のある彼女の瞳だが、何故か不気味なものを感じざるをえない凄みがあった。

 おかげでエドモンドは冷静になり、自分の状況を改めて考える事ができるようになってきた。

 こちらの戦力とマカロンの戦力を考えればどうみてもこちらが負ける。

 

「ぐっ……わかった。五倍払おう」

「まあ! 三倍くらいまで値切られると思ってたらそのままくれるなんて、素敵よエドモンドさん」

 

 白々しいという思いを腹の底に潜ませるエドモンド。

 その後、本来の目的地までマカロンファミリーが護衛として加わる事になった。道中再度襲われるも、今度もまた撃退して事なきを得る。

 

 

 ――――――――

 


 港についた時に感じる安心感というのは他に変え難い歓びがあるとマカロンは思っている。家に帰りつくのとはまた別の安心感なのだ。

 例に漏れず黄昏の船機は街の駐船場から一番離れたドックに停めてある。街の港ではエドモンド達が忙しく動き回っている事だろう。

 

「さて、リナリアちゃんはこれからどうするのかしら」

 

 ドックに収められた船を見上げながらリナリアはポツリと呟く。

 

「私は、これから就職活動です。侍従の仕事はクビになりましたので」

「そうなの、それは大変ね」

「いえ、まあ生きていられるとは思ってなかったので」

 

 元の作戦通りに行動してたら依頼対象のカレナも死んでいたかもしれないから、確かに生きてるだけ儲けものだろう。

 

「ねえ、貴方さえよければ私の所で働かないかしら?」

「マカロンファミリーですか」

「ええ、実は家事ができる人が全然いなくて困ってたのよ」

「そうですね……そうしましょうか」

「良かったわ」

 

 後はエドモンドから報酬を受け取るだけだ。

 こうしてアマリウムの日常は過ぎていく。

 

 

 

 ――――――――

 

 

 海洋世界アマリウムはほとんどを海で埋め尽くされた世界である。この世界が発見されたのは西暦二〇五〇年、太陽系第四惑星の火星である。

 火星探査隊が直接火星のボレアリス平野にあるクレーターの氷を調べたところ、内部に謎の人工物を発見した。

 直ぐに調査隊が編成され、五年に渡る調査の末、これが宇宙人の残した遺跡だと断定、直後に遺跡が稼動し始め淡く光ったかと思うと調査隊を飲み込んだ。

 

 光が収まり、調査隊が見たもの……それがアマリウムである。

 それからアマリウムの調査と移住が行われ早二百年、未だにアマリウムと火星の遺跡の謎は明かされていない。

 

 

 

 

 

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