第14話 圭史の多忙な一日(後編)


夜の闇に紛れ圭史達は鬼丸横丁を飛び出し、鬼の気配を辿りながら屋根の上から上へ飛び移り走っていた。


「今日も慌ただしくやってるぜ鬼ども」


晴人はそう言うと、鬼がいるであろう騒がしくなっているところにピンポイントで槍を投げ飛ばし、落雷を落とした。


「晴人、一般人もいるんだ、慎重にならないと」


圭史がそう言うと、晴人は舌打ちし、槍の落ちた横に着地すると、一般人を睨みつけならがら言った。


「毎日助けに入ってる俺らをゴミのように言うやつらなんかになんで気を使わなきゃならねーんだ?あいつら迷惑がる事はあっても感謝なんかしねーぜ…?」


「そう言うな晴人、我々は鬼を狩るのみ…余計な邪念は必要ない」


銀治郎がそう言うと、晴人は肩を落としながら槍を掴み、他の皆と同じように臨戦態勢に入った。


「大貴…下がっていなさい」


大貴はそう言う澪に従って少し離れた所に走って行くと、そこでいつものように様子を伺った。


「さて…狩の時間だ」


圭史がそう言い刀を担ぐと、先ほどの晴人の一撃で飛び散った鬼が、無数のコウモリのような姿になり、また集合体となって巨大な角のあるコウモリとなって目の前に立ちはだかった。

よく見ると数匹のコウモリは一般人達の血を吸っていて、それを切りつけてやめさせながは銀治郎が言った。


「吸血鬼のようだな、人型ではないが…。」


「そうですね…見たところ一般人の血を吸ってその分大きくなっているようです」


澪がそう言うと、銀治郎は槍を地面に突き刺し飛び上がって鬼と圭史達の周りにクナイを投げると、その区間を雷で覆い、鬼が逃げられないと同時に一般人の血を吸えないようにした。


「流石です!師匠!」


「後はどう倒すかだな、吸血鬼と言えばニンニクと十字架が効きそうな気はするが…。」


晴人と圭史がそう言うと、鬼は高い音の超音波を出しながら分裂し、圭史達の血を吸おうと飛び掛かって来た。

頭上に飛び交う鬼を振り払いながら、圭史達は鬼の弱点は何か考え、その間、晴人のイライラボルテージが上がっていき、弾けた。


「ダーもう!煩わしい鬼だ!もういい、俺が消し炭にしてやる!」


一匹ずつ言葉通り消し炭にしだした晴人を見て、圭史と澪が言った。


「そんなまどろっこしいやり方だと夜が明けてしまう…。」


「澪の言う通りだ。晴人、ここは協力してこの無数の俺をまた一匹にまとめる方法を考えるんだ」


二人にそう言われ、晴人は嫌そうな顔をし、また槍で鬼を突きだした。


「俺は協力とかそう言うのは苦手だ!まどろっこしくても確実に仕留められればいいじゃねーか!」


「晴人!」


晴人は二人の静止も聞かずに飛び込んで行くと、無数のコウモリのような鬼達が一点に集まりだし、徐々に一体の鬼に変貌し始めた。

それを見た圭史と澪は、外で大貴と待機している銀治郎がこくりと頷くと刀に自分達の力を込め始めた。


「晴人が囮になってくれている今がチャンスだ。全力で行くぞ澪!」


「誰が囮だ!ふざけんなよ圭史!」


そう言う晴人は群がる鬼の中に取り込まれてしまいながらも、チクチクと一撃をふるい続けた。


「ダー!鬱陶しい!肉団子が!俺にくっつくんじゃねぇ!」


その間も圭史と澪は精神を統一しながら、刀に力を込め続ける。

そうすればする程、大きな鬼の力をふるえるからだ。

そしてある一点に到達すると、圭史と澪は光る目を見開き、コウモリのような鬼に左右から一撃をくらわせようとした。


「おぃ!?俺も一緒にかよ!?」


晴人がそう叫ぶが時は既に遅かった。

圭史と澪が氷と炎を同時にくらわせると、コウモリのような鬼は右は粉々になり、反対側は消し炭となって、根こそぎ消え失せた。

その中心部だった所には消し炭と水まみれになった晴人が、二人を見ながら言葉を失っていた。


「悪かったな晴人、大丈夫か?」


「…大丈夫なわけねーだろ!お前らじゃなかったら雷撃をくらわせるところだったぞ!そこに座れ!」


その後暫く、晴人の説教が続いた。


✴︎✴︎✴︎


ビルの上、そこで木のような肌を持った鬼が桜鬼と共に圭史達を見下ろしていた。


「樹鬼様、あの者がどうかされましたか?」


「あぁ…見ろ桜鬼、面白い少年だとは思わないか?お前を一度追い詰めた力をもっている…私の配下にするには十分だと思うが?」


「お言葉ですがそれはあの者が鬼になった時の話ですよね?ならなかったらどうするのです?」


桜鬼がそう尋ねると、樹鬼は少し首を傾げて考え、言った。


「あの少年は自身が望まずともいずれ何かとてつもない者になる。何百年も生きて汚染者を見てきた私にはわかる。それは私達の眷属となるかそれとも敵になるかはわからない。だが楽しみだ」


「そう…ですか」


桜鬼がそう言うと、樹鬼は桜鬼を大きな手で掴み、木のコウモリのような翼で飛んだ。

そして圭史達を見下ろしながら夜の闇に消えていった。


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