第4話 冒険者ギルドにて


 パンケーキ屋の店主トトとフレンド登録を済ましたオティリーは、お持ち帰り用のフルーツパンケーキ20個を追加注文していたが、先ほど馬鹿食いした50個で打ち止め。仕方がないので各種パンケーキを適当に購入していた。

 しかしトトは、50個のパンケーキ代しか受け取らず、20個はいい食べっぷりの対価として送っていた。

 いちおうオティリーも一度は断っていたのだが、どうせ余るなら食べて貰えると嬉しいと言われて受け取る事にしたようだ。


 パンケーキ屋を出ると、メイは帰るかと思っていたが、まだオティリーについて来ていた。


「あそこ、冒険者ギルドみたいですよ。ちょっと覗いて見ません?」

「覗いてどうするのだ?」

「仕事を探すんですよ。さっき大金を払っていたから必要ですよね?」

「PKから貰った金がまだまだある。少なくなったら、適当にモンスターを狩って売るから問題ない」

「依頼を受けてからモンスターを狩りに行けば、素材を売るだけよりも稼げるのですが……」

「ほう。そんな金策の仕方があったのか。教えてくれて感謝する」

「いえいえ……とんでもないです」


 素直に感謝するオティリーだが、誰でも知っている事なので、謙遜するメイであった。



 そうして冒険者ギルドの扉を潜った二人は、数十人のプレイヤーに一斉に睨まれた。

 その目に、メイはおろおろするが、オティリーは気にせず冒険者ギルドの説明を要求し、腕を組んでくるメイに言われるままに、依頼ボードの前に立つ。


「依頼内容と金額が書かれているのか。しかし、どれも安いのだな」

「第一の町ですからね。もっと難易度の高い町に行けば、金額が跳ね上がるはずです」

「なるほどな。それで、どうやって受けるのだ?」

「この紙をちぎって……あれ? ロックが掛かっています」


 デリング・オンラインからバルドル・オンラインに移住した者は、冒険者ギルドで登録をやり直さなくてはならない。

 その事を知らないメイは、登録カウンターに行けばなんとかなるかと思い、後ろを振り向く。

 するとメイたちは、ガラの悪い男たちに囲まれていた。


「ようよう。お前たちはデリングだろ? ここはバルドル専用だ。どうしても依頼を受けたいと言うのなら、紹介料を払えば、俺様が口を聞いてやるぞ」


 如何にも人を騙しそうな男から情報を得たと思ったメイは質問する。


「ご親切にありがとうございます。いくら払えばいいのですか?」

「全財産だ」

「えっ……」

「それが嫌なら半額でもいいぞ。死に戻りになっちゃうけどな~」

「「「「「ぎゃはははは」」」」」


 どうやらオティリーとメイを囲んだ男たちは、PKだったようだ。その男たちが下品に笑うと、メイはオティリーの後ろに隠れ、オティリーは剣の柄に手を掛ける。

 しかしその時……


「あんたたち何やってんだい! こんなかわいい子を狙うんじゃないよ。散れ!」


 けっしてガラがいいとは言えない露出の多い女、セグメトが助けに入った。すると男たちは、「セグ姉に言われたんじゃしかたねぇな」とか言いながら離れて行った。


「うちの者が悪かったね。前にデリングの奴が暴れまくって被害を受けたから、うちのやつらも怒っちゃってね。デリングのプレイヤーを見つけたら誰彼かまわずからんで行くんだよ」

「い、いえ……助けてくれてありがとうございます!」

「いいのいいの。困った時はお互い様。それと、あいつらがあんたらの事を、デリング出身だと気付いた理由……知りたくない?」

「そういえば……みんなすぐに気付いていましたね。何か違いがあるのですか?」

「あるんだな~。でも、ここじゃ人が多いから、あっちでいいかい? あいつらに聞かれると面倒だからね」

「は、はい!」


 親切に教えてくれるセグメトに続き、メイは向かうので、オティリーもなんとなくついて行く。そうして隣接された訓練場に入ったらセグメトは奥に進み、一番奥の高い壁の前で止まった。


「それじゃあここで……って、教えてあげないけどね~!」

「え? どういうことですか??」

「きゃはは。まだ気付かないのかい? 後ろを見てみなよ」


 メイとオティリーが振り返ると、さっきまでギルド内にいたプレイヤーがゾロゾロと訓練場に入って来ていた。


「な、なんで……」

「そりゃ、あんな所にいたら殺せないじゃない? ここでなら、いくらでも殺せるのさ」


 どうやらメイは、町中でのPK規制を忘れていたようだ。それを見越して、規制のかかっていない訓練場の戦闘フィールドに、セグメトは言葉巧みに二人を連れ込んだのだ。


「つまりは、貴様はあいつらの仲間と言うことか?」

「やっと気付いたみたいね。わざわざ理不尽姫の装備をオーダーメイドしてるんだ。金は有り余っているだろ? さあ、あんたたち……痛めつけてやんな!」


 オティリーの質問に答えたセグメトが指示を出した瞬間、オティリーは素早く剣を振るう。


「へっ? うそ……」

「「「「「セグ姉!?」」」」」


 あっと言う間にセグメトは首を落とされて死に戻り。とぼけた声を出しながら光の粒子となった。

 すると、PKから口々に非難の声が発っせられるが、オティリーは首を傾げるしかできない。


「卑怯? 汚い?? 剣の届く場所にいたあの女が悪い。そもそも、罠に嵌める事は、卑怯で汚い行いではないのか?」

「うるせぇ! 正論なんて聞いてねぇ! セグ姉の金を返せ~~~!!」


 頭に血がのぼったPKたちは、オティリーの反論を聞く耳持たず。一斉に襲いかかり、オティリー&メイVS100人のPKとの戦いが始まるのであった。

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