彼女

携帯のメッセージには、俺の高校の頃の親友だった。『今からお前の家行っていいか?』と一言だけ。もしかするとご飯を持ってきてくれるのかもと思い、承諾した。

その間にシャワーを浴びて適当に着替えて友人が来るのを待っていた。

数分してから友人が来た。いや、友人ではなく、友人の彼女が来ていた。

予想外だった俺は女に一言、「健二は?」

その言葉に彼女も一言。「貴方に会いに行けって言われて来たんだけど、本命は私じゃなくてこの子だから。」と

質問の答えになっていない上に、意味深なことを言い出した彼女の発言に混乱していると、彼女の後ろからひょっこりともう1人の女が顔を出した。

「私は今日この子を連れてきただけだから。それじゃ」

そう言い、彼女は早々に家を出ていった。

初めて会う人を家に残して出ていかれては自分はどうせればいいのか分からない。それにこの人一切喋らないからだんだん怖くなってきたしなにか話さないと、と焦りも出てくる。そして俺は焦りと緊張からこう言った。

「なんかお腹すいた。」と。

我ながらすごいことを言ったと思う。

彼女もさぞ驚いたことだろう。知らない人の家に連れてこられたと思えば、その家主からは腹減ったと言われたのだ。

ほら見ろ。彼女も目が丸くなってるじゃないか。

「はは。なんかごめん。変なこと言った。忘れて。」

ここまで冷たい言い方しなくても。と言って後悔していると、彼女が一言。

「お腹すいたんですか?」と。

彼女がそう尋ねると、お腹はグーーっと元気な音を出した。

すると彼女はキッチンお借りします。と言い、キッチンで何かを作り始めた。

彼女が作ってくれたのはパスタだった。2日ぶりの食事に俺はそのパスタに食らいついた。

シンプルなパスタだが、それがどのパスタよりもとても美味しかった。

そして彼女がパスタを食べる俺を見てにっこりと微笑んできて、その瞬間俺の心臓になにか衝撃が走った。言うまでもない。俺は家庭的な人が大好きなのだ。

端的に言うと俺は彼女に恋心を抱いた。そしてさらに俺は爆弾発言を一言。

「これからも晩飯作ってくれないか?」と。

犯罪臭の漂ってくる発言に彼女は少し動揺していたものの、その動揺が火を噴き、彼女の目には涙が溜まっていた。

「あ!ごめん!そういうつもりじゃなかったん...」

「いいですよ。」

俺の言葉を遮り、彼女はさっきとは真逆の表情を浮かべて、承諾してくれた。

後になって俺は気付く。 あの発言は、遠回しな告白だったと。

「あのさ、今のはその、あのさ、えーと、そのだな。こ、告、白と思ったりし、た?」

そう尋ねると彼女は「告白じゃないの?」と顔を紅くして聞き返す。

俺は即座に「いやいや、告白!告白しました!」と言い返した。

「名前も知らないくせに告白なんてする?普通?」そういうと彼女は正座で向き直り、一言。「私は須藤 茜です。よろしくね?」と。

俺も後藤 文哉と名前を交換して、カップルが誕生した。

俺は守りたい女だ。と初めて思った。そして俺は彼女に抱きついた。

俺は絶対に彼女を手放さないと、心に誓ったのだった。

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純恋歌 テンボー @TENBO

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