FILE028:祥吾がいない!?
あれからアデリーンは祥吾の母親・優里香の厚意を受けてかつて祥吾の父親が使っていた部屋とベッドを貸してもらい、キャミソールをパジャマにしてぐっすりと眠っていた。
セクシーなあくびとともに起床してみれば、外はもう明るい。
「ユリカさん、おはようございます。ショーゴくんは登校して授業受けてる頃でしょうか?」
「そ、それが……」
起床してリビングに来てみれば、優里香が悲しみに暮れていた。
祥吾のカバンが置いていないのなら、彼が学校に行ったのではないのか?
なんとなく違和感を覚えていたアデリーンは、優里香のただごとならない様子を見て異変に気付く。
「……もしかして、いなくなったんですか?」
「はい。わたしが起きた頃にはもう」
アデリーンの眉が動く。
「今までも、似たようなことはありませんでしたか?」
「あの子、家から学校まで近いからってことで、ちょっとでも体力をつけるために毎朝登校の前にウォーキングに行ってるんですけど。こんなにも帰ってこないのははじめてです。あの子の身に何かあったらと思うと、わたし……」
こんな風に唐突にいなくなるなんて絶対に怪しい――。
まさか、ということもある。
その疑念が現実になってしまわないことを祈って、アデリーンはこう決心する。
「私、ショーゴくんを探しに行きます。一宿一飯の恩をお返ししたいのです」
「アデリーンさん……お願いします!」
笑顔で誓ってくれたアデリーンに託した優里香だったが、母親として何もしないわけには行かず――。
警察に捜索願を届けることも視野に入れて、彼女とともに祥吾を探し始めた。
「うちの息子を見かけませんでしたか? 名は祥吾といって、髪は黒くておとなしい子で……」
「いえ、お宅のお子さんはとくには……」
まずは1件目、優里香が自ら道行く人に聞いてみたものの、手掛かりは何も得られず。
「ショーゴ・アカソくんを知りませんか?」
「あいつとは知り合いだけど見かけてないな。ごめんね……」
続いて2件目はアデリーンが祥吾の知人に当たってみるも、彼も祥吾のことは見ていないという。
「すみません、どこかでうちの祥吾を見ませんでしたか?」
「奥さんごめんよ、祥くんは見てないな……」
更に続いて3件目は商店街にいる優里香の古くからの知り合い。
しかし、彼も知らないとのことで、アデリーンと優里香はショックを受ける。
「初芝先生、祥吾は来てませんか?」
「いえお母さん、まだこちらには……」
4件目は祥吾が通っている高校で彼のクラスの担任を務める、初芝という男性教師。
――やはりと言うべきか、来ていなかったようだ。
それからもいろいろと聞いて回ったが、何も手掛かりはつかめなかった。
「詰みですね……」
何も成し得ることは出来ず、アデリーンは顔を片手で覆い、優里香は再び悲嘆に暮れてうつむく。
「夫に続いて祥吾にまでいなくなられたら、わたしどうしたら……」
「あきらめてはダメです、ユリカさん。ショーゴくんは必ず帰ってきます。私も彼を見つけたら必ず連れ戻しますから」
距離を詰めてアデリーンが優里香を諭して、そう誓う。
口約束してしまった。だが、何もせず黙っているよりはそのほうがいいだろうと、そう思ってのことだった。
2人はとりあえず赤楚家へと戻り、いったん落ち着いてから今後祥吾の足取りをつかむために何をすべきか考えようとしたが、その時――アデリーンの超感覚がディスガイスト怪人の反応を捉える。
「……ユリカさん、おうちから決して離れないでください!」
「え、ええ……」
何のことやらさっぱりわからない優里香だが、どの道ここはアデリーンの言う通りにしたほうがよさそうだ。
そう判断した。
「ディスガイストという怪人がユリカさんたちを狙ってくるかもしれません。ですから、不要不急の外出はできるだけ控えてください」
「わかりました。わたし、ここであなたや祥吾が帰ってくるのを待っています」
「それでいい、そうしてください」、と、アデリーンが優里香へと微笑みかけた。
手段を選ばないヘリックスのことだ。
怪人を発生させるだけでなく、優里香の命も奪おうとしているかもしれない。
だったら迎撃するまでだ。
――そう思ったアデリーンは、専用バイクの【マシンブリザーディア】を駆って現場へ急行。
そこは港湾地帯の一角にあるビル前で、赤い羽根に装甲のついた体を持つコンドルガイストが、茶髪でガラの悪そうな作業員に襲いかかっている最中だった。
「キエエエエエ――――ッ! お前のようなヤツがこの街を腐敗させるのだ! 殺してやる!」
「そこまで!」
既に【氷晶】して青と白のメタリックなスーツをまとい、アブソリュートゼロの姿に変身していたアデリーンは、ブリザーディアに搭載された機銃を用い、コンドルガイストだけを正確に撃ち抜く。
更にブリザラスターの射撃も織り交ぜて敵からダウンを奪った。
「何やってるの、やめなさい!」
ブリザーディアから降りて右ハンドルを引き抜き、ビームソード・ブリザードエッジへと変形させると、アデリーンは作業員をかばってその場から逃がす。
あまりの攻勢に腰を抜かしたコンドルは起き上がれない。
「キエーッ! だだだ、誰だお前は!?」
「ヒーローよ。巷で話題のね」
「こ、殺される……。それだけは嫌だ。おれはおれの目的を達成するのだぁーっ!!」
「……逃がさん!」
アデリーンのその名乗りに怯えたコンドルは這う這うの体で埠頭まで逃げる。
彼女から容赦のない追撃を受けて無理矢理立ち上がらされたところで、コンドルは羽根を飛ばしたり、爆発する金属音波を発したりなどしてヤケクソ気味に攻撃し出した。
「ハァー!!」
だがアデリーンは引き下がらない。
手裏剣のごとく飛ばされた羽根をすべてブリザラスターからの射撃で凍らせ、隙を見てジャンプしながらの斬撃を繰り出す!
コンドルは大きくたじろいだ。
「ブラボー、ブラボー。さすがはマイ・フェイバリット・ヒーロー……」
それを物陰から見ていたのは、黒いフードを被り、黒いサングラスや黒いマスクで顔を隠した女。
そう、【黄金のスズメバチ】と謳われている殺し屋・蜂須賀だ。
「……コンドルくんよ、ボウヤにゃ悪いが、ワタシはお前みたいな手合いが大嫌いなのさ。容赦も躊躇もしないよ」
そう言って、蜂須賀が気だるく、シニカルに笑って取り出したのは愛用の銃型デバイスと――黒と金を基調とする、どこか格調高いデザインの十字剣。
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