13
明け方近く、関孝太郎に起こされた。寝袋に入ったまま身体を起こすと、彼はすでに出発する準備ができているようだった。
「今日中に帰りたいんだったらそろそろ出発しねえとな。おっと、だからといって急ぐ必要はない」
寝袋を小さく折り畳んで荷物の中に突っ込む。
廃屋の外に出ると、ひんやりとした空気が肌に吸いついてきた。
「傷は大丈夫か?」
――そんなに痛みは感じません。
「もしあれだったら、帰ったらあのカプセルの中に入っとけ。どうせ治療費はタダなんだから」
歩き始めた彼の後をついていく。昨日の最後のほうは身体が重かったが、一日休んだら、また昨日の出発したての頃のように軽くなっていた。
まだ薄暗い中だったが、周囲の建物の輪郭はよく見えた。私たち二人以外の生命体の気配は一切感じ取れなかった。まだ起きだしていないのか、すでに寝静まってしまったのかはわからなかった。
まだ薄暗い町を歩く。足音が建物の壁に反響する。
歩き始めて一時間ほどで目的の場所に辿り着いた。だが、最初はそこへ辿り着いたことに気がつかなかった。
「おっと、ここまでだ。ここが街と街の外との境界線だ」
そう言われて立ち止まる。
――ここが?
目を凝らす。何もなかった。今まで左右の視界を覆っていた建物の影が一切なくなっていた。
「そろそろ日の出の時間だ」
背後から現れた日の光が街の外を照らし出す。
目の前に広がっていたのは砂漠だった。灰色と黄土色の混じる、殺風景な世界だった。
「街の外は全部こうなっている。一度この境界線に沿って時間をかけてぐるっと一周回ってみたが、全部砂漠だった。砂漠に囲まれてる。そして砂漠の向こう側には何も見えない。この砂漠の先に何があるのか、俺は知らない。この先へ向かったあいつらが何を見たのか、俺は知らない」
――この先へ向かったあいつら、とは。
「なんだ、本当にあいつは何も話さないんだな」
――私が雪さんから聞くのは、雪さんが目覚める前、眠った後に何が起きていたのか、という知識だけです。
「……俺と雪以外の五人の話さ。そうだな、あいつらが出ていってからまだ一年しか経ってないんだな」
そう言ってから、彼は他の凍刑囚の話を話してくれた。
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