第11話 恋愛レッスン
そして、夕方、俺は、だれもいない放課後の教室に、ミヤスコとアオイを呼び出した。
俺はアオイにミヤスコを紹介した。彼女の前世も説明した。
案のじょう、アオイは疑いの目を向けた。
「本当に、ダーリンのいとこなの?」
「前世が47歳の未亡人なんだが、間違いなく俺のいとこだ。前もって言っとくが、浮気じゃないぞ。アオイ」と俺は答えた。
「ふーん」と品定めをするように、ミヤスコと俺を見つめる。
「六条ミヤスコよ。よろしくね。アオイちゃん。――ところで」とミヤスコはコホンとせき払いをした。「私はあなたたちの恋愛コンサルタントをやろうと思っているんだけど、どうかしら?ヒカル君は賛成してくれたのよ」
アオイは一歩引く。
「恋愛コンサルタント?」と不思議そうな顔で、彼女は聞いた。
「一言で言えば、人の恋愛のアドバイスをするアドバイザーってわけ。ヒカル君から聞いたけど、あなたたちの仲はそう進展しているように見えないわ。そこで、私の経験からアドバイスをしたいの」
アオイは体をもじもじと揺らし始めた。「……あ、あたし、ダーリンとキスしたもん」
「キスしたくらいで何?キスしたカップルの仲が冷えていくのを、私はいっぱい見てきたのよ。アオイちゃん、あなたたちは、このままだと、ただのお友達のままで終わるわね」とミヤスコは言う。
その言葉には、47歳の未亡人の
だが、俺も感心しているばかりではいられない。
ミヤスコの願いとは、俺とアオイに恋愛のアドバイスをさせてほしいというものだった。
そのためには、迷っているアオイを説得する必要がある。
「お前のためにもなるような気がするんだ。アドバイスをもらおうよ。アオイ」と俺もすかさず言った。
最後には、アオイもアドバイスを聞く気になったようだ。「
まずは、第一
このまま、ミヤスコが俺のことを好きだとか、変なことを言わなければ、俺は無事なのだ。
だが、不安要素は残る。不安要素と言うのは、どんなアドバイスをミヤスコがしてくるかだ。
教室の机にミヤスコが座る。
「さて、さっそく、始めましょうか。ちょっと、二人とも、そこへ並んでみて」
ミヤスコに言われるがまま、俺とアオイは並んで立った。
「いいわね。では、カップルのように、腕を組んでみて」とミヤスコが命令すると、俺たちは従った。お互いの腕を組んでみる。
それを見ていたミヤスコが舌打ちをした。「違う。――それだと、ダンスのペアの組み方。あなたたち、オクラホマミキサーでも踊る気?ミヤスコがお手本を見せてあげる」
そう言って、彼女は俺の右わきに両手を通して、抱きつくように頭を俺の肩に寄せてきた。
俺はセーラー服の
思い込みをしていたのだ。俺は、腕を組んでも、男女の体は密着しないものだと決めつけていた。しかし、本当はぴったりとくっつくのだ。
「わかりました!師匠。こうですね」と見よう見まねで、アオイが俺の左わきに両手を通した。
そして、俺のひじと手首をがっちりとつかんだ。
「――おバカな弟子だこと。それは格闘家がひじを折るときのつかみ方よ。アオイちゃん、こうよこう」
そう言ったミヤスコの腕に力が入る。俺の体がますます、彼女の体へ引き寄せられる。
アオイもアオイで、
たまらず、俺は叫んだ。
「おいおい、二人とも、まて!レッスンはこれくらいでいいだろ。俺の体がもたないぞ!」
救世主が現れたのは、そんな時だった。
いつのまにか、教室のドアに、髪が黒いおさげの女が立っていた。
「きゃあ!あなたたち、何をやってるんですか!」と、その女が
「あ、委員長だ。委員長、助けて!」と俺は天の助けとばかりに、彼女に呼びかけた。
おさげの女は
まじめな委員長ならば、きっと、この愛のレッスンを止めてくれるはずだ。
そう期待した俺がバカだった。
アオイが次のようなことを言った。
「邪魔をしないでよ。いくら、あんたが
ダーリンのことをひそかに好きだけど、クラスの
と思っても、絶対に、ダーリンを渡したりはしないもん!」
委員長のほっぺが真っ赤に染まった。
「ちがう、初恋じゃないんです!ヒカルさんは二番目の恋なんです!」
委員長の心からの叫びを聞いた俺は、天をあおいだ。
俺……天罰を受けるようなことをしましたか?神様?
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