不思議 聖ヨゼフの階段

聖ヨゼフの階段 とは、アメリカのニュー・メキシコ、サンタフェにある修道院(ロレット・チャペル)にある螺旋階段である。


1852年、ロレットのシスター達はケンタッキーを出発し、サンタフェで修道院を造るよう命令を受けた。

シスター達がサンタフェに到着すると、メキシコ人の大工の手によってアカデミーが建設される。

それから約二十年後の1873年、アカデミーにチャペルが増設されることになった。

三万ドルの費用と五年の歳月を費やすことで、それは完成される。

空中に聖歌隊用のギャラリーを持つチャペルだったが、完成間近となってから一つの問題が発覚した。

なんと、このチャペルには










ギャラリーへ通じる道がなかった。











いかなる階段や通路も存在しなかったのだ。

後付けで階段を設置することになり、各地への打診が始まった。

多くの大工を招き入れるも、彼等は代わる代わるに「はしごを用いるか、バルコニーを作り直すしかない」と言うばかりだった。


シスター達は多いに失望するが、階段を作れる者を遣わせていただけるよう、九日間の祈りを始めた。

しかし、祈りのうち八日間は何事もなく過ぎてしまう。


最後の祈りの日、アカデミーの前に一人の灰色の髪の男が現れた。

男は一頭の騾馬と一つの道具箱とともに現れ、アカデミーのために階段を建設することは可能かと申し出た。

マザーはこれに喜んで同意し、同時に十分な報酬を取らせることも約束した。

男は持ち寄った一本の金鎚と一本の鋸、一本のT字定規とどこからか調達した木材を用いて、作業に取り掛かった。

数日後、無事に階段が完成すると、マザーは報酬を渡すために男の姿を探したが、それはどこにも見当たらなかった。

それどころか、地方のいかなる材木工場を訪ねても、その男が木材を買った記録は残っていなかった。





今話した内容が聖ヨゼフの階段ができるまでの話である。

ではなぜこの階段が不思議なのかお話ししよう。







聖ヨゼフの階段と一般的な螺旋階段の違いをここに書いていく。

画像が晴れないのは勘弁してほしい。ぜひ自身で調べてくれ。


本来、螺旋階段を維持するためには階段の外周もしくは内部に支えが必要である。

(生物の骨格に例えるなら、左は外骨格、右は内骨格)

しかし、この聖ヨゼフの階段には支えが存在しない。

つまり階段だけが「宙吊り」になっている状態なのだ。

それに当初は階段のみが存在していて、手すりは二年後に補強として後付けされたもの。


この状態では構造を保てないはずなのだが、なぜだかこの階段は壊れることがない。

建設から一世紀半もの間を実用に耐え抜いているのだが、なぜ壊れないのかはわからない。


現代でも多くの建築家がその解明に挑んでいる。

どうやらあえて鉄製の釘などを用いず、木製のくさびを使って建設することで階段自体が「バネ」のような柔軟さを持っているようだ。


またその構造もさることながら、化粧板の精密な曲線は現代でも再現が困難なものであるゆえ、1870年代であればなおさらその技術力には謎が残る。

男の素性も上記の通り一切が不明で、作業は必ず現場に彼一人しかいない状況で行い、誰であれ他人が現場に来ると作業を中断したという。

さらに、階段に使われている木材はニュー・メキシコ近辺で採れるものではなく、男がどこからそれを調達してきたのかも謎の一つになっている。


そしてこの男は一日でこの階段を仕上げたという話も出ている。













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