Murder auction

ねむりねずみ@まひろ

【声劇台本】♂3:♀2

⚠️注意事項⚠️

■CAS生声劇、Skype劇、ボイスドラマ、イラスト作成、演劇、朗読など、金銭の絡まない物に対しては、無償でお使い頂けます。

イベントで販売したい、お客様を呼ぶ演劇に使いたい、など金銭の発生する物は、別途ご相談ください。


■キャラクターの性別は、絶対ではありませんが、世界観を壊すような無理な変更はやめてください


■ CASで声劇する場合、事前に教えて頂ければ聞きに行けるかもしれませんので、よかったらご連絡ください!

Twitter→ @nanakoenana



『キャラクター』


アレフ(アイン):村の自警団に所属する真面目な青年、幼い頃に村へ流れ着き、以来この村で暮らしている


シスター(フィーア):協会兼孤児院のシスター、皆に等しく優しいが、アレフには特別な感情を抱いている。そして美しい


ツーヴェ(ツヴァイ):アレフの兄貴分に当たる、お節介でお調子者の気のいい兄ちゃん


セシル ・受付 :アレフの妹 物心着いた時には、既に両親は居なく、アレフだけが頼れる家族


アハト:アルカディアが8番目 魔性のアハト 普段は奴隷商を営む。 この世の全ては、金でどうとでもなると思っている




コピペ用配役表


「マーダーオークション」

作ねむりねずみ@まひろ

https://kakuyomu.jp/works/1177354054918901759/episodes/1177354054918901789


アレフ(アイン):

シスター(フィーア):

ツーヴェ(ツヴァイ):

セシル・受付:

アハト:


以下台本

--------------



ツーヴェ「おい、アレフ!そっちに行ったぞ!!」


アレフ「おっしゃ、まかせろっ!こいつで最後だ!!」



【協会裏の畑で悪さをする猪を退治する2人】



ツーヴェ「ふぅ…お疲れさん!これで、ここいら一帯は、駆除出来たな!」


アレフ「ああ…疲れた。なあ、食肉にするなら、猪より他の奴を狩った方が、早いんじゃないか?」


ツーヴェ「まあな、だが何事にも順序がある。まず猪を倒さないと、他の小動物が居なくなっちまうし、猪より大きな奴を倒すと、今度は猪の縄張りが、広がっちまう」


アレフ「だからって、流石にこの数は…どう考えたっておかしくないか?」


ツーヴェ「うーん、確かに。最近、猪被害が広がってるんだよな、特にこの教会裏。他よりもずいぶんと被害が大きい。ま、その分駆除出来ちまえば、いい収入源にはなるだろうけど、教会は孤児院でもある事だし、子供達だけだと少し心配だな」


アレフ「だからこそ、俺たち自警団がいるんだろう。子共達に何かあってからじゃ遅い」


ツーヴェ「そうだな。最近子供が誘拐される事件が起きているらしいから、気を付けないと。アレフ、そういやセシルちゃんは大丈夫か?」


アレフ「あぁ、王都に出かけるって張り切っているよ」


ツーヴェ「王都か、片道で2日はかかるのに、良く許したな」


アレフ「もちろん、一人じゃ行かせないぞ?」


ツーべ「あー、そうだった。このウルトラ過保護が、そんな事するわけなかったな」


アレフ「当たり前だろ!可愛い妹が出かけるんだぞ?ダグ爺さん家の荷車に、一緒に乗せてもらう予定だ」


ツーヴェ「あぁ、ダグ爺さんとこ、確か傭兵を雇ってたか。そりゃ安心だ」


【教会からシスターとセシルが駆け寄ってくる】


セシル「お兄ちゃーん!!」


シスター「アレフさーん、ツーヴェさーん!」


ツーヴェ「お、この声は…おーいシスター!セシルちゃーん!」


セシル「うわっ!すっごい大きい猪!!これお兄ちゃん達が仕留めたの?!」


アレフ「ああ、これで暫くは、肉の心配も減るだろう」


セシル「やったぁ!お肉♪お肉♪」


シスター「ありがとうございます…お二人とも、怪我はありませんか?」


アレフ「あぁ、問題ない」


ツーヴェ「そうそう、あらかた片付いたと思うけど、また何かあったら、いつでも言ってよ」


シスター「本当にありがとうございました、これで孤児院の子供達も安心すると思います」


セシル「シスター良かったね!」


シスター「はい」


アレフ「…とはいえ、駆けつけるのが遅くなってすまない」


シスター「いいえ、そんな事ありません!…教会は何かと嫌われていますから、来て頂けただけでも有難いですよ」


ツーヴェ「…あー、頭の固いじいちゃん達ばかりだからねぇ」


アレフ「教会と村に確執があるのは聞いているが、そんなに酷いのか…」


セシル「え、そうなの?!」


ツーヴェ「2人は知らないのか?この教会は、悪魔と通じてるって言われてるんだぞ」


セシル「悪魔?ホントに?!」


シスター「いえ、そんな事はありませんが」


アレフ「なら、何故そんな噂が…」


シスター「…その理由はこの花畑です」


セシル「うわぁぁぁ!綺麗!!」


アレフ「凄いな、良い香りがする。珍しい花なのか?」


シスター「えぇ、この花は何故かこの教会の周りでしか咲かないんです」


アレフ「へぇ、他のところじゃ育たないのか」


シスター「はい、他の場所に埋めてみた事もあるのですが、翌日には全て枯れていました」


ツーヴェ「な?珍しいだろ?だから村の奴らは気味悪がってるんだよ、教会以外で咲かない花…つまり教会に悪い力が働いているんじゃないかって…」


アレフ「あぁ、それで悪魔と通じている…か」


ツーヴェ「そういうこと」


セシル「なにそれ!言いがかりもいいとこじゃん!」


シスター「実際の所、教会を通してきちんと手順を踏まないと、入手すら出来ない貴重な花ではあるんですけどね」


アレフ「そうか、シスターが心を込めて世話をしてきたからこそ、こんなに綺麗に花を咲かせているのに…わかって貰えないのは、少し残念だな」


シスター「…アレフさん」


ツーヴェ「もしもーしお二人さーん、イチャイチャしないでくれますー?」


アレフ「なっ!?」


セシル「シスターがお義姉さんか…ありだね!」


シスター「もう、セシルちゃん!」


ツーヴェ「わかる、確かにわかる!シスターは歳も若く、見た目の綺麗さは女神の如く!その上お淑やかで、孤児院の子供達を預かる、優しい心の持ち主でいて…尚且つ良い香りがする!!そう! まさにこの花の化身!独り身のアレフが、気になるのも仕方がない!」


アレフ「ツーヴェ!!」


シスター「も、もう!からかわないでください!」


セシル「シスター、顔真っ赤だよー?」


シスター「ううう」


ツーヴェ「ははは、…にしても、アレフって真面目な割に、世の中のことには疎いのな」


アレフ「仕方ないだろう?」


ツーヴェ「まぁなぁ、早くに両親を亡くして、妹のセシルちゃんと、この村に流れ着いて来た頃は、こーんなちいさい、お子ちゃまだったもんな」


セシル「…そうだね、お兄ちゃんも私も、今より全然小さかったもんね!」


アレフ「ツーヴェ、お前の年齢もたいして変わらないだろうが」


ツーヴェ「ばーか、褒めてるんだって。10歳かそこらのガキが、妹食わしていく為に大人に混じって狩りだぞ?なかなか獲物が取れずに、隠れて泣きべそかくようなガキだったのに」


アレフ「おい…褒められている気がしないんだが」


ツーヴェ「はは、ようやく 疑うことを覚えたか」


アレフ「ツーヴェ…お前」


シスター「…そうですよ、アレフさんは、18年前、この孤児院で過ごしていた時から、まったく!何も!変わっていませんよ」


セシル「シスター、それフォローになってないよ…」


シスター「へ?」


ツーヴェ「ははは、シスターに言われちゃざまぁないな!」


アレフ「シスター…」


シスター「え?あっ、違いますよ?何も変わっていないと言うのは、そのっ、優しい所とか、頼れる所とかって意味で…」


アレフ「…ありがとう、シスター。」


シスター「い、いえ」


セシル「ふふふ~いい感じだねぇ、お兄ちゃん!」


アレフ「…セ、セシル、お前は王都に買い物に行くんだろう?そろそろダグ爺さんとの約束の時間だぞ。」


セシル「あ、そうだった!じゃあ、シスター、お兄ちゃん、ツーヴェさん、私先に帰ってるね!」


シスター「あ、セシルちゃん…これ」


セシル「え?何これ…」


シスター「あの花を乾燥させて作った髪飾りなの…良かったら貰ってくれないかしら?」


セシル「いいの?!貴重な花なんじゃ…」


シスター「いいのよ、セシルちゃんに貰ってほしいの」


セシル「ありがとうシスター!じゃぁ、またね!」


ツーヴェ「気をつけて帰るんだぞー?あと、王都のお土産待ってるからな!」


セシル「わかった!楽しみにしてて!」


アレフ「あ、セシル、ダグ爺さんに宜しく伝えておいてくれ」


セシル「はーい!伝えとくーー!!」


【教会から去るセシル】



アレフ「…そしたら、俺たちは猪を解体して、不要な部分は森に戻してくる。」


シスター「はい、アレフさん、ツーヴェさん、今日は、本当にありがとうございました」


ツーヴェ「良いって!また何時でも言ってくれたら助けにくるさ!主にアレフが…な!」


アレフ「お前なぁ…」


シスター「ふふ、頼りにしてますね、2人とも」


【1週間後】


ツーヴェ「よーアレフー!いるかー?」


アレフ「ああ、朝っぱらから何の用だ」


ツーヴェ「釣れないねぇ、セシルちゃんが王都に出かけてから1週間、そろそろ帰ってくる予定だろ?」


アレフ「予定では、明日だ」


ツーヴェ「へいへい、それなら今日は1日暇ってわけだ!」


アレフ「暇かどうかはわからんぞ」


ツーヴェ「いーや、暇だ。って事で森に行くぞ!」


アレフ「いや、だから話を聞けって」


ツーヴェ「ほらほら、さっさと支度しろー!」


アレフ「はぁ…わかったよ、行けば良いんだろう?」


ツーヴェ「おう!セシルちゃんを喜ばせる為に、沢山狩ろうぜ!」


アレフ「…お前の憂さ晴らしじゃなくてか?」


ツーヴェ「お、鋭いねー」


アレフ「ツーヴェは、昔から何かあると、こっちの都合も構わず狩りに誘いに来るからな」


ツーヴェ「ははは!なんだお見通しかー!じゃあ、改めて…俺のストレス解消に付き合ってくれ!」


アレフ「へいへい、お供しますよ」


ツーヴェ「サンキュー!よーし、狩るぞー!」


【教会を離れ、村に帰る途中の森】


ツーヴェ「いやー、すーっかり夜になっちまったな!」


アレフ「全くだ…我を忘れて森の奥地にまで突っ走った馬鹿が居るからな」


ツーヴェ「しょうがないだろ?売られた喧嘩は買う!獲物が目の前に居たら必ず仕留める!が心情なんだから」


アレフ「だからって、街道を外れて突っ走るんじゃねーよ!!見ろこの全く手入れをされていない獣道!!ここは本来、人が通らない場所だぞ!! 」


ツーヴェ「だから悪かったって!あ、そういやアレフ、お前結婚する気はないのか?」


アレフ「こら、話を逸らすんじゃない!」


ツーヴェ「いいから、いいから!なぁ、ここだけの話し、シスター、お前に気があると思うぜ?」


アレフ「…だとしても、今は何も考えられないさ」


ツーヴェ「なんでだよ」


アレフ「今は、セシルの事しか頭にないからな…いつかあいつが結婚して、幸せになったのを見届けてからじゃないと…自分の事はとても」


ツーヴェ「はぁ、頭の固い奴め」


アレフ「すまない」


ツーヴェ「謝るなよ、それがお前の良い所さ。お前は、お前の行きたい道を進めばいい」


アレフ「あぁ、ツーヴェも、あまり奥さんに心配かけるなよ」


ツーヴェ「げ、もしかして何か聞いてる?」


アレフ「この間、セシルの誕生日にあげた首飾りを見て、ポロポロと泣き出してたぞ」


ツーヴェ「まじかー、やっぱあの件だよなぁ。はぁ…サンキュー」


【森の途中で血の匂いがしてくる】


アレフ「あぁ…ん?なぁツーヴェ、何か匂わないか?」


ツーヴェ「ん?…本当だ、何だこれ…血の匂いか?…あっちだ!」


【移動する2人】


ツーヴェ「何だ…っ?!アレフ、人だ!人が倒れてる!!」


アレフ「何だって?急いでいくぞ!」


ツーヴェ「おい、大丈夫か?!…しっかりしろ!…くそっ暗くてよく見えない。アレフ、灯りを!」


アレフ「ああ!………え?」


【そこに居たのは、四肢がなくなった、妹のセシルだった】



アレフ「セシルっ?!」


セシル「かはっ…」


ツーヴェ「は?おい、嘘だろ?!セシルちゃん?腕が無い…足も…」


セシル「ぐっ…お…にぃ…ちゃ…」


アレフ「セシル!セシル!!しっかりしろ、何があったんだ?!」


ツーヴェ「とにかく止血しないと!!」


セシル「お兄ちゃ…ごめ…ん…ね」


アレフ「セシル…セシル!!」


ツーヴェ「くそ、血が止まらない!」


アレフ「何があったんだ…セシル!!」


ツーヴェ「アレフ!セシルちゃんが何か言ってる」


セシル「アル…カデ…ア」


ツーヴェ「っ?!」


アレフ「セシル?おい!セシル?!セシルゥゥゥゥ!!」



【事切れた妹を抱きしめ続けるアレフ】



アレフ「なんで…何でだよ、何でお前、こんな所にいるんだよ…王都に買い物に行ってた筈だろ…」


ツーヴェ「…アレフ」


アレフ「誰が…こんな事を…」


ツーヴェ「アレフ、セシルちゃんの首の所、これは…奴隷の首輪だ」


アレフ「…は?奴隷の首輪?」


ツーヴェ「あぁ、みろ。丸の中に8つの目…これは奴隷紋だ。もしかしたら、王都で何かあったのかもしれない」


アレフ「……っ」


ツーヴェ「アレフ!しっかりしろ!とりあえず…このままじゃ、セシルちゃんが可哀想だ。埋めてやろう」


アレフ「セシル…」


【セシルの遺体を埋葬する2人】


ツーヴェ「…これでよし。ごめんな、セシルちゃん。急ごしらえの墓になっちまって…」


アレフ「……」


ツーヴェ「アレフ、セシルちゃんの体の傷…最初は獣にでも喰われたのかと思ったが、あれは違う」


アレフ「…どういう事だ?」


ツーヴェ「あの切り口は、獣の牙で食いちぎられた傷じゃない…あれは剣で切られて出来た傷だ」


アレフ「…なん…だと?じゃあ、セシルをこんな目に合わせた奴が居るって事なのか…」


ツーヴェ「おそらく…。アレフ…大丈夫か?」


アレフ「……ああ」


ツーヴェ「もしかしたら、一緒に行ったダグじいさん達が帰って来てるかもしれない、1度村に帰ろう」


アレフ「…ツーヴェ、俺は…セシルを殺したやつが許せない」


ツーヴェ「……」


アレフ「俺のたった1人の、大切な家族を…殺したやつが…許せない!」


ツーヴェ「ああ、俺も同じ気持ちだよ。幼い頃から、一緒に育って来たんだぞ?俺にとっても大切な家族だ…。それを…こんなっ」


アレフ「…ツーヴェ」


ツーヴェ「とにかく、村へ戻るぞ!」


アレフ「ああ、わかった」



【村へ戻る途中の森】



ツーヴェ「なぁ、アレフ…」


アレフ「なんだ?」


ツーヴェ「なんだが村の方が騒がしくないか?」


アレフ「…?おい、あれ!」


ツーヴェ「煙…まさかっ?!」


【燃え盛る村 】


アレフ「なんで村が、燃えて…」


ツーヴェ「アレフ!!ボーっとしてんな!!火消すぞ!」


アレフ「あ、あぁ!」


ツーヴェ「ごほっ…酷い煙だ…村の奴らは逃げれたのか?」


アレフ「くそっ!消えろ!消えろぉぉ…っ?!…誰だ?!誰かいるのか?!」


ツーヴェ「アレフ!下だ!柱の間に誰かいる!!」


アレフ「柱の間?…ライザだ!!おい!ライザ、大丈夫か?!今助けるからなっ…このっ」


ツーヴェ「ライザ?アンガスさんとこの倅か…」


アレフ「…もう大丈夫だ!今手当を…」


ツーヴェ「…アレフ」


アレフ「大丈夫かライザ?なぁ、返事をしてくれよ…なぁ!」


ツーヴェ「…アレフ…だめだ、もう死んでる」


アレフ「くっそお!!一体…何があったんだっ…」


ツーヴェ「他に無事な奴らが居ないか探そう」


アレフ「あぁ…。熱かったよな…怖かったよな…助けてやれなくて、ごめんな…」



【村の様子を見てまわる、アレフとツーヴェ。森の方から声がする】



シスター「……アレフさんっツーヴェさん!」


アレフ「シスターっどうしてここに」


シスター「村から煙があがってるのが見えたんです、一体何があったんですか」


ツーヴェ「わからない、俺達が帰ってきた時には、村はすでに火の海だった」


シスター「そんな…、村の方々は」


アレフ「わからない…何もわからない…」


シスター「そう…ですか、そういえば、セシルちゃんは…」


アレフ「……っ!」


シスター「まさかセシルちゃんもこの炎に?!」


アレフ「…くっ」


ツーヴェ「…セシルちゃんは、森の中で殺されていたよ」


シスター「えっ?!」


ツーヴェ「四肢を切られて…血だらけになって倒れていたんだ…」


シスター「そんなっ…酷いっ」


ツーヴェ「それに、セシルちゃんの首には、奴隷の首輪がつけられていた」


シスター「奴隷の首輪?」


ツーヴェ「ああ、セシルちゃんは、王都に出かけてたから、そこで何かトラブルに巻き込まれたとしか…」


アレフ「…セシル」


シスター「ここ最近、孤児院の子供達から、紫のマントを来た人がうろついているという話を聞いていましたが、それも何か関係が…?」


アレフ「…わからない、ただ首輪には、丸の中に8つの目が書いてあった事しか手がかりが無いんだ」


シスター「…丸の中に8つの目。…っ!」


アレフ「シスター!何か知っているのか?!」


シスター「いえっ、すみません、わかりません」


アレフ「そう…か」


ツーヴェ「アレフ、ここで悩んでいても仕方がない。王都に乗り込むぞ」


アレフ「あぁ、もとよりそのつもりだ」


シスター「…私も、一緒に行きます」


アレフ「シスター?!」


シスター「この村は、私にとっても大切な村…セシルちゃんも大切な家族です。このままじっとなんてしていられません。それに、もしかしたら、逃げのびた方々と途中で落ち合うかもしれませんし」


アレフ「だがっ、王都はここから2日もかかるんだぞ?途中に宿なんてない、夜は野宿だ」


シスター「大丈夫です!孤児院もボロボロで、天井に何ヶ所か穴が空いています!毎日野営しているような物ですよ!」


アレフ「いや、そういう問題じゃ…」


ツーヴェ「ははは、良いじゃないか、シスターの気持ちは変わらないようだし!それに、味方は多いほうがいい」


アレフ「わかった、だが、シスターこれだけは約束してくれ。危なくなったら、俺達を置いて逃げると」


シスター「ええ、わかりました…」


ツーヴェ「よし、行くぞ…今の時間なら、そうだな、森の中を通りながら野営しよう。そうすれば明日の夜にはつくだろう」



【たどりついた王都フリューリンク】



ツーヴェ「なんとか王都までは無事にこれたな…」


アレフ「賊に襲われたり、猪に追われたりするのを無事というのか?」


ツーヴェ「何言ってんだよ、村の自警団に勤めてる俺達からしたら、何てことなかっただろ?」


アレフ「それは、そうだが…」


シスター「随分と刺激的な旅でしたね…」


アレフ「…しかし、どうやって王都の中にはいる?衛兵を倒すのは得策じゃあないぞ」


ツーヴェ「裏道が無いわけじゃあないが、ちと危ない橋だな」


アレフ「なら、やはり強行突破で…」


シスター「あの、別に指名手配をされているわけでもありませんし、堂々と入りませんか?…すみませーん、王都に3人入りたいんですけどー、ええ、2人は私の護衛になります。はい、わかりました。ありがとうございます、貴方にゼリアス様の御加護があらんことを…」


ツーヴェ「…まじか、シスターってこういう所がすげーよな」


アレフ「確かに」


シスター「ほらー、2人とも早く行きますよ~」



【すんなり王都に入れた3人】



ツーヴェ「普通に入れたな」


アレフ「あぁ」


ツーヴェ「あんなに意気込んでた俺たちって…」


アレフ「いうな」


シスター「それで、どうしましょう?夜遅いですが、別れて情報を探しましょうか?」


ツーヴェ「あぁ、それがいいな。俺はスラム街の方に行ってくる。アレフとシスターは酒場で情報収集を頼む!この時間なら酒場は賑わってる頃だろうし…アレフ!シスターの事頼んだぞ」


アレフ「あぁ、任せろ。ツーヴェも、無茶はするなよ」


ツーヴェ「わかってるよ!んじゃ、2時間後にここで落ち合うぞ?」


アレフ「わかった」


シスター「わかりました」


【アレフとシスターは酒場へ行く、どこか薄暗くガラの悪い連中がたくさんいる】


アレフ「王都の酒場とは思えないな」


シスター「近頃、冒険者や傭兵の方が増えたと聞きます、おそらく、そのせいでもあるのかと…」


アレフ「…なるほど。…?なあシスター、あそこ、高そうな身なりをしてるあいつ等、あれも冒険者なのか?」


シスター「いえ、あの手の服装は、王都の貴族に好まれる服装です。それこそ動きを重視した冒険者達は絶対に着ませんよ」


アレフ「…気になるな」


シスター「少し近くに行ってみますか?」


アレフ「あぁ…」



【移動する2人 以下気持ち小声で】



アレフ「ふむ、世界最悪の裏ギルドが王都に滞在している噂か…他には…。…特に、めぼしい話しはしていないようだな」


シスター「えぇ、そのようですね」


アレフ「酒場での情報は無しか…ん?シスター、あの奥の紫のローブを纏った奴は…」


シスター「…ああ、あれは奴隷商ですね。肩の所に模様があるでしょう?奴隷商ごとに模様が違うので、何処の奴隷か一目でわかるようになっているんです」


アレフ「…丸の中に8つの目。セシルの首輪に着いてた模様と同じだ!おい、そこのお前!!」


アハト「おや?どなたですか?」


アレフ「セシルを殺したのはお前だな?!」


シスター「アレフさん!?」


アハト「なんの事でしょう?人違いでは?」


アレフ「とぼけんな!セシルの首には丸の中に8つの目、あんたのその奴隷紋が描かれた、この首輪が付けられていたんだよ!!」


シスター「アレフさんいけません!」


アハト「それは確かに、うちの奴隷紋ですねぇ」


アレフ「セシルは、数日前に森の奥地で血だらけになって捨てられていたんだ!!あんたの仕業だろう!!」


アハト「はて、記憶にありませんが…」


アレフ「貴様っ…とぼけるんじゃねえ!!」


シスター「アレフさん!力づくはダメです!!」


アレフ「なんでだよシスター!こいつがセシルを…妹を…」


シスター「いいですかアレフさん。奴隷商とは、政府と密な関係にある職種になります。王都では、通行証の払えない人は滞在出来ませんし、無断で入れば処罰の対象になります、いわゆる難民扱いです。わかりますか?難民は最悪の場合、処刑されます。たとえ入手ルートは不明だとしても、彼らは名目上、奴隷という扱いで、難民を保護し王都に滞在させる事が出来る、国から認められた存在なのです。」


アレフ「だからなんだっていうんだ!」


アハト「お連れの方は聡明な様ですが、貴方は血気盛んですねぇ。ははは…若い若い」


アレフ「黙れ!!」


アハト「そこの女性の言う通り、我々奴隷商は人を売買しておりますが、どれも大切な商品。それはそれは丁重に扱うに決まってるじゃないですか?」


アレフ「じゃ何故セシルは…」


アハト「…商品である内は…ね。」


アレフ「…は?」


アハト「あはははは、なんて顔してるんですか?当たり前でしょう?我々は奴隷という商品を扱っているんですよ?売れた後にその奴隷がどうなろうと、我々の預かり知るところではないでしょう」


アレフ「なんだと…」


シスター「アレフさん、残念ながら彼の言うことは間違ってはいません。物にしろ、奴隷にしろ、売買が成立した時点で、商品の所有権は、購入した人物へと移ります」


アハト「そういう事です。もう用はありませんね、では祭りがあるので失礼しますよ」


アレフ「…っ」


【アハト、出ていきがてに 顔だけふりむき】


アハト「ああ、そういえば…最近、私も奴隷を購入したんですよ。ロングヘアの可愛らしい女性なんですけどね?お兄ちゃんお兄ちゃんとあまりにもうるさいので、騒ぐ度に指を一つ一つ、それはそれは丁寧に折って差し上げたんですよ。

いやぁ、あの泣き叫ぶ姿は壮観でした。まあ、直ぐに従順な良い子になったんですけどねぇ?ですが、逆に従順過ぎてつまらなくなってしまいましてね…また泣かせてみたくなったんです!

今度は、四肢を一本ずつ切り落としました…すると、これがまたいい声で泣くんですよ。いやはや、あまりにもいい声で泣くので、年甲斐もなくはしゃいでしまいましてね、止められなくなってしまいましたよ。やはり、少し無理をさせすぎたんですかねぇ?腕、足と交互に切り落として行きましたが、残念ながら四本目で壊れてしまったので、数日前に森へ捨ててきた所なんですよ」


アレフ「…なん…だと…」


アハト「おや、その顔…。あの可愛らしい奴隷にそっくりですねぇ…あははははは」


アレフ「貴様あぁぁあぁあ!!」


シスター「アレフさんダメですっ!!気持ちは分かりますがっ…耐えてくださいっ!」


アハト「では、失礼しますよ」


【そのまま去るアハト】


アレフ「っ…ぐぅっ…畜生っ!!なんで止めたんだ!!シスター!!」


シスター「っ…すみません。」


アレフ「っ…、いやシスターに怒鳴っても仕方がい。どうやら頭に血が上りすぎていたようだ…すまない」


シスター「いえ、私もアレフさんの気持ちを考えずに、色々言ってしまいましたし…ごめんなさい」


アレフ「いや、シスターは正しい事を言ってくれただけだ…気にしないでくれ」


シスター「…すみません」


アレフ「…そろそろ、ツーヴェと合流する時間だ…行こう」


シスター「…はい」


【合流する三人】


ツーヴェ「よ、待たせたな…ん?どうした、何かあったのか?」


アレフ「……。」


シスター「実は…セシルちゃんを購入した奴隷商と遭遇しました」


ツーヴェ「は?まじかよ」


シスター「ええ、彼はきちんと法にのっとり、自身の奴隷を購入されていたようで、形式的には問題ないんです…ですが…」


アレフ「あいつが、セシルを傷付けて森に捨てたと言っていた」


ツーヴェ「…そうか」


アレフ「なぁ、どうにかあいつを潰す方法はないのか?」


ツーヴェ「…この国は法がすべてだ」


アレフ「法、法って…あいつらは人を攫って奴隷にするんだぞ?!それは法を犯してないのか?!」


ツーヴェ「残念だが、王都の外で起きた事に関しては、何もしちゃくれない。この国は腐ってるんだよ」


アレフ「じゃあ!このまま泣き寝入りしろっていうのかよ?!」


シスター「…一つ方法があります」


アレフ「本当かシスター?!どんな方法だ?!」


シスター「先ほどの奴隷商がおっしゃっていた、祭り…」


ツーヴェ「シスター…」


シスター「…おそらく彼は、その関係者でしょう」


アレフ「関係者?」


シスター「この王都で唯一、法に守られていない、祭り。通称シャングリラ。いわゆる闇オークションです」


アレフ「闇オークション。じゃあ、そこに乗り込めば奴が?」


シスター「十中八九。…ですが」


アレフ「なんだ?」


シスター「オークション会場は王都の外れにあり、そこには厳重な警備がいると聞きます。潜り込むのは難しいかと…」


アレフ「くそっ…目の前に犯人がいるのに…何にもできないなんて」


ツーヴェ「…いや、潜り込む方法はある。」


アレフ「本当か?!」


ツーヴェ「そのためには…アレフ、お前何でもやるか?」


アレフ「当たり前だろう!!」


ツーヴェ「即答か…わかった。ならこの先は俺の言う通りにするんだ」


アレフ「あぁ!」


ツーヴェ「シスターは、何かあった時のために王都にいてくれ、潜入は俺達でする」


シスター「わかりました」


アレフ「よし、行くぞ!ツーヴェ、俺は何をすればいい?」


ツーヴェ「…アレフ、お前、死ぬかもしれないのに…怖くないのか?」


アレフ「怖い?…俺が怖いのは、セシルの仇を討てないまま、この怒りを忘れちまう事だけだよ」


ツーヴェ「そうか…なら、いっちょ、ぶちかましに行くか!」


アレフ「おう!」


【オークション会場】


受付「いらっしゃいませ、こちらはオークション入り口でございます。お客様の番号札はこちらになります。中にお入りになりましたら、仮面を付けて右手の方向へお進みください。

会場内では、身分は一切意味を持たなくなりますのでご了承くださいませ。

なお、ご購入頂いた商品は、オークション終了後、ご入金の確認が取れ次第、順次お客様へとお渡し致します。また、会場内で起きたすべての出来事は、当ギルドでは責任を負いかねますので、お気をつけくださいませ。それでは、間もなく、オークションが開催されます、行ってらっしゃいませ」


【色とりどりに照らされたライト、オークションが始まる】


アハト「レディース&ジェントルマン!この度は、ご来場いただき誠にありがとうございまーす!闇オークション…『シャングリラ』へようこそ!

今宵起こる出来事は、夢か幻か。いいえ、全て現実でございます!あの商品も、この商品も、落札出来れば貴方様の物!心ゆくまでお楽しみください」


アハト「それでは!オークションスタートです!!」


ツーヴェ「まずはこちらの商品から!こちらは、とある貴族様の屋敷で働いていた侍女でございます!見た目はそこそこですが、年齢も若く、見事なスタイル。高値が付くこと間違いなし!この女性を生かすも殺すも貴方様しだい~!では100万から!!250!お、4番様380!!おーっと!出ました500!!さぁ、もういらっしゃらないですかー?では、2番様が500万で落札!」


ツーヴェ「さあ、どんどん行きますよぉ!!次の商品は、とある村の自警団に所属していた男、もちろん能力は折り紙付き、屈強は肉体と整った顔立ち…どうです?加虐心がそそられるでしょう!心ゆくまで躾けるもよし!護衛として働かせるもよし!コロシアムで戦わせるのも面白そうですねぇ!では、800万からスタートです!」


【手かせを嵌められた状態のアレフ】


アレフ「なるほど、自分自身がオークションに掛けられる商品になれば、潜り込むのは容易いか…ツーヴェの奴やるな。にしても、受付で俺を売った後から姿が見えないが、どこへ行ったんだ?」


ツーヴェ「1300!!はーい、35番様1500!!いいですねぇ、どんどん高値になっていきますよ~!!おーっと!!出ました2000!!!」


アレフ「仮面越しに見えるオークション参加者達の目…ありゃ酷い。人を物としか見ていない目だ。セシルも、この目に晒されていたのか。怖かっただろうに。合図が来たら、こいつら皆始末してやるからな…。…ん?なんだ?この匂い…どこかで嗅いだような…っ!しっかりしろ!セシルの仇を打つんだろうが!」


ツーヴェ「2500!!さぁ、もういらっしゃいませんかぁ?!では、58番様!2500万で落札です!!…と、言いたい所ですが、お待たせ致しました!ここでメインイベントです!!」


【突如消える電気 ざわめく観衆

明かりがつくと、手に武器を持った男が鎖から解き放たれていた】


アレフ「お前ら!!生きて帰れると思うなよぉおぉお!!」


【阿鼻叫喚。逃げ惑う参加者を次々に殺していくアレフ。出入口から逃げようとする参加者の背後にツーヴェだ忍び寄る】


ツーヴェ「あぁ、お客様ー。申し訳ございません、オークションが終了するまで、こちらのドアは、開かない仕組みになっておりまして!残念ですが、ここで死んでください!」


アレフ「おりゃぁああ!!奴隷商!!どこだ!!」


アハト「ちっ…貴方ですか、私のオークションを台無しにしてくださったのは…」


アレフ「やっと出てきたな!!」


アハト「ん?よく見れば酒場の…、ああそうだそうだそうだ、妹さんがいた方ですよねぇ?はぁ…私、野蛮な事は嫌いなんですよ?貴方の目的はお金ですか?まったく、仕方が無いですねえ、…で、いくら欲しいんです?」


アレフ「黙れ!!セシルの仇!討たせてもらう!!」


【右腕を切る】


アハト「ぎゃぁぁぁぁあ!腕がっ私の腕がぁああ!!」


アレフ「セシルは指を折られた後、四肢を落とされたんだったな…」


【左腕を切る】


アハト「 うぎゃぁぁぁぁあ!!い、痛いぃぃい…」


アレフ「次は、右足だ」


【右足を切る】


アハト「ぐぁあぁああ!!たのむ…やめろ、やめてくれ…金なら…いくらでも払うからもう、やめっ…」


アレフ「なら、質問に答えろ…村に火をつけたのはお前か?」


アハト「村?あぁ、あの村ですか、奴隷の故郷だというので、め、目の前で火をつけてやったんですよ…絶望した顔が見たくて…」


アレフ「救いようのない奴だな…はぁ!!」


【左足を切る】


アハト「あぁぁぁぁぁぁ!私の、腕が…足がぁぁぁぁ!!そんな約束が違うではないかぁぁあぁぁ!!」


アレフ「約束なんかしてないだろ?」


アハト「やめろ…いやだ…死にたくないっ…いやだぁぁぁ」


アレフ「あの世で懺悔しろ…」


【首を落とす】


アハト「あっ…がっ」


ツーヴェ「おつかれーアレフ、これで全員だな」


アレフ「ツーヴェ。…お前、司会者と入れ替わるなんて聞いてないぞ、危うくお前も切る所だったじゃないか…」


ツーヴェ「え、こわっ、冗談だよな?」


アレフ「いや、マジだ」


ツーヴェ「はぁ…入口の方にいて良かったぁ…。まぁこれでセシルちゃんの弔いも出来たし、俺は事後処理でもしてくるわ」


アレフ「あぁ、悪いな」


ツーヴェ「良いって事よ」



【しんと静まり返った会場内】



アレフ「いるのはわかってるんだ…出てこい…シスター」


シスター「…どうしていると分かったのですか?」


アレフ「はぁっ!」


【シスターに向かって切りかかるアレフ

それをナイフでいなすシスター】


シスター「っ…酷いですね、アレフさん…いきなり切りつけてくるなんて」


アレフ「まさか、あんたがすべての元凶だったなんてな」


シスター「何を言っているのか…」


アレフ「この花の匂い…どこかで嗅いだことあると思ったんだよ。これ、教会で育ててるあの花だろ?確か…特殊な花だって言ってたよな」


シスター「・・・」


アレフ「セシルの遺体からも同じ匂いがした。あいつ王都に出かける前は、そんな匂いしてなかったはずだ。」


シスター「髪飾りじゃないですか?ほら、私があげた」


アレフ「髪飾りは、乾燥させた後にコーティングしてあっただろ?あの時なんの匂いもしなかったよ」


シスター「なら、そこで死んでいる奴隷商からもらったのでは無いですか?」


アレフ「まあ、そうだろうな。だがこの花は、教会できちんと手順を踏まないと、手に入れる事はできないんだろう? それにオークションに掛けられた奴ら、皆この花の香りがしたんだよ…この香りをかぐと…全てがどうでもよく思えるんだ。この花は一種の麻薬だ。これを使って、逃げられないようにしてたんだな」


シスター「…気づいてしまったのですね」


アレフ「なぁ、本当にあんたがセシルを…皆を見殺しにしたのか?」


シスター「そうだとしたら、どうしますか?」


アレフ「なんでそんなことを!!!」


シスター「アルカディア・・世界を有する8人の裏組織がある事をご存じですか?」


アレフ「あぁ、酒場で聞いた世界最悪の裏ギルドだろう?この王都に滞在しているって噂の…アルカディア?まて、セシルが最期に言っていたのは…アルカ…ディ…ア、まさか?!」


シスター「ええ。私、アルカディアが一人、4番目のフィーア、そして…先ほど貴方が殺した奴隷商、彼は、8番目のアハト」


アレフ「じゃぁ、シスターはアイツの仲間だったのか!?」


シスター「仲間?アハトなんかと一緒にしないでほしいわ!」


アレフ「…っ?!」


シスター「彼は、プライドも何もないクズよ。崇高なるアルカディアの中でも最弱、一番下なの」


アレフ「そうか。シスターは、4番目って言ってたな。…随分と上にいるんだな。…あの花のお陰か?」


シスター「ええ、あの花を溶かした水を摂取する事で、貴方の思ってる通り、幻覚作用を引き起こす事が出来るのよ」


アレフ「なるほど、だから飛び入りの俺には、そんなに効かなかったのか」


シスター「運がいいのね」


アレフ「奴隷商に、裏でこの花を流していたんだな?」


シスター「えぇ、そうよ」


アレフ「なんでだよ!!そのせいで、セシルは…村の皆は…」


シスター「彼女達は、運が悪かった…ただそれだけよ」


アレフ「運って…。あんたは皆から慕われていて、周りからの人望だってあったはずだ!それなのに…」


シスター「人望?そんなものでお腹が膨れるとでも?」


アレフ「は?」


シスター「知っています?…生きて行く為には、お金が必要なんですよ」


アレフ「だからって、超えちゃならねえ一線があんだろうが!!」


シスター「なら、誰かが助けてくれるのを、死にながら待てとでも?」


アレフ「ちげーよ!!困ってるなら、辛いなら!何で俺達に相談しなかった!!」


シスター「あははは!!あなた達に何ができると言うの?その日を生きていくのも必死な貴方たちに、何が出来た?何も出来ないくせに、口だけは達者なのねぇ」


アレフ「ああ、そうだな…俺たちには何もできないかもしれない」


シスター「ええ。貧しいが故に、子供を売りとばし、のうのうと生きている親も、偽の孤児院を開き、子供を奴隷商に売りつける村長も、皆同罪よ!!!でも、私がしたのは、あの花を奴隷商に渡しただけ。あの花は幻覚作用もあるけれど、花のまま身につけているとね、段々と痛覚が鈍くなるの」


アレフ「痛覚が?」


シスター「子供達には…せめて、痛みは伴わないようにと思ってたけど…なかなか上手くいかなくてね。この間渡した髪飾り、あれが初めて成功した物よ」


アレフ「…理由はどうあれ、シスター、あんたは許されない事をしたんだ」


シスター「許されない?誰に?アレフ、貴方に?違うでしょう?アレフ、貴方が許せないのは、妹すら守る事の出来なかった、何も出来ない自分自身でしょう?」


アレフ「ああ、俺はセシルを守れなかった。俺が無知で、人を疑うことすら出来なかったからだ!!だがな、確かに俺1人じゃ何も出来ないかもしれない。それでも、一言相談してくれれば、俺達はわかり合うことはできたはずだ!だって?俺達は、家族だろう?!」


シスター「家族…か。今更、もう…遅いのよ、何もかも!!」


アレフ「シスター!!目を覚ませ!今ならまだやり直せる!」


シスター「…無理よ!!もう無理なの!…さよなら、アレフ。貴方の事好きだったわよ?……死ねぇえ!!」


アレフ「シスター!!くそぉおおおおお!!」


【寸での所で、シスターが攻撃を止め、貫かれる】


アレフ「なっ…」


シスター「あぁ…これで…やっと…終われる…」


アレフ「シスターお前っ…わざと…」



【倒れるシスター 】


シスター「アレフ…」


アレフ「シスター…なんで…最後…攻撃を止めた」


シスター「私は…もう、疲れてしまったんです…シスターで居ることも、アルカディアである事も」


アレフ「だからって…」


シスター「アレフさん…最後のお願い聞いてくれますか?」


アレフ「え?」


シスター「どうか…どうか…アルカディアを潰してください」


アレフ「…わかった、わかったからもう喋るな!今、止血を…」


シスター「アレフさん、ごめん…な…さ」


アレフ「 シスター?シスター!!くそっ…くそぉおおお!!」


【謎の男が拍手をしながら 現れる】


ツヴァイ「お見事」


アレフ「だれだ」


ツヴァイ「アルカディアが一人、2番目のツヴァイ」


アレフ「お前等がっ!!このぉおお!!!」


ツヴァイ「残念ながら、君の剣は私には届かない…アハトとフィーアを倒した様だが、まだだ。何事にも順序がある。…そこで提案なのだが、アルカディアに入り給え」


アレフ「は?」


ツヴァイ「何かを成したいのなら力を欲っしろ、力こそ全て。全てを思うがままに…強さとは神にも匹敵する」


アレフ「何を、馬鹿な事を…」


ツヴァイ「アルカディアを潰したいのだろう?」


アレフ「あぁ、そうかよ。…わかった、アルカディアに入って…俺が内部からぶっ壊してやる」


ツヴァイ「ははっは、気に入った。君は八番目のアハトを名乗ると良い、すべてを欲しいままにしたいのであれば、いつか…アインにまで上り詰めて見せろ!はっはっはっは」


アレフ「上等だ…やってやるよ!!お前等全員ぶちのめして、俺が裏ギルドの頂点に立ってやる!!」



【ピピピと鳴る 目覚ましの音】


アイン「…ちっ昔の夢か」


フィーア「お目覚めですか?あ、また!!もう…毎朝毎朝、目覚ましを破壊するのやめてくださいません?」


ツヴァイ「同感だね、もったいない」


アイン「うるせぇ、んで今日の予定は?」


フィーア「本日は、8時から書類整理、10時からドーベ連盟との会合、あ!会合後にアザラン王との会食があり、13時からノルン伯爵との面談、そして14時から依頼の…」


アイン「あー聞いた俺が馬鹿だった。まったく、何でこんな事になったのやら」


ツヴァイ「それは君が願ったことだろう?」


アイン「世界最悪の裏ギルドを内側からぶっ壊すために上り詰めたのに…こんな忙しくなるなんて聞いてない」


ツヴァイ「あはは、ご愁傷様」


アイン「ちっ…ただ潰すだけのはずが…なんでこんな仕事しなきゃならないんだよ」


ツヴァイ「当たり前だろ、何事にも順序があるんだから、まあ、しっかりやんなさいよ」


アイン「うるさい、ツヴァイ。クビにするぞ」


ツヴァイ「え、待って?嘘でしょ?」


フィーア「では、今月の給料はカットで良いですね」


アイン「ああ、そうしてくれ」


ツヴァイ「待って、待って!奥さんに怒られちゃうから!やめて!」


アイン「ははは、冗談だ。行くぞ!ツヴァイ、フィーア!」


フィーア「あ、お待ちください、アイン様」


ツヴァイ「まったく…どこまでもお供しますよアイン様」


END


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Murder auction ねむりねずみ@まひろ @sibainu_uta

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