第12話 魔法の基礎
上には上がいることを知って少し自信を無くしていた僕を、リーリスはどうすればいいのか分からないといった顔で見つめていた。
「あー、うん。大丈夫だよリーリス。ちょっとへこんでしまったのは事実だけど…………」
「な、なに、魔力の多寡だけが強さを決めるわけではないからな。それにこれから努力すれば魔力量が一千万を超えるかもしれないのだ!」
「そ、そうだよね! よし、僕頑張るよ!」
なんて言ったってファンタジーの定番、魔法。少なくとも僕にはそれを使えるだけの魔力はあるんだから! 落ち込んでても仕方ないよね! これは空元気じゃない、多分……。
そんな風に気を取り直したところで、僕はもう一つ聞いていなかった項目があることを思い出した。
「ねえリーリス、僕の魔法適性ってどうだったの?」
「ん? ああ、そうだな。
「よかったぁ、才能がないって言われたらどうしようかと思ってたよ」
「ははは、魔力がそれだけあれば普通は天才として扱われるのだぞ?」
「う…………」
「わるい、少し意地が悪かったな。……何はともあれ、主様が魔法を使うことができるということが確かになったからにはきっちり教えていかねばな」
そう言うと彼女は人差し指を立て、無言で僕にここを見ているように指示した。
「まずは先程も言ったが、基本四属性の確認だ。まずは火」
そう言って彼女は立てた指先に小さな火の玉を浮かべる。
「次に水」
今度は中指を立ててその先に水の玉を浮かべる。
「そして風」
そのまま薬指を立て、同じように風が渦巻く玉を浮かべる。
「最後に土」
最後は小指を立てて、虚空から現れた土の玉を浮かべる。そのまま彼女は指先でそれらをもてあそびながら続ける。
「これらは基礎中の基礎で特に名前は付けられていない。しいて言うならば
「へえ」
「いずれは主様にも息をするようにできるようになってもらうからな」
「まあそうなるよね。けどそれができなかったら他の魔法も使えないんでしょ?」
「この遊びは魔法によって何かを起こす感覚を掴むための手掛かりになるからな。下手でも問題はないが、できる方が魔法の威力が上がるぞ」
そう言うと、リーリスは手を握りこんで火の玉たちを消して僕に近づいてきた。そのまま彼女は僕の後ろに回り込むと、密着して僕の手の甲から握りこむように手を掴んできた。
「さてそれでは主様よ、さっそく実践してみようか」
「…………ちかい」
「ならば主様は私のアシストなしでうまくいくと?」
「さすがに最初からうまくできるとは思っていないけどこれじゃあ集中できないよ!」
「意外と可愛らしいところがあるじゃないか。顔もそうだが」
「余計な一言!」
そう叫ぶと同時に、手の甲に静電気のような衝撃が走った。その感覚にビクリと背を震わせてリーリスを振り向くと、彼女はクスクスと笑っていた。
「今のは魔力だよね?」
「ああ、やはり主様は反応がいいな。この分なら早々に魔法を使えるようになるんじゃないか?」
「それはどうも」
「いや悪い、魔法を使うにはまずは魔力を感じられるようにならなければ話にならないから、その練習にと思ってね」
「いたずらも込みじゃあ……」
僕の呆れたような声に彼女は苦笑いで返すと、「ここからは真面目にやろうか」と言った。
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