第10話 リーリスの指導(魔法編)
翌日、ユリウスさんとの剣術の指導を終えて部屋に戻ると、リーリスが腕を組んで待ち構えていた。
「さて、昨日言ったように今日からは魔法についても教えていこうと思う。……多少詰め込み過ぎる気はしないでもないが、
そこで、と言葉を切ると彼女は「一旦家に戻って、必要なものを準備しながら基礎を教えようと思う」と言った。
それから僕たちはリーリスの家に向けて歩きながら、彼女の言葉に耳を傾けていた。
「そもそも魔法とはなんだと思う?」
「そう言われても、僕はここに来てから魔法らしい魔法を見ていない気がするんだけど……」
「そうか? 例えば最初に渡した耳飾りだが、それも『使用者の耳に入る言葉を使用者が知っている言葉に、口から出る言葉を聞く相手のわかる言葉に翻訳する』という魔道具だ。魔道具というのは魔法の力を封じ込めた道具のことを言う。確かに派手ではないが、それも立派な魔法だぞ」
「なるほど。そうだったのか」
そういえば言っていなかったか、と照れたように頭をかくリーリスに笑いかけながら僕は考える。魔法とは何か…………。
「魔法は、人間にできないことをするための、ちから?」
「ふむ、ほぼ正解といったところだな。魔法とは、確かに人知を超えた行いを成すものだ。しかし魔法とて万能というわけではない」
「そうなのか?」
「個人の能力が許す限りでは、な。人には魔法における得意不得意があり、それぞれが許す突出した能力を扱うことができる」
「なるほど?」
「まあ、魔法の説明はいったんこれくらいにしておこう」
「え?」
見れば、すでにリーリスの家の前に到着していた。
それから、僕たちは以前来た時よりも綺麗になった部屋の中で、テーブルを挟んで向かい合って座っていた。
「さて、先程の続きだが魔法は個人の特性によるものが大きい。その最たるものが魔力だな」
「魔力、と言うと魔法を使うために必要な力かな」
「ああ。この魔力という力は、その個人の魂に依るものが大きい。母様はなんと言っていたか…………。ああ、魂というのがタンク、魔力はそこに溜まる水、と言っていたかな」
「それならわかりやすい。でもさっきの言い方だと魔力はその魂がどれほど大きいかによるってことだけど、僕の魔力は魔法を使うのに十分なほどにあるのかな? そういうの、全然感じたことがないんだけれど……」
「そうだな。魔力は一度感じることができれば解るようになると言われているが、そもそも魔力が少ない者は非常に感じにくいか、全く感じることができないかだと言われている。…………とまあ少し脅しも入ったが、実際に魔力をどれほど有しているのかを調べるための装置がこれだ」
そう言って、彼女はテーブルの下から奇妙なものを取り出した。最も見た目が近いものを挙げるとするならば、理科の時間に使った顕微鏡だろうか。ただ、接眼レンズのある部分には水晶の板が張り付けられ、対物レンズとステージに当たる部分は握りこぶし二つ分ほど離されている。そしてその対物レンズの部分には細い針が、ステージの部分には手形が描かれていた。
「さて主様よ、この手形に沿って手の甲を上にして乗せてもらえるか?」
「こうすればいいのかな」
「うむ、それでよい。…………では、少し痛いぞ?」
「は?」
リーリスが装置に対して何らかの操作をすると装置が淡く光り出し、細い針がストン、と手の甲に突き刺さった。
「っ!」
針が細いためにひどい痛みではないが、それでも刺さり続けているためにひりひりとした痛みが止まらない。その痛みに思わず引きそうになった手を、彼女が強い力で押さえつける。
「リ、リーリス!」
「少しの辛抱だ。それ、来るぞ!」
僕の手から垂れた血が一筋、ステージに向かって流れる。その血がステージに着いた瞬間、光が強くなってナニカが僕の中を駆け抜けていった。
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