墓場で夏祭り
笑子
蛍の葬送
真夜中。ひたすらに続くのではないかと思う一本道を、私は歩き続ける。紐が絡まったような白いサンダルの踵を、土道と小石ににぶつけながら。
左手には一度入ったら抜け出せないような森林が、右手には小川が流れていて、土手が続いている。もちろん街灯なんて無い。前日に雨が降ったのか、はたまた一昨日か、音から察するに水かさは増えているようだった。
この山奥に、いったい何があるのだろう。もうここまで来ると、昼間でも来たことのない場所だ。草木は生い茂り、雑草が私の脚に絡みつく。
白いシャツワンピースの裾が、歩く度にふわりと
私に帰る場所はない。それだけが頭の中にはっきりとあって、それ以外のことは何もわからなかった。でも、わからなくていいと思った。
そういえば、さっきから蛍が飛んでいる。きらきら光るあの虫は、どこへゆくのだろう。あの虫たちには、ゆく宛があるのだろうか。きっと考えてもわからないけれど、同じ道を辿ってみようか。伸ばした自分の手は、同じように光を発して透けている。
墓場が見えた。真新しい墓標が見えた。そこに向かわなくてはいけない気がした。そこには、無数の光がある。漂う光のなかを、私も同じように漂う。もうすぐ、朝日が昇る。
静かなこの場所で、私は透けた手足を振り回しながらくるりと回った。ああ、愉しい。何もかもから解放された光たちが、愉快に躍る。さながら夏祭りのような賑わいに、憐れ、誰も気づくことはないのだ。私はそっと泪を流した。
墓場で夏祭り 笑子 @ren1031
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