6章 傭兵編
第64話 メル友
盗賊団とドラゴン討伐から2週間が過ぎた。
今、俺たち傭兵サロン【セイント・カイン】の4人は隣国ランゴドルバの地方都市トロボンにいる。王都の衛星都市の一つで、コーエン国、国境とは大きく離れた地域だ。
この街を選んだ理由はダンジョンの存在と魔物の森が街周辺に点在しているからだ。
何故、隣国に入って早々に、そんな街を探せたかというと【メール機能】でラムシーさんに教えてもらったのだ。
メール、マジ便利!
◆ショキ→ラムシー
『ラムシーさん、ご無沙汰! 今、国境を越えてランゴドルバに来ています。この国のどこかに拠点を作ろうと考えているんだけど、どこか良い街を知りませんか? ダンジョンとか魔の森が近くにある街に行こうと思います。良い街があれば教えて下さい。
それからドラゴンの魔石は売れましたか? サロンの登録料の差額を口座に振り込まれるのは、いつ頃になるか教えて下さい』
◆◆
……とまあ、こういうメールを送ったわけだ。返信は即行だった。
◆ラムシー→ショキ
『お手紙有難う御座います。ショキ殿が突然いなくなり傭兵ギルド一堂、たいへん驚いておりました。セイント・カインの皆様には、このスナバ市にて活動して頂きたかったので非常に残念です。いずれショキ殿らの腰が落ち着きましたなら、食事でもしながら語らいたいものです。
ランゴドルバ国でショキ殿のご希望とされる街の件ですが、王都ペトの衛星都市の一つにトロボンという街があります。大小2つのダンジョンが何れも馬車で一両日の距離にあり、魔の森も近場にいくつかあったと記憶しております。冒険者が多い街ですが傭兵ギルドの支部もありますので、現金口座の引き出しが可能です。
魔石の売却は済んでおり、ショキ殿の口座に入金済みでありますので都合が良いでしょう。
ここで前回の説明で説明不足があったことを、お詫びしなければなりません。入金した支部でお金を引き出すには問題ありませんが、支部が異なると手数料が掛かることを失念しておりました。重ねてお詫び申し上げます。
……中略……こうしてショキ殿の事は、領主様へは何とか誤魔化すことが出来ましたが突然現れ、消えたグリーンのドラゴンについては、半信半疑の様です。日がたちにつれ我々でさえも、あのグリーンドラゴンが本当に実在したのか信じられなくなる有様です。あれから魔の森を警戒調査していますが、2匹のドラゴンの確認が出来ずにいます。ショキ殿は一番間近でドラゴンと接触しておりましたので何か心当たりがあれば、お知らせ頂きたい。
……中略……孫が立つ姿は、なかなか可愛らしいもので、血生臭い我が半生を振り返ると……中略……中略……』
◆◆
……長いは! 文字数制限を掛けてやろうか?!
メールの内容は①コーエン国にいて欲しかった。②街はトロボンがお勧め。③口座に入金済み。但し下ろすときに手数料がある。④俺たちの事は誤魔化してくれている。⑤その他、といったところだ。
ラムシーさんの場合は、こちらからメールをして返信があったのだか、実は彼より前に着信があった。鉄の旅団代表のリッパーさんだ。
◆リッパー→ショキ
『ショキ殿、突然消えるなんて、つれないぜ! どこかに腰を据えたら教えてくれ。一緒に仕事をしようぜ。どこかの領主の用心棒でも、冒険者の様にダンジョンに潜っても面白いかもしれねー。一発ドカンと儲けようぜ!』
◆◆
こんな具合だ。返信はしない。しなくて良かったとつくづく思う。ラムシーさんのメールを読んで確信したのだ!
ラムシーさんの返信は出来るだけシンプルにした。こんな感じだ。
◆ショキ→ラムシー
『情報感謝。入金確認する。謝罪不要。文面は簡潔に。長文は送信事故の可能性あり』
* *
さて、お金を下ろして必要なものを揃えたらあいつを迎えに行かなければならない。言いつけ通り上手く隠れている様子だ。
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