第65話 ドラゴンに乗って

 傭兵ギルドで金を引き出した後、ギルドに紹介された不動産屋から庭付きの家を借りた。


「以前は、商会の寮として使われてたそうですから部屋数が多いですな。ショキ様は、奥の一番大きな部屋をお使い下さい」


 どの部屋もガランとして、家具等は一切ない。


「ウルゾン。俺は、また用事で出掛けるから、足りない家財道具を揃えておいてくれ」


 そう言ってウルゾンに金貨の入った袋を預ける。


「かしこまりました。いつ頃お戻りですか?」


「すぐに戻る予定だが、その間に子供たちの勉強は、しっかり見てくれよ!」


「「ええー?!」」


「ははっ。お任せ下さい」


     *     *


『隠蔽』を使って気配を消す。本気で走って、まる一日ほどでコーエン国の国境を超えた。あいつが居る魔物の森はすぐだ。


 魔物防災砦から離れた地点で森に入る。


 エキストラスキル【友達100人/通話】


『パールは、いるか? 迎えに来たぞ。姿を見せろ!』


 紫竜をパールと名付けた。そう、パープルでパールだ。俺には名付けのセンスなどないのだ! ……それが何か?


ぬし様、パールはこれに。直ちに参りまする!』


 しばらく待っていると、後ろの草むらから、筋骨隆々の大柄な裸の美女が現れた!


 しかも、ボンキュッボン!


「待ちくたびれましたぞ!」


「オイオイオイ、なんで裸なんだよ。渡していた服はどうした?」


「申し訳ありませぬ。主様の言いつけ通り人化して人間から隠れていましたら、1週間で草木に引っ掛けて破れてしまいました。されど御安心あれ。我は、もともと裸ゆえ何の支障も御座いませぬ!」


「俺に支障があるんだよ!」


 ……残念だ。パールは美女だが俺より20センチくらい背が高いので恋愛対象にはなりにくい。更に見た目の年齢も20代後半、そして筋肉モリモリ。……無理だ。実に残念だ!


「ちょうど良い。ドラゴンに戻って俺を乗せて飛んでくれ。試したいことがあるんだ」


「かしこまりました」


 パールは気負うでもなく、形態を変化拡大させていく。


 メキョ、メキョ、メキョ!


 見ていて、あまり気持ちの良いものではないので描写は控えよう。俺もドラゴンに就労する時はこんな感じなのかな? ……ちょっとへこむぜ。


 パールの背中に乗り込むと同時に【自己アピール/隠蔽】を発動!


「パール、砦の上空を飛んでみてくれ」


 パールは返事の代わりにコクリと頭を下げて翼を1回羽ばたかせる。


 フワリと巨体が浮いたと思ったら、上空にスーッと上がる。俺の股間もキューンとなる。翼で浮力をつくるのではなく魔法の力のようだ。


「さて、上手く行くかな?」


     *     *


 砦の上空を何度も旋回しているが、全く騒がれない。


 成功だ! 俺の【隠蔽】は自身以外にも影響を及ぼせるのだ。


「これでトロボンの近くまで飛んでいけるな。パール、北に向かって飛んでくれ!」


 彼女は、また返事の代わりにコクリと頭を下げ一羽ばたきする。俺をキューンとさせながら上昇。かしらを北に向けた。


     *     *


「そういえば、魔物は魔素のある所にしか生息できないと聞いてたけどパールは大丈夫なのか?」


「主様、心外でありまする。我ら古竜は魔物ではありませぬ。その辺の魔物と一緒にしないで下さいませ」


 珍しくムッとした口調だ。


「そ、そうか? スマン、スマン!」


 ドラゴンは魔物ではないのか?


 そんな話をしていると、そろそろ国境付近に近づいてきた。


 下の様子を眺めると、街道を外れた場所で土埃が見えた。十数騎ほどの騎馬が走っている。3騎が十数人の騎馬隊に追われているようだ。


「パール。ちょっと高度を下げろ!」


 俺の股間が、またキューンとなった。


 追われている3人は顔を布で隠している。盗賊のたぐいならこのまま放置だ。追っ手はコーエン国の騎士のようだ。


「よく見ると追われている内の1人は女だな」


 俺は更に目をこらして観察した。


「あの膝上までのヒールの高いブーツと太股には見覚えがあるぞ!」


     *     *


 特に見覚えがあるのが、ブーツがムッチリと太股に食い込む辺りだ!

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