第55話 討伐要請なんだぞ!

 夜、8時前。宿から俺一人が傭兵ギルドに行った。


 訓練場の場所など知らないが、人の流れについて行く。長方形のちょうど学校の体育館程の広い場所だった。


 思っていたほどの人数はいなかったが、それでも4~50人はいるようだ。まだ集まって来ているから最終的に50人は軽く越えるだろう。


「ショキ殿、こっちだ!」


 ラムシーさんが俺を見つけて声を掛けてくれた。何となく独りは寂しかったので助かる。


「こちらが新しく傭兵団を立ち上げた【セイント・カイン】のサロンマスター、ショキ殿だ」


 ラムシーさんのそばに数人の男達。目を見開いて俺の事を見ている。きっと偉い人達なんでしょう。


「……本当に子供じゃないか?!」


 一人が絞り出すように口を開いた。


「まあまあ、リッパー殿。彼はサロン設立の要件を満たしているし、サロンはマスター自身が実力者である必要もありませんからな」


「確かにラムシー殿の言うとおりだが……」


「彼は鉄の旅団、サロンマスターのリッパー殿だ」


「はっ。セイント・カインのショキです。若輩者ですが宜しくお願いします」


 俺は直立不動、頭を深々と下げて『嘘八百』先生の指導の下、如才ない挨拶を披露する。


「う、うむ」


 それからラムシーさんが一人ずつ紹介してくれた。


 カミソン傭兵団のサロンマスター・カミソンさん。


 国境なき騎士団代表ダムキンさん。


 個人での登録者、つまり凄腕傭兵の2人。トカチャンペさんとライチューさんを紹介された。


 そして最後にカゲンガーク国のヘオン傭兵団。


「先程は失礼しました。隊長ビオラが不在のため私が代行をしております。コンダクです。宜しくお願いします」


     *     *


「ウオッス。急な召集によく集まってくれた。感謝する!」


 ギルドマスター・ヤリカーイさんだ。詳細を説明された。


 以前ウルゾンから聞いた討伐された盗賊団『灼熱の風』。その残党が主体の新たな盗賊団ができた。『灼熱の暴風』だ。


 この盗賊団が国境付近の魔物防災砦を攻撃、占領したという。勢いに乗ったこの『灼熱の暴風』が周辺の盗賊共を次々と吸収して規模を拡大している。その数、300から500人規模まで拡大しているそうだ。


「この討伐を領主様から傭兵ギルドと冒険者ギルドに要請された!」


「おおーっ」と集まった傭兵達から声が上がる。


 カミソン傭兵団のカミソンさんが手を上げた。傭兵達とは違い、のんびりした様子だ。


「あー、ギルマス殿。金は出るのか?」


「もちろん出る! わずかだが……」


 傭兵達から「あー、ヤッパリな」とか「そんな事だと思ったよ」とか声が聞こえる。


「その代わりギルドからサロンに対して功績に考慮して会費の割引やポイントサービスを行うぞ」


 またまた傭兵達からコソコソ。「またポイントだってよ……」


「バッカモーン。うるさい、うるさーい。領主様からの要請なんだぞ! それに冒険者ギルドとも共同なんだ。負けてられるかぁぁー!」


 ギルドマスター・ヤリカーイさんって、本当にラムシーさんの上司なのかなー?


「まあ盗賊共は何とでもなるがな。問題は……」


 ラムシーさんが一人ぼやいている。それを受けて、個人参加のトカチャンペさんが言った。


「カーッペッ! ソンだなや。後ろの魔物の森が問題なんだなや。何しろ【竜の巣】だかんね!」


「なんだバカヤロー。竜の巣って言ったところで、ぬし一匹だろが竜はよ! ビビってんじゃねーぞ」


 と言うライチューさんも顔色は冴えない。


     *     *


 なんだドラゴンかぁー! コゲ(アースドラゴン)とどっちが強いかな?

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