第53話 ようこそ合掌

「えっ、本当に手があるのですか?」


 そうは言っても、半信半疑だ。嘘だろう!


 男はカウンターの下から数枚の紙を取り出し、説明を始める。


「個人は無理だからサロン登録をすればいいのだ。そうすれば幼い子供でも見習として参加出来るぞ」


「なっ、なるほど―」


 しかし、餅は餅屋とはよく言った。さすがは専門家だ!


「なんと、そんな方法が!」とウルゾン。


「おじさん。あったまいー!」


 これパム、失礼だぞ!


「でちー!」


 ミル!わかって、ないだろう。


「これが登録用紙で登録手数料は金貨20枚だ」


 んっ?


「こちらが年会費の契約書。月に金貨1枚で年間12枚。月割りで、今月からなら金貨8枚で良いぞ! ハハハハ」


「ええっ?」


「こちらの名簿にはメンバー名を記入してくれ。見習を入れても4人だから、すぐに書き終わるな! メンバー1人につき、月ごとに銀貨1枚だ。年間一括払いなら銀貨11枚。お得で便利だぞ」


「はあ……」


「最後に、これだ!」


「ま、まだあるんですか?」


「なあに、これは最初に1回だけ。供託金と言ってな、何かあった時に使われる貯金みたいなものだ。まあ、戦争があった時の備えだな。金貨100枚だ」


 しめて金貨130枚ちょっと!


 なーる程。察してくれて、お帰りはあちらと優しく言ってくれているのだな。


 おじさん、したり顔。どうだ、どうだと言わんばかりだ、こんちくしょー!


「わかった!」


「そうか、わかってくれたか」


「金はないが……」これは有る。


 ゴトッ!


 アイテムボックスから魔石が1つ。但しドラゴン製だ。


「足りないか?」


 ゴトッ。まだか? ゴトッ。ゴトッ。ゴトッ。


「おい、おい、おいっ。ちょっと待ってくれ。なんだ、この大きな魔石は?」


 ゴトッ。これでどうだ。持ってけ泥ボー、だってんだ!


「わ、わかったから、ちょっと待て!」


「足りないか?」


「な、わけあるか!!」


     *     *


「この欄に名前を記入すれば良いですね!」


「ああ、そうだ。フン」


 渋いおじさんの仏頂面は、みっともないと思いますが……。


「それと、ここにサロン名とサロンマスター名を書いてくれ」


 セイント・カインとショキ!


「あれ? ショキ様、そこはカイーンでは?」


 ウルゾンの疑問はもっともだ。


「ああ、良いんだこれで。以前、俺の故郷の有名人が亡くなってな。思い出して、思わず伸ばしちまった。正式にはカインだ」


 合掌。


「さあ、これで君達は正式に我が傭兵ギルドの一員となった。おめでとう!」


 渋いおじさんがカウンター越しに立ち上がり、握手を求めてきた。ようこそヤマトか!


 下げた頭が少し薄いぞ!


「申し遅れた。私は、この傭兵ギルド副ギルドマスターのラムシーだ。本来ならギルドマスターが挨拶すべきところだが急な外出でな。申し訳ない! 私に代行させてくれ」


「いいえ、とんでもない。こちらこそ無理なお願いで迷惑をかけました」


 思わぬ大物にビックリ仰天! ラムシーさんね。何故か動物が好きそうな気がするな。


「ちょうど昼を回ったところ、そこの酒場は軽食も出せるのだ。少し話も聞きたい。私の奢りでどうだろうか?」


 俺が返事をする前に……。


 グー……。「えへっ」


 グギュー!「でちー」


 グルグルグー。おい、ウルゾン!


「決まった! と言うことかな?」


「……はい。宜しくお願いします」


     *     *


 俺、チョー恥ずかしいんですけど。

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