第49話 首を洗って
女は20
おっといかん、俺は何を観察しているのだ。さて男二人は……イケメンだ。ケッ!
たまたま何かの依頼で立ち寄った冒険者だろうか?
「街道をショートカットしようとしたら、厄介な事になったわね」
違うようです。
赤いミノタウロスがジロリと女を見ました。緊張が走る。
「ビオラ様、後ろに!」
すっと男二人が彼女の前に出て剣を構えます。女がリーダーか、はたまた護衛対象か?
後ろで女が杖を構えました。メイジのようですね。でも、そのブーツのヒールはやっぱり危ないと思うぞ。
「セロ、バス……」
女が男達に指示を出しているようです。
男達が女の左右に分かれ片脚ずつ太股をグイ、グイ。何と、おみ足を両手で抱えて体を持ち上げたではありませんか。う、うらやましい!
持ち上げられた女が杖を振るいます。戦闘開始か?!
「アイスジャベリン!」
化粧濃いめなのに案外、柔らかな声だ。鋭い氷の槍が虚空に現れた魔方陣から放たれた。氷の槍が飛んで来る。
こっちに!?
「「「ええっー?」」」
擦り付けだ。
あの女、俺達に気付いてやがった。氷の槍がミルに迫る!
慌ててヒカルちゃん(二代目)を抜刀。刀身に魔力を通して氷の槍を迎撃。シャウンと霧に変えやった!
キッ。女達の方を見ると女を持ち上げたまま、器用に後ろ向きのまま走り去っている。というか、何故か速い。くるり。さらに正面を向いてスピードアップ! 俺はその後ろ姿にしばし見とれてしまった。
ミノタウロスは何事もなかったように肉を喰っている。人間の事などは眼中にないようだ。
メラメラ。許すまじ
何より許せないのが、一番幼いミルを狙った事だ。ウルゾンならここまで腹が立たなかっただろう!
「メーキョーシスイ!」
念のために【自己アピール】から『隠蔽』を発動。僕は死にまっしぇん!
ゆっくり、ミノタウロスに近づきヒカルちゃん一閃!
ボトリ。
南無南無。済まぬ、もっと派手なバトルにしようかと思ったが、やることが出来た。
森の主は自分が死んだことも気づかなかっただろう。最後に美味い魔素を味わえた事に免じてゴメンチャ!
落ちた首と体をアイテムボックスに入れて、奴らが逃げた方角を見た。何処に行った?
発見。街道に向かって一直線だった。
* *
「ショキ様、いったい何をされたのですか。急に消えたと思ったら魔物の首が……」
「ショキ兄ちゃんすげー!」「すげー!」
「話は後だ。俺は、あいつらを追う」
女達の向かった方角を指差す。
「お前達は後から付いてこい。パムとミルはおじちゃんから離れるなよ!」
「はい!」「でち!」「……お、おじちゃん」
* *
「うっし、身体強化!」バッキョーン!
首を洗って待ってろよ、赤髪太股女!
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