第48話 茂みから

「そうですか。ウルソの爺さん、そんな事を言ってましたか……」


 そんな事までは言ってなかったが、少し……いや、かなり盛って話してやったぜ。バチ当たんないよね!


 ウルゾンにウルソさんに世話になった事も含めて俺の正体を明かした。


「だから、心配するな! このドラゴンスレイヤー・ショキ様がいる限り、お前達には傷一つ負わせない。わはははは……」


 ……あわわわわ。調子に乗って口が滑った。欲しい称号ではあるが、さすがにドラゴンスレイヤーは恥ずい。今度、口止めしておこう。


     *     *


 遠くで見たら小さな印象だったが近づくと大きな森だった。魔素はさほど濃くなさそうだ。森の縁まで来て『索敵』をかける。やはり奥に行くほど強い魔物がいる。つまり外側は雑魚ばかり。


「そうだウルゾン。お前もパーティーに追加しておこう。3人目のフレンド登録だ!」


 奴隷のままでもレベルアップ可能とは思ったがエクストラスキル【友達100人】の方が通話やメールが使えて便利だ。


 こいつには子供達の護衛や背後の守りを任せようと思う。剣術スキルを持っているので、馭者をしている時も護衛を兼務していたそうだ。


「盗賊を働いた俺を友達だなんて……」


 いや、単にスキルの名前なんだが。


「感激です、ショキのダンナ……いやショキ様。俺一生ショキ様に付いて行きます!」


 うん。すでに君は一生俺の奴隷決定だから!


     *     *


「ここらで良いだろう。みんな、ちょっと待っていてくれ」


 森の30メートルほど手前の木陰にメンバーを待たせて一人森のふちに行った。


 アイテムボックスからダンジョンウルフの死体を取り出し、腹を切り裂く。ダンジョンウルフと言っても、これは20層目の魔物だ。この辺りの魔物からすれば魔素タップリだろう。つまり美味い!


 メンバーの所に戻り、待つこと5分。


「来た来た。ゴブリンか!」


 まとまってグギャゲギャと3匹。脳天狙ってストーンパレット発射。


 パンパンパンと三連発。一匹外したパン!


「ショキ様、攻撃魔法まで使われるので?」


「まあな、子供がいるんだ。ノコノコ中に入るわけには、いかないだろう」


 距離30メートルなら俺のアイテムボックスの収納範囲だ。シュポンと回収して又、ウルゾンに驚かれた。


 数分ごとに雑魚モンスターが現れては、魔法で仕留めた。子ども達とウルゾンのレベルが少しずつ上がる。


 子供達には急激なレベルアップは身体に良くないと思うので奥に行く気は無かった。急激なレベルアップが身体に悪いというのは俺の勝手な考えだ。根拠は知らん。基本、俺は過保護なのだ!


 ウルゾンのレベルが3つ、子供達が8つ上がったところで魔物が出なくなった。周辺の雑魚モンスターを刈り尽くしたのだろうか?


 子供達もまだ平気な顔をしたので、もう1つ2つレベルアップさせて切り上げようかと思ったのだが……。


     *     *


 森の茂みから大きな影が現れた。雑魚モンスターが出なくなったわけが判りました。


 ミノタウロス。しかも赤いから変異種ですね。この森の主と思われます。


 子供達の目がキラキラしてます。おい、ウルゾン、お前もか。そんなに期待されたら、やらないわけいきません!


 子供達の体調も変わりないなら、仕留めましょう。


 小手調べにストーンパレット。パンパン!


 ヘッドショット2連発。頭、デカいから外しません。


 ポリポリ、キョロキョロ。ん、今なんか当たったか?


 ……って感じでミノタウロス、こちらに気付きません。視線がダンジョンウルフに釘付けです。


 うふふ。想定内です。上等じゃないですか!


 二代目ヒカルちゃんのサビにしちゃいます。木陰から鯉口を切りつつ一歩踏み出そうとした時……。


「こんな浅い場所でミノタウロスなんて珍しいわね!」


 踏み出した足を即座に元に戻したのは、決して聞こえたのが女の声だったわけではない!


 俺はウルゾンの横にスルスル移動してしゃがみ込むと、3人と目が合った。


     *     *


 なんか、ワクワクするねー! コクコク×3。

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