第47話 生徒会書記

 大きなキャラバンは足が遅い。


 馬車の荷の半分ほどをアイテムボックスに入れてやると、急にスピードが上がった。


「早ーい」「早いでち」


 古着の山に埋もれるようにして乗っていた子供達も顔を出して喜んでいる。


「凄まじい収納力だな!」


 呆れるように驚くジョーンズさん。


 確かに『アイテムボックスLv.5』は凄まじい! 実は中にアースドラゴンが2匹も入っているのだから。


 程なくしてキャラバンの最後尾に追いついた。ジョーンズさんとの別れの時だ。一緒に街までと誘われたが断った。ウルゾンがいるからね。


 ちょっとだけ切ないものがあったが、実は一番辛かったのはテイムした馬の接続を切る時だった。


「そうかテイムを切ると、こんなに辛いのか……。達者でな尾尻馬之助おじりうまのすけ(俺命名)」


「おーい。ショキのダンナー!」


 もう1匹、テイムした奴が追いついてきた。こんな奴でもテイムを切る時は辛いのかな?


 よし、お前は一生俺の奴隷だ!


「ほら、駄賃だ」


 何となく先ほど貰った大銅貨1枚を渡すと、えらく喜んでいる。お前、街道一の大盗賊になるんじゃなかったのか?


     *     *


 錬金術師になった後の獲得スキルは『調合Lv.1』だった。その時の状況を再現しよう。


 ピロリン。


 獲得されたスキル『調合Lv.1』はエクストラスキル『一人キャンプ』に統合されました。


 ……絶対、単独でスキルを取らせる気がないな!


     *     *


 俺はテイムしたウルゾンのステータスを閲覧出来る。


・名前/ウルゾン

・種族/人間

・年齢/27

・職業/馭者Lv.29

・生命力 30/30

・攻撃力 30/30

・防御力 30/30

・魔力 11/11


ーースキル


・操車Lv.3

・騎乗Lv.2

・調教Lv.2

・剣術Lv.1

・計算Lv.1

・生活魔法


 ……うーん、ウルゾン。君、なかなか優秀ではありませんか! 逆に優秀だから変に夢を持ったのかな?


「ウルゾン、お前に仕事を与える! 子ども達に文字と計算を手ほどきしろ。パム、ミル。ウルゾンに改めて挨拶だ。レーバじゃないぞ!」


「ウルゾンのおじちゃん、よろしくお願いします」ペコ。


「おじちゃん、よろしくでち!」ペコ。


「いや。俺は、まだ27なんで、おじさんはちょっと……」


「27は、おじさんだ!」


「おじさんです!」「でち!」


「へへーい」


 こうして新しいメンバーで改めて旅を始めた。急いでないので子供達は又ジグザグ進んでいる。良いけどね。


     *     *


「おい、ウルゾン! あの森分かるか?」


「ヘイ。どの森ですか?」


 かなり遠くに、さほど大きくはないがコンモリ盛り上がっている森を指した。


「あー、あれですね」


 そう言うとウルゾンは街道をキョロキョロと見渡し、街道脇の石碑を見つけた。


「やっぱりそうです。あれは魔物の森ですね。魔物の注意と、あの森の簡単な地図が書いてます。さすがダンナですね。この位置からあの森に気付くなんて!」


 褒めたって何も出ねぇぞ! と思ってもなんだか頬が緩んでしまう。


「魔物と言えばレベリング。よしっ! あの森に行って皆のレベルを上げよう」


「ちょっと待って下さいダンナ。こんな人数で、しかも子供達もいるのに魔物の森に行くなんて、正気の沙汰じゃありませんぜ! 考え直して下さい」


 俺は少し驚いた。


 最近は能天気な顔をして子供達に勉強を教えたり、狩りを手伝ったりしている。決して俺に逆らう事がなかったのに、顔色を変えて反対している。


 魔物の森に素人が入り込むのは死にに行く馬鹿な行為。これがこの世界の常識なのだろう。そう、ウルゾンの判断は正しい。しかし……。


「ふふん。俺を誰だと思っている」


 左手を腰に、両膝をやや落として重心を下に。右手を軽く握り、人差し指だけ伸ばす。指を額の中心からゆっくり天に伸ばす。


 もちろん、このポーズには何の意味もない!


 ドーン!!


 アイテムボックスからアースドラゴン・コゲ6号を真後ろに取り出した。これはわりと傷が少ないので魔石に変わる前に収納したやつだ。記念にね!


 ほぼ小山だろう。ウルゾンも子供達もションベンちびりそうな顔をしている。


「ダンナ……これは?!」「ショ、ショキ兄ちゃん……」「でちでちー?!」


 俺は高らかに宣言する!


「俺は、生徒会48の書記だ!」


 胸を張る俺にウルゾンが返した。


「……ダンナ、傭兵戦隊セイント・カイーンでは?」


     *     *


「……あっ!」

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