第46話 大銅貨1枚
そういえばウルソさん、孫が悪い友達と付き合い出して困ってるとか言ってたなぁ……。
ウルソさんには世話になった。しかし、こいつのやったことは許されない。許しちゃいけない事だと思う。でも、ウルソさんには世話になった。しかし、こいつの……無限ループだ。
ウルゾンは憑き物が落ちた様に脳天気に馬車を操ってる。巧いもんだ!
やっぱりこれがお前の転職だと思うぞ。俺はウルゾンの首に巻いている『聖縄』を少し緩めてやった。
それにしても、どうしよう。……ボーッとパカパカ左右に揺れる馬の尻を眺めていると右の尻にテイムの印が見えた。
……!
「おい、ウルゾン! ちょっと止まれ」
「ヘイ。何ですかダンナ?」
振り向くウルゾン。
「テイム!」
「おわっ?! えっ? あれっ、尻がムズい。あれっ、あれれっ?」
尻か!
「ウルゾン。立ち上がって尻を見せろ!」
「はいーっ↓?」
「尻を見せろと言ったんだ!」
「ははっ!」
ピョコンと立ち上がりズボンを降ろす。右の尻にテイムの印が出ている。右なのか?!
「これは、奴隷紋?!」
ウルゾンが自分の尻を覗いて叫んだ。人間だと奴隷紋と言うようだ。
「ショキのダンナは奴隷魔法まで使えるんでやすか?!」
「ま、まあな! これくらい『傭兵戦隊セイント・カイーン』ならば朝飯前なのさ!」
便利だな、このフレーズ。
ウルゾンをテイムした後、アイテムボックスの死体を全部出して服を脱がせた。もちろんウルゾンにさせたのだ。自分でするのはさすがに嫌だ。奴隷の仕事でしょ、こういうの。
死体の身ぐるみを剥いでいると、かなりの金が集まった。
「こいつら、いつも金が無いとか言ってたくせに!」
ロスの死体から一番多く出てきたのでウルゾンが落ち込んでいる。
お前、カモられていたんだな。
裸の死体は土魔法で穴を掘って埋めた。穴を掘るのは俺だが、入れるのはウルゾンだ。奴隷の仕事でしょ、こういうのも。
* *
馬車を走らせていると、古着屋のジョーンズ親子がトボトボ歩いているのが、ようやく見えた。
「ウルゾン。お前は後ろから隠れて付いてこい。見つかるなよ」
「ははっ。かしこまりました」
馭者を代わり、ジョーンズさんの後を追った。
「おーい。ジョーンズさーん!」
「なっ? ショキ、逃げて来られたのか?」
「いいえ。討伐して来たんですよ」
そう言って、ウルゾンに穫られていた金の入った皮袋を渡した。そしてアイテムボックスから馬に積んでいた分の古着を取り出すと更に驚かれた。
「アイテムボックス持ちか……。あんたの事は余り詮索しない方が良いようだ。しかし、これで破産は免れた。なんと礼を言ったらよいか。そうだ、全部は出せんが、この金を……」
「いえ、金は要りません。その代わり古着を幾つか戴けると助かります」
金は死体から剥ぎ取った分が、そこそこあったので当面さほど必要ない。もともと狩りをしながらの野宿旅だ。
「そんな物でいいなら幾らでも選んでくれ!」
護衛ついでにキャラバンに追いつくまで一緒に乗って行くことになった。
「ならば護衛料を払う!」
俺はキャラバンが通りかかった時に声を掛けてくれたのが嬉しかったので必要ないと何度も言ったのだが……。
「それでは俺の気が済まない。是非払わせてくれ!」
* *
ならばと、大銅貨1枚を戴くことにした。
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