第25話 笑顔
正午過ぎ、入り口に近付くに伴い人が居なくなる。冒険者達は日が昇る前にアタックするからだ。
そして俺たちは、現在ダンジョンの入口の前に居る。
俺達【生徒会48】のアタックは正午過ぎになった。午前中は簡単なレクチャーを受けていたのだ。
講師は昨夜の
「騙したのね!」
あっ?!
み、御手洗会長。後ろから蹴りを入れないで戴きたい。い、痛い! ……痛い……痛い……。
* *
そして俺たちは、現在ダンジョンの入口の前に居る。
「思ったより、大きいわね」
右手にハルバート。左手を腰にして、ついと形の良いアゴを持ち上げて御手洗会長が呟いた。(素敵です!)
石造りの門の前に立つと、遠方から見て思ったより大きく感じた。
「こちらにパーティー名と人数を記載して下さい」
事前の受付が義務付けられ、出る時には討伐実績を報告しなければならない。例外はない。
データを集計することで、スタンピードの徴候を発見するためだ。
ここ10年以上、小規模なスタンピードさえ起こっていないのは、このデータ収集のお陰だと認識されていた。
これも先輩勇者の指導だとか。優秀過ぎませんか?
* *
「魔素が濃くなった?!」
一歩ダンジョンの中に入ると空気が一変したのを感じた。
「タロー君も、それが分かるようになったか」
ウンウン。カイン小隊長が、感慨深げに肯いた。魔力値が高いほど、魔素を感じることが出来るのだ。そして下層に降りるほど濃度が高くなる。
以前俺は魔素を全く感じなかったが、レベルが上がるに連れて感じることが出来る様になった。
「さて低層階は、ほとんど魔物がいませんからな。しばらく我々が先導しますぞ」
低層に魔物がいないのは、すぐに冒険者に狩られるからだ。実際ここには冒険者が、うようよいる。
騎士団が先導している。これは予定通りの行動だ。このダンジョンはマップが充実していて、上層ならほとんどの階のマップが存在する。最短距離で下層に進む。
俺達は【罠スキル】を持つ騎士さんに、ダンジョンでの注意事項を教えてもらいながら進んだ。
* *
「この先の角にオークがいます」
現在6層。先行していた騎士からの報告があった。
ここから俺達のパーティー【生徒会48】の実戦訓練の開始となる。
この程度の魔物なら片桐先輩なら瞬殺なのだが、パーティーの連携のためにも必要な訓練だ。オーク3匹なら手頃だろう。
俺が先行。
通路に罠が無いか、敵がいないかと索敵する。今回はオークがいるのは、分かっている。
しかし行く、もう一度行く、俺が先行で行くのだ!
音を立てずに近づきオークを確認。3匹とも武器を所持。こちらには気付いている様子はない。周辺に、他の魔物もいない。俺はパーティーに戻り報告する。出来る男っぽく。
御手洗会長が指示を出す。前衛の片桐先輩に先頭を代わる。俺は御手洗会長の護衛に着いた。
そう。職業未定でもレベル25の俺は、戦力なのだ!
* *
片桐先輩がスルスルと近づき、まず1匹を切り捨てた。そこで残りのオークが気づいたが、返す
「タローちゃん。残り1匹は、貴方が仕留めなさい」
「了解!」ビシッ!
御手洗会長の指示で片桐先輩が下がり、俺が先頭に。そして戦闘!
* *
俺のスタイルは、スピード重視。革鎧の軽装で両手剣持ちだ。
この両手剣、カイン小隊長の若い時の愛剣で何度も研ぎに出して肉厚が痩せているが、それが小柄な俺にとって、ちょうど良い重さと長さになっていた。そして、このヒカルちゃんにはレベル1ながら【不壊】付与まで付いているのだ!
えっ? ヒカルちゃんって言いました? なっ、何の事ですか?
* *
俺に気付いたオークが手にした剣を振り上げる。遅い。オークに技術はない。力だけだ。
しかし、敢えて力勝負。俺の力がオークに通用するか? 右手から回り込んで、走る勢いを乗せて下からぁー……振りぃぃぃ上げる!!
グァキィィン。思ったより鈍い音。力負けは無い!
良かったぁ~!
それが気持ちの余裕になる。そう、力がなきゃ技なんて使えない!
あれ。俺、笑ってんのかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます