第24話 ダンジョン前にて

 ダンジョン【ダラコス】の入口は、冒険者の街ダラコスに隣接している。


 名前で分かるとおり、この街はダンジョンのお陰で発展した街だ。そして街の城壁は、このダンジョンに対して存在している。


 ダンジョンの入口は、かなりの大きさがあったが、スタンピードに備えて頑丈な石垣で門を造り狭くしている。その門には鋼鉄の引き扉を設置。銃眼のある扉からダンジョン内を攻撃出来るようになっている。


 今、俺たちが立っている場所はプールと呼ばれている。門を突破されると、この広い楕円形の闘技場のような場所で迎え撃つのだ。


 入り口に向かって幾重にも石造りの大きく厚い壁が設置されている。廻りの壁も厚く高い。上からの攻撃が可能だ。その設備一つ一つに意味があり、考え尽くされた物ばかりなのだ。


     *     *


 ここには無数の露店がある。


 この場所の性質上、可動式の露天しか許可されない。しかし冒険者にとって、ダンジョン前に店があるのは多大なメリットがあるため、露天までなら許可されているのだ。


 しかし一度ひとたびスタンピードが発生したら、安全は確保されない。完全な自己責任となるのだ。商人達はそういう財産の消失や死の危険を覚悟しなければならない。


 露天は管理している冒険者キルドに所場代さえ払えば、誰でも出店できた。


     *     *


 誰でも露天、開けるらしいんですよ!


 お陰で雰囲気、縁日です。


 わいわい、ガヤガヤ、ざわざわ。


 御手洗会長、俺の『綿あめ』横からむしって舐めるのやめてください。


「もー。自分の『リンゴ飴』まだ残ってるじゃありませんか!」


「ケチくさいのね。減るものじゃ無し」


 減ります!


「片桐先輩。いい加減に諦めて『焼きイカ』食べたらどうですか! ほら、タレが垂れるー。それは、イカ! 焼きイカって書いてあるんだからイカですって」


 本当は何の肉か気になるらしいが、本人が食べたいって言うから騎士が気を利かせて買ってくれたのだ。


「でもタロー君。のぼりに(ふう)って書いてあったんだよ!」


「(風)ってあってもイカ! ほら、子供でも食べてるでしょ!」


 子供もいます。しかも大勢。家族連れも少なくないですね。楽しいもん雰囲気! ホントに縁日だ、こりゃ。


「片桐、私に寄越しなさい。食べてあげるわ」


「い、嫌です。食べます! あっ、でも一口なら……。えへへ」


     *     *


 異世界と言えばダンジョン。


 その代名詞の前に俺たち聖女パーティー【生徒会48】は今、立っております。


「えっ、これがお昼ご飯の代わりだったの? 片桐、やっぱりイカ寄越しなさい」


 勇者の上前をはねる聖女でした。

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