第23話 御言葉
カウンターから、わざとらしく酒瓶を持った酔っぱらい
実はこの悪役、ギルマスです。スミマセン変な事を、お願いして。しかも、この人だけノーギャラだ。
キターって顔した御手洗会長を「真打ちは後から」と牽制しつつ、片桐先輩に台詞を促した。
実際、もし御手洗会長が何も知らずに本気で暴れると危険なのです。死人が出ます。もう2人は、そこまで強くなってます。
「御手洗会長に汚い手で触るな(棒)」
そ、そこは、聖女ミタライだったでしょ! まだ、触ってもないし。
「なんだ、この若造。邪魔しやがると、ぶちのめすぞ!(棒)」
「笑止! この生徒会副会長の片桐を? 面白い。できるなら、やってみろ!(棒)」
そこも、勇者カタギリだろ! 生徒会副会長なんて言って誰が分かる?
「き、貴様みたいな若造が勇者だと……信じられるか!(棒)」
……台本に戻りました。相手の台詞なんて聞いて無いのですね。なる程、よく分かりました。
御手洗会長は、まだ座ってて下さい! 出番は用意してますから。
「えーと、……ならば試してみるがいい(棒)」
なーんで、この台詞でペーパー盗み見るかな?
と、そこに身なりの良い若者が二人の間に入ります。
「これは聖女ミタライ様に勇者カタギリ殿、それから従者のタロー君ではありませんか!このような場所でお目にかかるとは」
実はここから、悪役と片桐先輩の
ってお前、従者のタロー君なんて台詞なかっただろう。勝手にアドリブ挿むんじゃねー!でも台詞は流暢?!
「てめぇー。えーと……フジャラモジャラ!」
目で合図を送ります。
* *
小芝居編終了。ここからバトルです。パチパチ。
ギルマス、手に持った酒瓶で分隊長ゼクスに殴り掛かりました。かなりの勢いです。先程と違いイキイキしてます。辛かったんでしょうか? 台詞。
んっ? 酒瓶で殴りましたね! アドリブですか? 最初はパンチでしたよね?!
ゼクス、左腕でガード! しっかり対応できてます。さすが俺の先生。
グワッシャーン。
腕、大丈夫か? それはそうと、その壊れた酒瓶のお代、だれ持ちだ?
ゼクスは、ガードの腕を引き手に反動をつけて渾身のリバーブロォー!!
ドォグッワ!! って、低音だけど腹に響くような音がしました。痛そうー。
ギルマスの身体二つ折り、軸が30センチずれます。凄い威力です。手加減しているようには全く見えません。
しかしギルマス、ノーダメージ!
逆襲。二つ折りの身体そのままに低くタックル。これをゼクス読んでいたか踏ん張る。というか迫真、
ギルマスの顔が低い位置にきてます。ゼクスこれを狙って膝を飛ばすが……入りません! ギルマス、ガード。これは、もはや酔っぱらいの動きじゃない!
さらに攻防、速さ2倍速。実況が辛い!
ゼクス、後ろに回り込んだ。
すかさずギルマス、後方に肘打ち一閃。
ゼクス、ガートしない。かわりに腰を落としてこれを躱す。まるで重力消失!
そこから右手で足を刈った!
たまらずギルマス、ドーッと背中から落ちた!
ゼクスがマウントポジ。両足の使い方が上手い! ギルマスの両手を封じた。
胸ぐらを掴み、懐から取り出したナイフを首に押し付けた。
ギルマスが殴りかかってから、ここまで10秒未満。ギャラリーに
* *
店内のどこかで、誰かの息一つ。
御手洗会長でさえ、今の攻防に目が離せなかったようで両手は胸の前。乙女か!
チクショー、格好いいぞゼクス! ヒューヒュー。
「ちっ!」片桐先輩の舌打ちです。
しょうがないでしょう。出来なかったんだから。……これは無理か。
* *
「ここで聖女ミタライより、一言
「はっ、
そう、あなたです! お待たせしました。やっとあなたの出番です。
今、この店内にいる全ての人間が聖女ミタライの
この場に相応しい、感動的な一言を!
さあ。
聖女ミタライ、両の手を胸の前に置いたまま、目を伏せた。
一言。
* *
「
違うと思いまぁーす!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます