第20話 告白

 アズグール大森林監視砦の主な構成員は常駐の兵隊さん達です。ほとんど平民とのことです。中には元冒険者さんもいるそうです。


 もう1泊して王都に帰る事になってます。昨晩は、一緒に来た騎士さん達と食事を摂ったのですが、せっかくなので今日は兵隊さん達の食堂で食べました。


 最初は勇者一行である俺の事に緊張してましたが、馭者のウルソさんが間に入ってくれたので、いろいろ話を聞けました。


 だんだん打ち解けて、昨日のコボルトの事を話したら、大笑いされました! 最後は子供扱いです。子供だから良いんですけど。


 途中で気が付いたのですけど、食堂の入口の陰で御手洗会長が、こちらを覗いてます。一緒に来たかったみたいなのですが、騎士さん達に止められました。


 部屋に戻ろうとしたら御手洗会長に捉まって、根掘り葉掘り聞かれました。コメントは、こちらです。


「これといった情報は、無いのね」


     *     *


 一人になりました。やることは一つ。


「よく考えたら、選択じゃなくて自分で職業を記載だから、何でもオーケーじゃね?」


 やってみましょう。ピロリン!


・職業/未定Lv.16─┐

  【神】は登録できませんよ!


     *     *


 うん、やっぱり駄目か。最初からこれは想定内だ。


 だけど、いるな神様! このシンプルな一文で確信してしまった。


 それはそうと、この音は変えられないものか?


 ビーロビーロビーロ。変えられない様です。わかりました。お気に入りなんですね!


 ドンドンいってみよう。これも無理だろうな?


 ウウーン!ピロリン。


・名前/タロー ヤマダ

・種族/魔族

・年齢/16

・職業/未定Lv.16─┐

    【魔王】に決定しますか?

・生命力 6/33271

・攻撃力 8/44362

・防御力 5/27726

・魔力 3/16635


ーースキル


・闇魔法Lv.1(new)

・四属性魔法Lv.1(new)

・魔物召喚Lv.1(new)

・生活魔法


ーーエクストラスキル


・アイテムボックスLv.1

・魔剣創造(new)

・隷属魔眼(new)

・一人カラオケ(new)


     *     *


「出た。魔王、有りなんですか?」


 なんか種族が魔族に変わってるし。ステータス値がハンパない。ここまできたら、勇者も目じゃありません!


 でも、よく考えよう。


 ステータスの高さに釣られて下手に魔王になっちゃったら……角が伸びるわ、牙が生えるわ、翼が現れるわ、あげくに身長5メートルとか……。


 ないな、これは無い。しかし気になるのが一番下!


 一人カラオケって……魔王ってボッチ?


     *     *


 どこまで出来るのか、思いつくままやってみました。


 ウウーン。ピロリン。


「うーん。これも行けるか!ドラゴン」


 もう何でも有りだな。ブレスとか気持ち良さそうだな。これ有りなら、もう何だってオーケーだよな。デカすぎるからやんないけど……。


     *     *


 ウウーン。ピロリン。


「えっ?! 地球産も使用可!」


 何このステータス、魔王もドラゴンも蟻だわ、虫けらだ。


 でもこれ、歩く産業廃棄物みたいだからな。放射能まき散らしちゃうから存在自体、魔王以上の災厄だ。尻尾の一振りで小さな町なら全滅だぞ。著作権の問題もあるし、これも封印。しかし、これがオーケーなんだから神様ってもっと凄いんだろうな。尊敬しちゃうよ!


     *     *


 ウウーン。ピロリン。


「種族が改造人間って意味わからんわ!」


 しかし歴代で何十人もいるから、どれにするか迷っちゃう! 3人しか知らんけど。


 えと、次は……。ウウーン。ピロリン。ウウーン。ピロリン。ピロリン。ピロリンリンリン……。


     *     *


「タロー君、寝不足かい?」


 帰りの馬車の中で、ウツラウツラしていたら片桐先輩が声を掛けてくれた。


「はい、ちょっとゲームを……」


「タロー君、ゲーム機を持って来てるの? あっ、スマホか! でも電池が切れたら使えなくなるよね。充電器あるなら貸してくれないかい?」


「いや、その……遊んだんじゃなくて、リバーシとかできないかと」


「ハハハ。たぶんそれ在るよ。ほらこの馬車だってサスペンション付きだよ。車輪にもタイヤが着いてるしね!」


 本当に先輩勇者は優秀だ。


 結局、一晩遊んで……いや、検証してもやっぱり決める事ができなかった。俺のこの能力の幅の広さが、どの職業が最適なのかと判断を鈍らせる……いや、正直に言おう。


 ぶっちゃけ、愉しすぎるンだぁー!! と感じたのを告白しよう。

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