第19話 砦とソロバン

 訓練終了後、全員のステータス測定が行われた。


 皆、自分のステータスくらい既に確認済みだろうが王国の記録のためだ。


 水晶が用意され、まず御手洗会長が掌を乗せた。


     *     *


・名前/セイコ ミタライ

・種族/人間

・年齢/17

・職業/聖女Lv.2(1→2)

・生命力 200/400(200→400)

・攻撃力 100/200(100→200)

・防御力 80/160(80→160)

・魔力 280/560(280→560)


     *     *


「レベルが一つ上がったわ。数値は倍ね」


 倍?! 100パーセントアップかよ……! 俺、絶句。


 続いて片桐先輩。


    *     *


・名前/ユウヤ カタギリ

・種族/人間

・年齢/17

・職業/勇者Lv.2(1→2)

・生命力 400/800(400→800)

・攻撃力 800/1600(800→1600)

・防御力 200/400(200→400)

・魔力 350/700(350→700)


    *     *


「僕も一つ上がってるね。ちょうど倍だね」


 この人も! 勇者、本当にハンパないな!


 最後に俺だ。ため息しか出ない。小さな抵抗、小指でペト。


    *     *


・名前/タロー ヤマダ

・種族/人間

・年齢/16

・職業/未定Lv.16(1→16)

・生命力 6/33(6→33)

・攻撃力 8/44(8→44)

・防御力 5/27(5→27)

・魔力 3/16(3→16)


    *     *


「凄いじゃない、タローちゃん。レベルが15も! ……上がって? ……いるわ……ね」


 自分の事のように喜んでくれる御手洗会長だったが、数値を見るとだんだん無言になってしまった。15も上がって、これかと顔に出ている。


 なんか気まずいんですけど、俺のせいですかね?


「あー、よろしいですか聖女様。タロー殿のステータスの事ですが……」


「な、何かしらカイン小隊長?」


 カイン小隊長が言うには、レベルとステータス値の上昇率が一般人より、高いかもしれないそうだ。


「ちょっと調べてもらいましょう」


     *     *


 今、小太りな神官さんと神官長さんが経験値判定高速計算機(汎用)なるものを用いてパチパチやって計算している。


 それソロバンって教わりませんでした? 先輩勇者さんに!


 小太り神官のソロバン捌きの、速いこと速いこと。高速ってあんたの指の事だよ。


     *     *


「レベルの上昇率は、倒した魔物を鑑定していないので正確には分かりませんが一般的にみても、かなり高いかと思われます」


 汗っかきな小太りの神官さんの方が、早口で報告した。


「そしてステータス値です。計算の結果、上昇率何と11.3パーセント! これは驚異的な数値です。少なくとも私は今まで、このような上昇率を見たことも聞いたこともありません」


 興奮気味に熱く語った後、神官長と「論文にまとめなければ!」などと言いながら、バタバタと早足で戻って行った。


「やはり、そうですか」


 カイン小隊長がウンウンと嬉しそうに言ってくれた。


 一般的にはレベルが1つ上がると個人差があっても、せいぜい2~3パーセント。最高でも5パーセントくらいだそうだ。ショボいな異世界!


「これは、聖女様のよく使われるチートというやつですぞ」


 カイン隊長が俺に下手くそなウインクをしてくれた。その気持ちだけ受け取っておこう!


 御手洗会長が微妙な表情ながら、ホッとしたように喜んでくれた。


 片桐先輩も「やったなぁ」等とバンバン背中を叩いてくる。グスン。皆、俺のことを心配してくれてたんだな……。


 俺はちゃんと空気を読める男なのさ!


「わーい、11.3パーセントだ! すっごく細かいけど俺もチートだぁーい(棒)」


     *     *


 何が「この驚異的な上昇率だよ!」御手洗会長達は100パーセントなんですけどね! ソロバン要らんし!!

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