第17話 砦と縄

 程なくして討伐組と聖女御手洗、並びにその従者ぶんたいちょうが戻ってきた。


「すまなかった。私が守ると言っておきながら……」


「いえ、僕がここを離れなければ……」


 御手洗会長と恩人、片桐先輩が謝罪やら反省やらを口にしている。でも俺としては助けてくれた事に感謝しこそすれ、恨む気など全くない。絶対、強くなってやる! そう思うだけだった。


     *     *


 アズグール大森林監視砦は大森林からは、かなり離れた場所にある。広範囲を見張るためには、その方が都合が良いらしい。


 予定に無かったコボルト討伐もあり、到着は正午をかなり過ぎていたため、魔物の実践訓練は翌日からに変更された。


 御手洗会長達は、貴族専用の個室を用意されたが、俺は従者用の部屋だった。しかし4人部屋を1人で使うので、かなり広い。カイン隊長が「貴族用より広いぞ」と笑って教えてもくれた。あまり気を使ってくれなくてもいいのだが。


 広いベッドの端に座ってステータスを開く。


 強く成るためには、やはり職業を変更できなければ!


     *     *


・名前/タロー ヤマダ

・種族/人間

・年齢/16

・職業/未定Lv.1

・生命力 6/6

・攻撃力 8/8

・防御力 5/5

・魔力 3/3


ーースキル


・生活魔法


ーーエクストラスキル


・アイテムボックスLv.1


    *     *


 職業未定をタップした。ピロリン。


     *     *

・職業/未定Lv.1─┐

  ご自分で記載してください

     *     *


「ーん。どうすれば良いのだろう?」


 とりあえず、触ってみた。反応なし。


 強く念じてみた。ピロリン。おお、反応した!


     *     *

・名前/タロー ヤマダ

・種族/人間

・年齢/16

・職業/未定Lv.1─┐

    【勇者】に決定しますか?

・生命力 6/150

・攻撃力 8/200

・防御力 5/125

・魔力 3/75


ーースキル


・光魔法Lv.1(new)

・土魔法Lv.1(new)

・生活魔法


ーーエクストラスキル


・アイテムボックスLv.1

・聖縄(new)

     *     *


 ?! って、成れんのかい勇者! 良かった。思ったより簡単、何とかなりそう異世界ライフ!


「フム、ステータス値が、かなり上がってる。でも片桐先輩よりだいぶ下だな、今より良い数値ではあるけど」


 スキルは光魔法と土魔法か!


 しかしツッコミ処は、エクストラスキル【聖縄せいじょう】。


 なに、縄って! ロープ? これで、どう闘えと。


 まあ、考えてみましょう。シミュレーションは得意なんだ!


 テーブルセットのある窓際に移動し椅子に腰掛ける。手を膝の上に、掌を上に向け軽く握る。半眼、視線は定めない。鼻から吸って口から吐く。腹式呼吸、瞑想。


 俺の内なるコスモで様々な戦いが繰り広げられた…という事にしておいてくれ!


「うっ。くっ。くそっ。こ、これは……。これしきの事。ば、馬鹿なっ。ハァハァ……」


 ハァハァン。御手洗会長そんなに、きつく締めちゃイヤ!


 俺は自身が健全な高校生だということを、この職業が改めて教えてくれたことに感謝し【勇者】に決定するのは、しばし封印することにした。


 も、妄想言うな!


     *     *


 一番の問題は職業を決定したら変更出来ないのか? ということだ。よく考える必要がある。もう少し職業未定ままでいる事にする。


 まっ、それはさておき色々やってみました!


 賢者に魔法使い、聖騎士やら竜騎士とか! ヘへ、いるよね竜。


 鍛冶士に錬金術師、戦士に武闘家。テーマーに召喚士。僧侶から盗賊!


 でも、ステータスは、全て下位互換の勇者より下でした。腐っても勇者か! いや腐ってないけど。

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