第15話 平原で実況
先頭にカイン隊長。その後方に分隊の騎士10名が何やら腰だめに構えています。
そこから更に後方に、聖女御手洗が腕組み仁王立ち。ポニーテールにした黒髪が風に揺れています。
自身の右横には地に突き立てた薙刀ではなくハルバート。(薙刀じゃないんかーい)わざわざ取り寄せた薙刀があるんですけど、こちらの方が手に馴染むとか。
御手洗会長のやや斜め後方に護衛として分隊長がいますが、見た感じ完全に従者です。
しかも片膝なんかついたりして、自分で演出してるっぽいですぞ!
「チッ!」俺の隣にいる片桐先輩の舌打ちです。
いずれにしても、後方支援の回復係の
これは、そう。総大将です! 素敵です。
* *
コボルト共が騎士団を警戒して騒ぎ始めました。ワンワン、キャンキャン、ウーウー
カイン隊長の抜剣一振り。
隊員達が魔法を放ちました。全員一斉のファイアボール。迫力です!
そこからの全員抜剣! カイン隊長を先頭にコボルトの群れに突入! 流れるような熟練した一連動作。誰が弱いなどと言った、近衛騎士団! 俺か。済みません。なんか馬鹿にしてました。
あれっ? でもファイアボールが当たりません。コボルト、凄く動きが早いです。ピョンピョン跳ぶように動いてます。
それに引き換え騎士団、ドスドスしてます。遅いです! 守り重視のガチガチフルプレートですからね。コボルトなんだから軽装で行けば良かったのに。今更ですが相性最悪じゃないですかね、これ!
コボルトの攻撃は重装の騎士団に通りませんが、騎士団の攻撃だって当たりません。えーぇ、見事なほど当たりません。翻弄? そんな状況です。何か喜劇を見てる様で、ほのぼのしますなぁ。やっぱり駄目か近衛騎士団!
もちろん俺の顔の表情は、引きつって心配顔です。コボルト相手とはいえ、本物の戦闘時に不謹慎な態度は取れませんよ。
あっ! 今、いい風が……。
* *
1匹がジッと御手洗会長を見つめています。
騎士と比べて見るからに軽装ですからね。手頃な獲物と視たのか、じりじり近づいています。急に駆け出しました! つられて2匹が後を追います。不味くないですか?
しかし御手洗会長、慌てません。未だ一歩も動かず仁王立ち。スッと自然に右手を横に伸ばす。
従……分隊長が地面に立てたハルバートを抜いて、両手で会長に差し出しました。もちろん片膝ついてます。もう従者でたくさんだろ、こいつ!
「ギリッ!」片桐先輩の奥歯の音です。
* *
コボルトが迫って来たので護衛の
従者は驚いた様子ですが従う様です。従者決定おめでとう。
ハルバートって先が重いんです。何で、そんな持ち方できるかなぁ? そのまま頭上で回します。片手でくるりくるーり。
そして一歩、脚を踏み……。
消えました。ここ、かなり離れているので全体を見渡せるはずなのに消えたとしか思えません。
先頭のコボルトと、すれ違ったんだと思います。だって既に向かって来たコボルト3匹の後方に居るんだもの、御手洗会長。
振り向き様にハルバートを手首だけでクルッ。血糊を飛ばしました。ヒュンと音が聞こえそうです。聞こえませんけど。
先頭のコボルトの首が落ちました。ボトッと音が聞こえそうです。聞こえませんけど。
たぶん、ドヤって顔してますよ。見えませんけど。
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