第13話
「むぅ。…お兄、おはよ」
「う、うん、おはよ」
昨日泣き疲れてそのまま美亜は寝てしまい、次の日の朝になる。
とりあえず席に座って、美亜が作ってくれた朝ごはんを食べる。
「…」
「……」
二人の間に会話と言う会話はない。いつもならしょうもない話をして笑いあっているというのに。
「……お兄」
「何でしょうか」
「私、決めた」
「………何を?」
「今日、学校行く」
「そうか。…。…え、マジ!?」
行ってくれるのは嬉しいんだけれど…
「無理しなくていいよ?」
「無理するの、そこまでしてでもしたいことがあるの」
かなり興奮気味に前のめりに返事をする美亜にそれ以上何も言えなくなってしまう。
それからは、少しぎこちなさはあったがいつもの調子を取り戻しつつ、朝ごはんを食べ、久しぶりに妹が制服に袖を通している。そして振り返りながら、頬に赤みを増しながら「可愛い…?」と言われたのだから、僕としてはもう百二十点を上げたくなるくらいだ。
そしてついに、玄関を開ける。
後ろからおっかなびっくり僕の制服の裾を引っ張りながら付いてくる。まだ夏でもないのに、その額には汗が少しだけ出ている。
「止めとく?」
「大丈夫、外に出ること自体は怖くないから」
そう、美亜は外に出ること自体は怖くない。イラストレーターのため某夏の祭典やら冬の祭典にも出ているし、仕事関係で外に出ることはあるけれど、学校に行くとなると話が違う。
妹は上手く対人関係が構築できない。小さい頃、母さんと父さんを早くに亡くしたためかは分からないけれど。だからと言って全然話せないわけではない。
だけど、何故学校に行きたくないかと言うと………一重に視線だ。
母さんたちを亡くしたショックで美亜は小学校にしばらく行けず、二か月くらい行っていなかった。そして、美亜が久しぶりに学校に行くと、物珍しい、まるで動物園の動物を見るような視線でこちらを見られ、それに元仲が良かった子たちもよそよそしくて、話にもついて行けず、孤立していった。
「ほんとに、大丈夫なのか?」
僕に聞かれ、一度、下を向く。
やっぱり、行かせない方がいいかな。そんな事を一瞬でも考えた僕を殴り飛ばしたい。
美亜は、しっかり前を向いて、家から出た。……僕の手をしっかり握って先導するように。
「大丈夫、私はお兄ちゃんのためなら何でもできる、可愛い妹なんだよ?任せてよ」
「そっか、そうだな、流石僕の妹だ」
頭を撫でるとくすぐったそうに笑う。今は、妹離れとかはおいて置こう。妹の進歩を褒められない兄なんて、それは僕ではない。
それにしても、どうして学校になんて無理やりにでも行こうと思ったんだ。…?まさか、僕にも彼女ができるかもしれないから迷惑を掛けたくないという物から来る自立心的なものが生まれたのかな。
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