第12話 嫌ぁー、私のー!
「やー!お兄は私のなのぉ――!!」
いやいやと首を振って抵抗してくる。
なんで、こうなっちゃったのかなぁ。もう諦めようかな、妹離れ。
遡ることかなり前……………
いつも通り、学校に行き下駄箱を開けたとき、見慣れないものが置いてあった。
ん?なにこれ?
取ってみると、手紙だった。
「ひゅーっ、モテるね、愁」
「分からないよ、僕宛の殺害予告かもしれない」
「んな訳ないだろう」
手紙の内容を見ると沙紀の言った通りいわゆるラブレターと言うやつだ。
今時、古風だなと思いつつも僕のLIME持っている女子なんて白雪さんと美亜とクラスの女子のほんの数人くらい。だから必然的にラブレターか直接するしかないのかもしれない。
「どうするの?告白受けるの?」
「……受ける気はないかな」
バイトが忙しいし、勉強もあるし……な。
「でも、受けた方がいいんじゃないの?」
「なんで?」
「妹離れするのには絶好の機会じゃないの?」
確かに。でもそれは、告白してくれた人に申し訳ないし、そんな理由で付き合ったらいずれ絶対に分かれることになると思うし。
だけど、妹離れもしなきゃという使命感みたいなものもあるのは事実だ。
最近は段々と薄れてきているけれど。
「じゃあさ、告白は受けないで匂わせる発言だけして離れるようにすれば?」
「具体的には?」
「今日、ラブレターもらってさ、どうしようかなって思ってて…みたいな」
なるほどね。
授業が終わり、放課後になる。手紙には屋上と書いてあったので行き、そこに僕の一つ年下の子が緊張した面持ちでこちらを見ていて、あの子だとすぐにわかった。
そして、ここからがつらい。
僕は両親のおかげで比較的かっこいい部類の顔に生まれた。そのおかげか、顏以外に取り柄のない僕でも好きになってくれる人はいた。
それでも僕は、付き合う事はなかった。小さい頃に両親を亡くし、美亜の面倒を見たり、叔父さんや叔母さんの家に住まわせてもらってたからいち早く自立するために勉強もかなりしていたからだ。
それと、純粋にその人が好きだという気持ちが沸かなかった。それが主な原因。
「あの、愁先輩。私、その………あの、えっと、好きです。付き合ってください」
「えっと、その…ごめん」
頭を下げたその少女に、僕も一緒になって頭を下げる。
「ぃ………いやです。イヤです」
「…ん?へ?」
その少女は僕との距離を詰めて顏近くまで来る。いや、近い、近い、近いよ!?
「あの…もうちょっと、考えてくれませんか?私、諦めたくありません。それに……私を良いようにしてもかまいませんよ?」
「ん、え!?」
えっと、それって…もしかして………僕の頭でよからぬ妄想が爆発して頭がピンク一色になる。
「え、あ!?ち、違います。違いますよ?愁先輩のエッチ」
「ご、ごめん」
「わたしが言いたかったのは私を良いように使ってくれても構いません。例えば、義理の彼女になるとか」
「えっと、どういう事?」
「私、聞いたんです。愁先輩が妹離れをするのに悪戦苦闘していると」
「うっ…それって、誰から?」
「長い髪の、女の子?なのかな?いや、男の子だったような気がする」
沙紀だな。あいつ、また余計な事と言うかなんというか。ほんとに。……あいつなりのアシストなんだろうけれど。
「君、名前は?」
「
「赤羽美羽ちゃんね、えっとさ…その告白の返事もうちょっと待ってくれない?」
「え!?考えてくれるんですか!」
義理の彼女になったら妹離れに一歩前進どころか百歩ぐらい前進なるけれど、僕の中で何かが納得いかなかった。
赤羽さんとは、校門で別れ、家に帰り美亜にその事を一部内容を伏せて話していくと、段々と顔が曇っていき、次第には目から段々と雨が降り始め、もう今では大豪雨だ。
「やぁーーーー!!お兄は私の、私のなのーーー!!」
胸に額を擦りつけ、自分のだと主張するようにギュッと抱きしめる。
そして今に至るわけだ。
どうすればいいんだろう、これから。
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