第10話 っく、卑怯だよ、お兄。

「あの…おはようございます」

「おはよ、美亜」


 さっきの事があったからか、少し恥ずかしそうにしている美亜。


 かく言う僕も少し恥ずかしい。


「えっと、その、えへへ」

「っ…。はぁ、ほら、朝ごはん食べよっか。美亜」


 不意にはにかみ可愛い仕草で微笑む妹に少しドキッとしてしまったのを隠すように、急かす。


 美亜が起きてくる前に適当に作った朝ごはんを二人で食べる。


「……あ、あのさ、お兄。今日って暇かな?ちょっとだけ手伝って欲しいことがあるんだけれど」

「え、ああ、いいよ。何すればいいの?」

「えっとね、ちょっと、モデルを頼みたいなって」

「なるほど、分かった。いいよ」


 たまに頼まれるからな。それくらいなら別にいいし、美亜のためになるなら苦ではない。



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「いいよぉ、いいよぉ、その調子、そのままストップ。写真撮るからね」


 写真を撮り、確認する。


 うへへ、お兄ちゃんの写真コレクションが増えた…ではなくて、いや、それもあるけれど、OKかな。


 時々こうやってお兄にモデルを頼む。


 何が私の描く男の人の絵はひょろひょろじゃない?だよ。確かに男の子キャラ書くのは女の子キャラ描くよりは下手だけれどさぁ。


「適当に書いちゃうからあとちょっと粘って」


 まぁ、今はそんな事よりお兄救出大作戦だ。流石にずっとモデルさせるのも悪いし。


 ささっと書き、10分くらいで終える。


 あとで確認するようと観賞用に写真も撮ったけれど、生はやっぱりなんだろう質感が違うね。

 

「ありがと、もう大丈夫」

「いいよ、全然」


 そして、ここからが本番だ。


「お兄はとっても頑張りました」

「えっと、はい」


 首を傾げるお兄も可愛いくてかっこいい。


「だから、私はお兄にご褒美を上げたいのです。お兄の望みをなんでも叶えてあげよう。ただし、私が満足のいくものではないといけないという条件付きです」

「えぇ、何それ。別にいいよ、要らないよ」

「ふふっ。そう言うと思ったよ。お兄ならね。でもダメです。ちゃんと言わないなら明日からお兄が一人で寝られることはないと思った方がいいよ」

「っく、美亜が一緒にベットにいるなんて、僕を寝かせる気がないじゃないか」

「やだ、お兄のエッチ」

「お前が構って、構って、うるさいからずっと構っていたら毎回朝の五時なんだよ」

「てへへ」


 だって、お兄と一緒のお布団入っているの気持ちいいんだもん。


「ちなみにプリンはダメだよ?まだ冷蔵庫に残っているから」

「うーん。プリンがダメなら、もうないじゃん」

「私を食いしん坊キャラにしないでよ」


 私をなんだと思っているのか、このお兄は。


「別に物じゃなくてもいいんだよ、例えば、その…朝言ってくれた言葉、とかさ」



 よっし、退路を断った。後は言葉を引き出すだけ。『お兄、愛してるでも』『好きだよ』でも何でもいい。そう言う言葉を私が言える状況ができるまで絶対に終わらないゲームの始まり。ラウンドワン、ファイト。



 お兄は、うんうんと唸っている。妹離れをしなくちゃいけないという呪縛があるんだろう。


 そんな呪縛時は解き放ってあげる。ふふっ。させてあげるものですか、お兄に妹離れなんて。


「よし。行くぞ、美亜」

「ん?え!?」


 な、なんか勘違いしてない?お兄


 お兄は決心がついた面持ちで私の方に近づいてくる。


 え、ちょ、お兄、近い、近いよ!?


 そして、私を抱きしめ、こう耳元で囁いた。


「いつもありがと、美亜は僕の大事な妹だよ」


 私がノックアウトしちゃうよぉ…。

 








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