第9話 朝の攻防。
「ん、むぅ、んー」
パチッと目を開けるとぐっすり可愛い顔で寝ている僕の妹の顔があった。
昨日は僕がバイトから開けるのが遅くなって一緒に寝たんだっけ。
時間を見ると、朝の十時だった。今日は休日だし、別にすることも無いからもうちょっと寝ようとしても良いけれど、美亜には仕事もあるだろうし。
ぷにぷにと顔を触ると、くすぐったそうにして少し嬉しそうに笑っているような気がする。
ほんとは寝てないんじゃないだろうか。
そう思ってこんなことを囁いてみる。
「可愛いな、美亜は」
………。
何も反応がない。やっぱり寝てしまっているみたいだ。と言うか、こんな事しているから妹離れできないんだろうな。朝の寝起きの迷いだってことに出来たらどれだけ良いのだろうか。自覚があるからそんないい訳は出来ないんだけれど。
はぁ。この前決意していた決心がもう鈍りかけている。
切り替えなければな。
「美亜、美亜」
「…」
肩を揺らして起こす。まだ眠いのかまだ反応がない。
「美亜、もう朝だよ?起きな」
「………むぅ」
すると、まだ眠いのか布団を深くかぶって起きなくなってしまう。
「美亜?」
毛布を開けようとすると、必死の抵抗をしてくる。
「ピピー。お兄は、この扉を開けてはいけません。ここの先に進むとお兄は天罰が下ります」
「じゃあ、どうすればいいんだ?あれか、合言葉とか言えば開く系の扉なのか?」
「……そ、そうです」
なんだろう。合言葉か。
「ヒントは?」
「最初からヒントに頼るなんてお兄のエッチ」
「なんでだよ」
悩むこと数十秒。
「プリン、とか?」
「違います。確かに好きだけれど。合言葉としてはダメです。はぁ…しょうがないなぁ。最大限のヒントを教えて進ぜよう」
「誠にありがとうございます」
「そのヒントとは…お兄が、その…」
急に言葉がつまり始め尻すぼみになっていく美亜。そんなに言いにくいことを設定したのか。
「お兄が朝、一番最初に言った言葉です」
「え?」
俺が一番最初に言った言葉……………。え?でも、あの時美亜は起きていなかったはずだけれど。一応、言ってみる。
「可愛いな。美亜は」
「…」
布団からこちらを窺うようにひょっこり顔を覗かせる。その頬は妙に赤い。
「せ、せいかい」
そうして、勢いよく戻ってしまう。
あんな事を本人が起きているときに言ったのだから、妙に気まずい空気が流れる。
「美亜様、あの…先にリビングに行っているのであとから来てください」
布団の中からOKサインを指で作って答えてくれた。
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