第5話 私の方が悶絶している件について

「お…ちゃ…」

「…。…」

「おにいちゃん」

「…。……んんぅ」

「お兄ちゃん!」


 なんだ?朝からやけにうるさい声がする。


「お兄ちゃん!おはよ」

「……ん。ん?おはよう。美亜?」

「なぁに?お兄ちゃん」


 なんだ、本当に。朝を起きたら妹がモードチェンジしていた件について。いつもは僕を起こすなんてことしないのに。


 何なら、勝手に入ってきていつの間にか僕の隣で寝て、学校をさぼらせようとする妹のはずなのに。


 今日はなんだか、しっかりした妹と言うか、幼馴染と言うか。


 何かに影響でも受けたのだろうか?


「いや、なんでもないけれど、今日はそんな感じで行くのか?」

「そんな感じってどういう事?変なお兄ちゃん。もぉーしっかりしてよね」


 若干困り顔で僕の部屋を後にする役者美亜。ほんとにどうしちゃったんだろうか。


 まぁ、ああいうキャラ僕は好きなんだけれども。結構、良い線言っているけれども。


 もしかして、今日はお兄にサービスしちゃうぞデーなのかとか、そんなしょうもない疑問が頭を駆け巡るくらいには平和な朝。


 こんな事前に有ったっけ?記憶を漁るけれども一度もない。……もしかしたら昨日の好きな人がいるんだ宣言が美亜に届いたのかもしれない。


 だから、あんな風に振舞ったのかもしれない。私はしっかりするから、お兄もしっかりしろよって言うエールなのかもしれない。だからしっかり者キャラを演じたんだな。


 分かったよ、美亜。僕も少しずつ直していくからな。


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 完璧でしょ、私の演技。


 我ながら惚れ惚れするような上手さ。アニメで身に着けた完璧な声や口調、さらに振舞い方の模倣。


 お兄のかなり好きな部類の女の子を演じて、お兄のハートを鷲掴みにしてしまおう大作戦を見事に完遂した私を誰か、褒めて欲しい。


 と言うか、お兄に褒めて欲しい、撫でて欲しい、ほめ殺して欲しい。


 絶対お兄、今悶絶しているでしょ。初めてああいうことしたからもうインパクト抜群でしょ。


 いつもならこっそりお兄の布団にもぐって、抱きついたり、男の人なのに無駄に柔らかい頬をムニムニしたりして、お兄の顔を眺めてたりしてたからギャップすごいでしょー。


………なんか、そんな事言ってたら、お兄のベットに潜りたくなってきた。むしろ潜らないといけない禁断症状が…。


 あー、もうどうしよ。今から行くべき?いや、でも今言ってしまったらもうお兄起きちゃってるし、それに頑張って演じた意味がなくなってしまう。


 あーーー!どうすればいいの!












 


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