第4話 これから。
これはどういう状況だ?
帰ってきて、ドアを開けて僕は首を傾げる。
「お兄様、お帰りなさいませ」
「ただいま、美亜?」
どうして美亜は粛々と正座をして、出迎える良き妻役を演じているんだ?
「お兄様、まず、お荷物をお持ちします」
「お、おう」
反射的に頷いて、そのまま美亜について行き、リビングに正座させられる。
「お兄様」
「はい、なんでしょう」
「私に隠しごとをしているのではありませんでしょうか?」
「隠し事?」
隠し事なんてしただろうか。………うーむ。
美亜には、そっち系の物を持っていることはもうばれているので隠してはいないしな。
「していないと思うけれど」
「本当でございますか?」
「うん」
「じゃあ、お兄様に好きな人ができたというのは嘘と言う事ですか?」
「………は?」
…もしかして、沙紀が学校で言っていたことを実行してくれたという事だろうか。僕に好きな人ができたと嘘をつき、美亜が僕から離れるようにしてくれるように仕向けてくれたという事か。
僕がぐずぐずしていて踏み出せないだろうから、背中を押してくれたんだな。よしっ。その作戦に乗った。任せてくれ、沙紀。お前のバトンはしっかり僕でフィニッシュさせて見せる。
「そっか、ばれてたのか」
「と言う事は…」
「僕には、好きな人ができました」
「……そうですか」
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マジじゃん。ホントじゃん。
私は、お兄ちゃんをリビングにおいて自分の部屋に戻る。
お兄ちゃん本当に妹離れするつもりじゃん。
あの話に乗ってくるという事は、お兄ちゃん自身が妹離れをしたいと思ってるという事の証明がされてしまった。
はぁ…。自分の部屋のドアを背にずるずると崩れるように座る。
でも、あの反応だと、本当に好きな人はできていないみたいだ。
私が聞いたときはっとしたような顔をしていたし、少し間があったからね。
お兄ちゃんの表情で、どんな事を考えているのか読めないとお兄ちゃん検定一級は取れないからね。
まぁ…お兄が顔に出やすいって言うのもあるんだけれど。
そんな事よりもだ。今重要なのは、本当に好きな人がいないという事だ。ならば、私がそんな架空の人に負けていいはずがあるだろうか、いやない。
もし、本当に好きな人がお兄にできたならば、私はどうするんだろう。
そんな事が私の頭によぎったけれど、その時はその時考えよう。というか考えたくないから、考えません!
そんな暗い話より、これから、お兄をどうしてやろうか。
不安もあるけれど、この事を機会にもっとイチャイチャできるようになるのでは?ゆくゆくは…ふふっ。ふふふっ。
邪な考えが美亜の頭を巡りその日の美亜の部屋からは、不気味な笑い声が絶えなかった。
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