第3話 決意。
やっぱり、最近のお兄なんか変なんだよなぁ。
はっきりこれって理由は見当たらないけれど、何か変だ。妹歴十五年の勘がそう言ってる。
何かまずいことがあると、良くないことがあると。
その災厄がお兄ちゃんに降りかかるのか、私に降りかかるのかは分からないけれど。
そんな事を思いつつ、仕事をしていればはっと何か気付くかもしれないと思い、SOIを開いてイラストを完成させていく。
長年と言うほどプロとして活動しているわけではないけれど、染みついた癖が勝手に手を動かして、完成させて行く。
仕事を始めてから、いつの間にか五時間たっていた。
「ふぅ…」
一息ついたところで、スマホに通知が入る。
「珍しい。誰だろう」
仕事用と、個人用で分けているためこっちに通知が来るのは珍しい。お兄は今バイト中だろうし。
お兄の休憩時間まで把握している私に不覚はないはずなんだけれど。そんな事を思いつつもLIMEを開いて確認する。
「………え?」
お兄の友達の日陰沙紀君からのLIMEだった。
『美亜ちゃん、愁に好きな人ができたかもしれない』
衝撃のラインだった。勘は当たっていて、災いは私に降りかかったようだ。
お兄に好きな人ができた?
私はそこから根彫り葉彫り日陰君に聞いた。
詳しく聞いてみると、どうにもお兄は妹離れをしたいらしい。なぜだろう?どうして?私、何かまずいことでもしちゃったのかな。そんな不安もあって理由を聞こうとして、そこから通知はつながらなくなった。
意図的だとしたら、私は日陰君を許すことはないだろう。怨念をLIME越しに送るけれども、やっぱり帰ってこなかった。
…これは探る必要がある。もしそれが本当なら、私にとって史上最悪の危機だ。生命の危機に関わる言っても過言ではない。
妹離れをするという事は、もう膝枕をしてあげることもできないし、耳かきもしてあげられないし、お兄にくっつくことも、お兄に大ちゅきハートお弁当を作ってあげることもできなくなってしまう。
お兄は私の中の九十パーセントを占めていると言っていい。後の十パーセントはお砂糖とスパイスとそこら辺の調味料がいっぱい混ざった素敵な女の子であるこの私。
お兄が占めているパーセントが消えてしまったら、脱力症候群とか、お兄成分足りない病とか、お兄の愛が足らずに死んでしまう病とかあらゆる免疫がなくなって私の人生がバットエンドだ。
それにお兄はかなりモテる。だから妹離れをしてその枠に他の女が入り込んだりしたら、地団太を踏みまくってマンションの床を貫通させてしまうかもしれない。
お兄には、妹離れなんかさせてあげない。させるものですか。
そんな決意を掲げた。
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