閑話 ある一般奴隷の場合

 ある一般奴隷の視点でお送りします

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 私はジオル王国の迷宮都市メイビスで鍛冶屋兼武具店をしている店長の一人娘です。今年で17歳になるのですが、小人族なので見た目は十代前半に見られてしまいます。

 私の見た目は赤い瞳と赤い髪を後ろで束ねていて、少し尖った耳と鼻先が少し赤く髭は生えていないのが小人族の女性の特徴です。


 春先に、この国で勇者召喚が行われると聞いていたころ、家に帰る途中で近道をしようと人気のない路地に入ったのは不味かった様です。

 いきなり二人組の男が目の前に現れて、一人が魔方陣を展開させました。

 街中での他人に向けての治癒魔法以外の使用は重罪です。なので、魔法を他人に向けて平然と使う彼らは、恐らく人さらいであろうと判断し逃げようとしましたが、魔法が発動した途端に、私の視界と精神は暗闇に落ちていきました。


 おそらく、眠っていたのは数分だとは思います。相手は私に[睡眠]の魔法をかけたのだろう。寝ている間に縛られてズタ袋に詰め込まれた様です。

 米俵の様に肩に担がれながら歩いている様子だと推察しますね。


 そして私は、奴隷商人の元に送られて、そこで一般奴隷の証である橙の首輪を付けられました。

 これで逃げられなくなてしまった私は、そのまま国外に連れて行かれてしまいました。私の様に連れ去られた人物の場合は、国内だと取り返される可能性が高くなるからだそうです。

 

 そうして、国を二つほど跨いだアルチュ王国にまで連れて行かれた私は、そこで一人目の主に買われました。

 私の場合は、処女ですが見ためが幼い小人族なので、結構安めの値段が付いています。処女でなければもう少し高かったのでしょう。


「これで何とか、持ちこたえることが出来れば……」


 そんなことを言っているのは、最初の主の潰れかけた商店の店長です。私の他にも安い奴隷を何人か買っていました。

 どうやら、費用削減でこれまで働いていた店員を解雇して奴隷を買ったそうです。

 そんなことをすればどうなるか言うまでもなく、私達が買われて一月も持ちませんでした。


 店長は借金まみれとなり店はつぶれ、金貸しの借金奴隷になってしまいました。


 私達は借金奴隷になるわけではなく、一般奴隷商人に売られて、店長の借金の足しにされました。


 所謂、出戻りです。


 そして次に買われたのが、ロリコン好色家の貴族でした。どうやら私はついでで買われたらしく、隣にはとんでもなく綺麗な少女が起っていました。

 ちらりと聞いた金額は、私の百倍はする値段でした。金のある所にはあるものだと驚いた記憶があります。


 今回、主になった貴族は変態らしく、少女にしか興味がない人で、大人になっても見た目が少女なままの小人族は売られていれば無条件で買ってしまうそうです。

 実際に第一夫人に嫡男が生まれ、彼女が大人になると手を出さず、第二夫人の元奴隷の小人族に愛情を振りまいているそうです。


「私も、あれだけ愛されて二人も子供産んじゃうとね、返したくなるものよ」


 そう言うのは、第二夫人の方です。奴隷としてきたそうですが、元の生活では出来ないような贅沢な生活が出来る点で良い人に買われたと言っていました。

 でも私は処女です。幾ら愛されようととも、ここで初めてを散らされてしまうのかと恐怖していましたが、その機会が訪れることは在りませんでした。


 私と一緒に買われた美少女が最初に閨に呼ばれたのだが、その際に彼女が変態貴族のあそこを噛み切り逃走する大事件が起こったからだ。


 叫び声で急いで駆け付けた現場は血塗れで、変態貴族はベットに仰向けで倒れており、その傍らには橙色の首輪と千切れた何かが転がっていた。

 彼女はそこから逃げ出したのか、窓が開いていてキイキイと蝶番が音を立てていた。


 貴族が害されたという事で、執拗な捜索を行ったそうだが、彼女を見つけることは出来なかったそうです。

 私も一緒に買われたという事で話を聞かれましたが、当日に少しあっただけで、話も碌にして居ないので協力することは出来ませんでした。

 処女を失わなかった事には感謝しますが、こうしていわれない尋問を受ける立場だし、第二夫人の辛そうな顔を見ていると何とも言えなくなります。


 取り調べが終わった後、私は奴隷商人の元に出戻りました。この都市に来て二回目です。

 それだけで戻りが多いと、理由はどうであれ買い手は付かなくなります。そこで、奴隷商人は隣国のトアル王国の奴隷商人に私を捨て値で売りました。


 そうして私は、首都トトアルに向かい、そこの一般奴隷商店の一室で、次の主が現れるのを待っています。次は良い主を、せめて長続きできそうな主を願っています。




 後は、私が奴隷から聞いた話を紹介しておきましょう。


 まず、当たりの部類は、商店に買われる事ですが、良い商店は派遣奴隷を雇うことが多くなり、一般奴隷にまで回ってこないそうです。

 食事はちゃんと出て、商店の店員として過ごすのですから、不自由は休みが無い事ですが、最近は休みを貰える商店も増えているそうです。


 最悪なのが、傭兵団に買われることだそうです。奴隷商人に聞いたのですが、殆ど使い捨ての様に扱われてしまうそうです。傭兵団は安い訳アリの奴隷を買うそうですが、私の場合は種族と生娘であった為に難を逃れていました。

 もし、普通の人族なら二回出戻りの私は買われる可能性があったそうで、その話を聞いた時は背筋が凍りましたね。


 後は冒険者に買われたりすることもあるそうです。冒険者という仕事柄か婚期を逃す人が多いそうで、妻代わりに奴隷を買う冒険者は多いそうです。

 奴隷妻を買って引退する人も居れば、冒険を続ける人も居ます。

 問題は冒険を続ける人で、冒険中に主が亡くなった場合は、奴隷契約が切れて自由の身になるのですが、突然首輪の契約が切て元の冒険者の住まいから身一つで放り出されるので、結局、奴隷商人の門を叩くことにする人も多いそうです。


 ユーマ様とニャマさん。一般奴隷と派遣奴隷の格差は大きいのです。その事をよくご理解くださいね。

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ご主人様と一緒が良いのです~派遣奴隷の猫耳少女はご主人様を夢想する~ あさがおの雫 @mimizuku01

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